読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2020.10.01

                                 泌尿器科 大瀧 達也

 

「おしっこが出にくい」「おしっこに勢いがなくなった」「トイレをした後残っている感じがしてまたすぐにトイレに行きたくなる」など感じたことはありませんか?

尿のトラブルにはいろいろな問題があり、それぞれ検査の方法や治療が違います。いろいろなトラブルの中で今回は「前立腺肥大症」というものに焦点をあててみたいと思います。

 

前立腺とは

まず前立腺という臓器に関して説明していきます。前立腺とは男性にしかない、膀胱のすぐ下にある臓器で、尿道を取り囲んでいます。前立腺から分泌されている液体は精液の中に分泌され精子の働きを助けています。一般的には50歳前後で少しずつ大きくなり尿道を圧迫します。尿道が圧迫されることで様々な排尿のトラブルを引き起こします。

 

前立腺肥大症とは

前立腺の体積はもともと15ml程度ですが前述のように加齢とともに大きくなり、50歳以降では35-40%程度は20ml以上まで肥大します。一般的に前立腺体積の増大率は年間1-3%程度ですが、前立腺肥大症の方では2年で約9.0%、4年で14%の増大率と大きくなるスピードが速いと言われています。

症状に関しては残尿感、頻尿、尿が途切れる(尿線途絶)、尿意の切迫感、尿の勢いの低下(尿勢低下)、排尿時のいきみ(腹圧排尿)、夜間の頻尿等の症状が出現します。重症度評価には上記の症状を点数化したIPSSという質問票や、現在の排尿の満足度を点数化したQOLスコア(表1)、超音波検査による前立腺体積や残尿測定、尿流量測定などを行い、内服治療や手術などを考慮していきます。

 

治療

初期治療としては薬物療法を選択することが一般的です。症状や検査の結果から尿道の圧迫を解除する薬(α1遮断薬)や前立腺体積を縮小させる薬(5α還元酵素阻害薬)などの薬を用いて治療します。

薬物療法の効果が不十分であり、症状が強い場合や、尿が完全に出なくなってしまった(尿閉)状態、尿路感染症を引き起こしてしまう場合などに手術を考慮します。

前立腺肥大症に対する手術に関しては経尿道的に行うものが一般的となっており、当院でも経尿道的前立腺切除術またはホルミウムレーザー前立腺核出術を患者様の状態に応じて選択し行っております。

 

最後に

前立腺肥大症は一般的なものであり、「おしっこが近くて睡眠不足」など、尿によって生活の質が落ちていると感じている方は多くいらっしゃると思います。少しでも今の状態を改善させたいと感じている方がいらっしゃいましたら泌尿器科へ受診、相談してください。