漢方外来

スタッフと専門領域
医師名 | 出身大学 | 医師免許取得年 | 専門領域・資格等 |
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![]() 尾崎正時 |
千葉大学 | 昭和58年 | ・医学博士 ・日本東洋医学会認定 漢方専門医 ・日本東洋医学会認定 日本東洋医学会指導医 ・日本東洋医学会代議員 ・日本東洋医学会東海支部幹事 ・日本東洋医学会東海支部 静岡県部会副会長 ・日本医学放射線学会認定 放射線治療専門医 ・日本医学放射線学会認定 日本医学放射線学会研修指導者 ・第一種放射線取扱主任者 ・日本オーソモレキュラー医学会 会員 |
目次
■漢方理論について(別ページが開きます)
■漢方理論(気血水)の現代医学的解釈(別ページが開きます)
漢方とは
古代~近世までにもたらされた中国伝統医学と我が国の経験医学に西洋医学の知識を加え、独自に発展・体系化した日本の伝統医学です。江戸時代に入ってきた西洋医学を蘭方とよぶようになったのにともない、漢方とよばれるようになりました。中国の中医学に対して日本漢方とも呼ばれます。中国では現代医学を西医学、中国伝統医学を中医学と呼んでいます。漢方と中医学は、似ていますが違いもあります。漢方では、症状(証)に合わせて処方を決めます(方証相対)。また病位を重視します。傷寒論の六病位を現在も使用しています。中医学では、症状を伝統医学的に解釈し治療方針を決め(弁証論治)、処方を組みます。病質(臓象)を中心に考えることが多く、それらの相互関係を重視します。臓腑偏重で感染症以外では病位(経絡)を考えません。
漢方の適応
現代医療のなかで漢方が使われるのは、主には下記のようなケースです。
1.現代医学ではっきりした診断がつかない場合
不定愁訴や原因不明とされる症状でも、漢方的には病態を把握でき、対応する方剤が存在します。
2.診断はついているがよい治療法がない場合
たとえば風邪です。風邪を治す薬があればノーベル賞といわれていますが、実は大昔からあるのです。風邪薬という一種類の薬があるわけではなく、数十の処方を証にあわせて使い分けます。風邪の治療で特に重要なのは寒熱の判別です。患者が寒がっているのが寒証、暑がっているのが熱証です。寒がっている寒証の患者には、熱があっても解熱剤を使ってはいけません。体を温める方剤を使わなくてならないのです。現代医学には、附子、乾姜、桂枝のような体を温める薬物がないので、寒がっている寒証の風邪を治療できません。寒熱の概念のない現代医学では、熱があると解熱剤を使って風邪を遷延させてしまいます。
3.現代医学的治療の副作用の予防・治療
近年、様々な抗悪性腫瘍薬が使用されていますが、副作用対策が不十分です。現代薬にはよい薬が少ないので、副作用が強いと休薬しなくてはいけません。漢方が有効です。また放射線治療の副作用は、現代薬がほぼ無効で漢方でないと治療できません。また現代薬で合併症が出る人には、栄養障害が存在します。低栄養だと解毒能力が下がり薬剤の副作用が出やすくなるのです。栄養療法を併用することで治療効果があがります。
4.多臓器・多系統にわたる疾患
たとえば水滞(水毒)という病態があります。からだのなかで水が滞る病態です。アクアポリン(水チャンネル)の劣化によって起こるようです。雨の頭痛、乗り物酔い、口渇、歯根舌、胃内停水、小便が多い、小便が少ない、水様帯下、水様下痢、むくみ、関節液貯留、腰のだるさ、など全身に多彩な症状をおこすのですが、原因は水の流れの悪さです。治療には、アクアポリンに働いて水の流れを整える利水剤を使います。このように漢方は体全体を把握して治療することができます。
5.病気の予防、体質改善、病後、産後の体力回復
虚弱な人、炎症を起こしやすい人、病後などで弱った人に漢方を長期に使用すると確かに効果があるのですが、こういう人には背景に栄養障害があります。体質の異常とは、胎生期も含めた過去の栄養不足の結果です。漢方薬は栄養にはなりませんが、栄養の吸収や利用を促進し体力をつける働きがあります。
当科の漢方の特徴
漢方でも現代医学でも、どういった種類の病気が時間経過のなかで治療時にどのような状態になっているのかを把握して治療することが必要です。病気の性質(病質、証)と進み具合(病位、経絡)を二次元的にとらえる必要があります。このような考え方は、清朝末期から中華民国時代には主流だったようですが、中華人民共和国により現代中医学がまとめられたときに簡略化により失われてしまいました。日本漢方でも最近は中医学の影響で病位が軽視される傾向にあります。当科では、病質と病位を二次元的に捉える漢方を実践しています。
漢方薬は、原則として保険適応のエキス製剤と生薬末のみを使用します。煎じ薬、鍼灸には対応していません。
漢方と分子栄養学・オーソモレキュラー医学
漢方が得意とする病気は栄養障害と密接な関係があります。漢方を十分に効かせるには栄養状態も同時に改善する必要があります。従来の漢方はこの点に問題があったと考えています。漢方で症状がとれても、栄養状態が改善しないと完全な治癒は望めませんし、薬をやめると再燃します。一方、栄養療法だけでは症状の改善に時間がかかります。一般的には治癒までに小児で数ヶ月、成人で数年を要するといわれます。薬物療法で症状をおさえながら栄養療法で体を丈夫にするのが最善と考えます。
漢方治療を始める際には、血液検査等で現代医学的疾患の有無、蛋白不足、鉄・マグネシウム・亜鉛などのミネラル不足、ビタミン不足、糖質摂取過剰などの栄養学的異常の有無を把握しておくことが必要です。以下、主な栄養異常について説明します。
蛋白不足
人体の蛋白は酸素、糖、炎症、飲酒などにより徐々に劣化していきます。劣化した蛋白は、新しく作られた蛋白に置き換わらなくてはいけません。しかし蛋白摂取量が少ないと新しい蛋白ができずに劣化した蛋白がそのまま使われ続けます。
体を構成する蛋白が劣化すると体が脆く弱くなります。腸粘膜が弱くなるとリーキーガットになり食物アレルギーを起こします。皮膚や粘膜が弱くなると、花粉などの抗原が容易に入り込み、アレルギーを起こします。また皮膚が薄く傷つきやすくなり、妊娠線などの皮膚線条ができやすくなります。さらに傷の修復がうまくいかなくなります。傷のつきが悪い、付いた傷が開く、ケロイドができる、などの症状がでます。血管壁が弱くなると出血しやすくなります。長期的には血管が拡張し、静脈瘤、動脈瘤ができます。骨や関節が弱くなると、骨折しやくなり、徐々に変形性関節症、骨粗鬆症になっていきます。
劣化した体の蛋白を免疫系が異物と認識すると自己免疫疾患になります。
細胞のエネルギーを作るミトコンドリアの酵素も蛋白です。蛋白不足だとミトコンドリアの酵素活性が低下してエネルギー不足になります。症状は中枢神経にでやすく、疲労感、思考力低下、感情の暴走、知覚の異常、ホルモン調節の異常、自律神経の異常などが起こります。また熱産生が少なくなり冷え症になります。手っ取り早くエネルギーを得るために甘いものを好むようになります。
免疫応答には蛋白が必要です。蛋白不足だと感染に弱くなります。
体を活性酸素からまもる抗酸化酵素、消炎酵素が少なくなると、炎症を起こしやすくなり、放射線や化学物質の害を受けやすくなります。
解毒酵素の活性が低下すると薬物や毒性のある物質を処理できなくなり、薬剤の副作用が出やすくなったり化学物質過敏症になります。
困ったことに蛋白不足になると消化管の劣化、消化酵素の減少により蛋白質を食べても消化できなくなり、より蛋白不足になっていきます。蛋白不足のひとほど蛋白をうけつけないのです。無理に蛋白を食べても消化できず、下痢や放屁がおこり、かえって体調をくずします。
以下に食品中の蛋白量、プロテインスコア(利用可能率)、プロテインスコアで補正した利用可能蛋白量を示します。
食品100g中の蛋白量とプロテインスコア(利用可能率)、利用可能蛋白量
一日の蛋白必要量はプロテインスコア100の蛋白で健康な人で体重g、子供はその倍、病気の場合は体重の1.5倍g、手術後は2倍gです。蛋白含有量を卵1個7g、食肉・魚肉は15%として概算します。食品中の総蛋白量で考えるなら、健康成人の一日の蛋白必要量を100gとします。蛋白は多すぎると肝臓に負担がかかります。一日200g以上の摂取を長期間継続すると危険です。
食事だけで摂取困難であれば、プロテイン、医療用アミノ酸、消化酵素を使用します。検査では、アルブミン(ALB)4.2g/dL以下、尿素窒素(UN)14mg/dL以下AST、ALT 20U/L未満、γ-GT 14U/L以下を蛋白不足としています。体調が悪いときは脱水になっているので数値が高めになり、一見正常に見える場合もあるの注意が必要です。一方、点滴をすると数値は下がるので、正常な人でも異常値となることがあります。
鉄不足
ほとんどの閉経前女性、未成年では蛋白不足と鉄不足が併存しています。女性は月経、分娩で蛋白と鉄を同時に失います。また成長期には蛋白、鉄を大量に必要とするので、相対的鉄蛋白不足になります。鉄はヘモグロビンを作るのに必要なだけではありません。ミトコンドリアにおけるエネルギー産生に必要です。足りないとエネルギー不足の状態になります。コラーゲン産生にも必要です。足りないと皮膚、粘膜、血管、骨が脆くなります。コラーゲンがうまくできないと白目が青くなります(青色強膜)。青色強膜は重度の鉄タンパク不足なのですぐに治療すべきです。鉄は他にも様々な重要な働きをしています。
鉄は不足すると困るのですが、多すぎても炎症が悪化したり悪い菌が増えるなどの不具合が起こります。摂ればいいというものではないのです。
検査ではヘモグロビン(Hb)が有名ですが、Hbでは組織に存在する鉄の評価はできません。組織鉄を表すのはフェリチンです。男女とも100ng/mL以下は潜在的鉄不足です。またTIBC(総鉄結合能)は鉄需要を示します。300mcg/dL以上は鉄需要ありと判断し鉄を投与します。蛋白不足がひどいと鉄を利用できないためフェリチンが低くても鉄需要がないことがあります。この場合は鉄を摂ってはいけません。TIBCが低いときはフェリチンが低くても鉄は不要です。治療には医療用鉄製剤、もしくは市販の鉄製剤を使用します。
鉄蛋白不足≒気血両虚
月経、分娩では、鉄と蛋白が同時に失われます。また鉄蛋白は、外傷、手術、献血、ビーガン食などでも失われます。子供では身長が伸びると鉄、蛋白が使われて鉄蛋白不足になります。鉄と蛋白はどちらが欠けてもいけません。たとえば体の蛋白の半分をしめるコラーゲンをつくるには蛋白と鉄とビタミンCが必要です。
TCA回路における酵素、補酵素、補因子の作用部位
TCA回路での8つの反応における補因子、補酵素について考えてみます。鉄、マグネシウムは3カ所に関与しています。ビタミンB群も必要だということはわかりますが、一番大切なものは8カ所での反応をつかさどる酵素です。酵素の活性は蛋白摂取量が少ないと低下していきます。これらは濃度のべき乗で影響しますので、たとえば鉄の濃度が90%になるとTCA回路全体の反応は に低下します。もし蛋白不足で酵素活性が90%になると全体では に低下します。エネルギーを作るTCA回路の反応でも鉄不足より蛋白不足のほうが影響が大きいといえます。エネルギー産生にも蛋白と鉄が同時に必要なのです。
鉄と蛋白は密接に関係して働くので、鉄不足の症状と蛋白不足の症状は重なっています。蛋白と鉄に留意するだけで、体の不調のかなりの部分は解消します。逆に鉄蛋白不足が解消しなければ、どんなに薬、サプリ、針灸、整体、食養生などで治療しても症状の改善は一時的なものとなります。鉄蛋白不足の症状を、まとめると下の表のようになります。
鉄蛋白不足の症状
上記の表について説明します。
材料不足
蛋白が不足するとコラーゲンなどの体を構成する蛋白が作れません。蛋白の入れ替わりの多い爪、髪、皮膚に症状が出やすくなります。通常は劣化していくのですが、異常な増殖をしめすこともあります。また体が傷ついたあとの修復が遅くなったり、うまく直せなかったりします。材料不足で体の蛋白が更新されないと、血管や骨、皮膚、腸管が脆く弱くなります。結果として出血や骨折が起こります。
酵素活性低下
体内の酵素活性が全般的にさがります。ミトコンドリアの酵素が減ると、エネルギーを作れなくなり、冷えや疲労感が出現します。また抗酸化酵素の活性が下がると炎症を起こしやすくなります。肝臓の解毒酵素が減ると、薬剤や化学物質に弱くなります。
水滞
水の通り道である水チャンネル(アクアポリン)が劣化すると、体内での水の流れが悪くなり、水の偏在が起こります。むくみや眩暈、頭痛、下痢などが起こります。
組織鉄不足
組織中の鉄が減少すると明らかな貧血がなくても、顔や舌の色が白っぽくなります。
免疫力低下
免疫応答には細胞や抗体をたくさん作る必要があります。また大量のエネルギーが必要です。材料不足、エネルギー不足の状態だと、免疫力が下がってしまいます。
中枢神経症状
上図は放射性ブドウ糖を投与したFDG-PET画像です。ブドウ糖の使用が多い臓器が黒く写っています。脳が一番エネルギーを使っていることが分かります。腎臓の一部と膀胱が黒いのは尿中に排泄された放射性ブドウ糖のためです。このように脳はエネルギーの消費密度が高い臓器です。しかも脳細胞は高度に役割分担をしていてネットワークとして活動するので、一カ所でも不調になると症状がでてしまいます。
神経細胞と軸索輸送
加えて、個々の神経細胞は神経突起や軸索という長い構造をもつ複雑な構造をしています。蛋白などは細胞の中央でしかつくれないため、それらを突起の先端まで輸送し、不要なものを中央に送り返さないといけません。これを軸索輸送といいます。エネルギーを作るミトコンドリアも細胞の中央でつくられ、突起の先端におくられます。神経細胞は単に大量のエネルギーを使うというだけでなく、その構造が複雑なために大量の物質の移動を必要とするのです。この細胞内の輸送が一ヶ所でも滞ると神経細胞としての機能を失います。脳はネットワークとして動くので、一ヶ所でも損傷を受けると症状がでてしまいます。さらにネットワークを構成する個々の神経細胞自体が線状の構造をしているので、一ヶ所でも損傷を受けると機能を失います。脳はエネルギー不足の際に症状を出しやすく、かつ蛋白、鉄、ビタミン・ミネラルなどの細胞の材料不足に極めて弱い臓器だといえます。体に比し大きな脳をもつ人間は、他の動物より脳の症状がでやすくなるわけです。
ミトコンドリアでエネルギーが作れないと脳の作業ができなくなります。前頭葉がうまく働かないと、長文が読めなくなったり短期記憶の障害がでます。体からの信号をうまく処理できないと、正常な部位に痛みや異常な感覚を感じます。辺縁系のコントロールができず感情が暴走すると、怒ったり、泣いたり、不安になったり、緊張したりしやすくなります。内分泌のコントロールがうまくいかなくなると月経不順、副腎疲労などが起こります。自律神経のコントロールがうまくいかなくなると、消化器や循環器の症状がでます。
鉄蛋白不足の症状は、漢方的にはほぼ気血両虚(気虚+血虚)の症状です。かつて、人間の最大の脅威はウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫などの感染症でした。これらは通常は存在しない病邪が存在するために起こる病態です。漢方的には実証(実は過剰の意味)の病気となります。これに対し、本来あるはずの鉄蛋白などの栄養が足りないために起こる病態は、漢方的には虚症(虚は不足の意味)の病気となります。そのほとんどは鉄蛋白不足の症状だったと考えます。
鉄、蛋白を失う原因は、月経、分娩、外傷、飢餓などです。月経、分娩をくりかえしているうちに、女性は鉄蛋白不足になっていき不調を訴えます。感染や中毒ではないのに元気がない人をみたとき、昔の人は何かが足りない虚の状態と捉えました。まず月経や分娩が原因なのだから、血が足りなくなったのだろうと考えました。さらに体外に出た血液は、体内の血液と異なり熱や動きを失っています。二元論の好きな古代中国人は、このとき血液から失われたものを、気と名付けたのです。すなわち鉄蛋白不足で足りなくなったものの陽的(機能的)側面が気であり、陰的(物質的)側面が血なのです。鉄蛋白不足は気も血も両方足りない状態、すなわち気血両虚です。図示すると以下のようになります。
鉄蛋白と気血
鉄蛋白不足以外の栄養不足はどうだったのでしょう。ビタミンではB1不足の脚気、B3不足のペラグラ、C不足の壊血病、D不足のくる病、A不足の夜盲症が有名ですが、名前がついているくらいなので、比較的希な病態だったと思われます。現代社会で問題になるマグネシウム、亜鉛不足などは今より地味が肥えていたのと自然塩を使っていたのであまりなかったようです。したがって古代より最も頻度の高い栄養不足は鉄蛋白不足≒気血両虚だったと考えます。
糖質過剰
糖質摂取過剰により起こる疾患として、糖尿病、高脂血症、認知症、うつ病、非アルコール性脂肪肝、がん、子宮筋腫・子宮内膜症・生理痛・多嚢胞性卵巣症候群、不妊症などの婦人科疾患、腰痛・骨粗鬆症・変形性関節症・五十肩・脊柱管狭窄症・後縦靱帯硬化症・足底筋膜炎・手根管症候群などの運動器の異常、緑内障、いぼ、脱毛、乾癬、ニキビ、真菌感染、歯周病、難聴などがあがります。食後血糖140mg/dL以上、またはHgA1c6.0%以上が糖尿の基準ですが、これ以下でも糖質過剰の症状はでます。 このような場合には糖質制限がいいとされますが、鉄蛋白不足のひとが糖質制限をすると体調を崩します。脂肪からエネルギーを得るための酵素がつくれないためエネルギー不足になってしまうのです。規定量の蛋白を摂取できるようになることが最優先となります。
マグネシウム不足
マグネシウムが足りないとこむら返り、痙攣、しびれ、興奮、不安、過緊張、高血圧、不整脈、便秘、冷え性、頭痛、生理痛、糖尿病などを来します。カルシウムと逆の働きをし、細胞の興奮を抑えます。天然のカルシウム拮抗薬です。精製塩を使用するようになって、マグネシウム不足の人がふえてしまいました。飲酒や糖質過剰摂取でもマグネシウムが不足します。サプリ、薬剤等によるカルシウム摂取のため、相対的マグネシウム不足になっている場合があります。こむら返りや痙攣は重度のマグネシウム不足によるものです。常に積極的に摂りたいミネラルです。ALPの補因子で、足りないとALP低値となります。
亜鉛不足
ほとんどの方が亜鉛不足です。亜鉛は300以上の酵素の活性中心に必要で2000もの酵素の補因子です。細胞分裂、インシュリン産生に必要です。足りないと味覚・嗅覚低下、口が苦い、舌の荒れ、舌の違和感、食べ物がしみる、膿み症、爪の白斑・凹凸、爪が伸びない、脱毛、耳切れ、趾のひび割れ、肌荒れ、皮膚が治りにくい、皮膚炎、色素沈着、頭皮湿疹、皮膚粘膜移行部(目、鼻、口、肛門)のトラブル、食欲不振、易感冒、性欲減退、月経不順などの様々な症状を来します。 体内では銅とペアになっていて亜鉛が少ないと銅過剰になります。また亜鉛過剰だと銅不足になるのですが頻度は希です。
B6不足
B6は蛋白代謝に必要で、足りないと蛋白を摂取しても改善がみられません。AST-ALT>3でB6不足疑いとされます。体質的にB6をうまく使えないひとがいます。蛋白を摂取しているのにデータの改善がないときは、B6が使えていない可能性を考えてB6を多めに摂る必要があります。
ナイアシン不足
ナイアシンが欠乏するとペラグラ(皮膚炎、下痢、認知症になり死亡)、精神疾患、関節炎、高脂血症になります。必要量は個人差が大きいとされます。LD低値だとナイアシン不足とされます。LD150U/L以下で精神症状のある方は、十分量を摂取することが必要です。ナイアシンはアルコール代謝においても重要で、摂取するとアルコールに強くなります。二日酔いにも有効です。血流を改善します。
ビタミンB群不足
ビタミンB群はエネルギー産生、神経伝達物質産生に欠かせません。足りないと脚気、口内炎・口角炎、舌の溝、悪夢、聴覚過敏、易疲労、集中力欠如、読書ができない、物忘れ、皮膚・舌の赤み、シミ、肌荒れ、湿疹、夜泣きなどの症状を呈します。アルコール多飲、糖質過剰摂取の場合は発症しやすくなります。
ビタミンC不足
ビタミンCが足りないとコラーゲンが作れずに壊血病になります。コラーゲンが作れないと体が脆くなります。またビタミンCはからだを活性酸素からまもる抗酸化物質です。また抗ウイルス作用、抗菌作用があり、風邪の予防、治療に使えます。抗ヒスタミン作用を有し、アレルギー、炎症に広く使えます。また抗癌作用も有します。安価であり、日頃から十分摂っておきたいビタミンです。
ビタミンE不足
ビタミンEは、脂溶性の抗酸化物質で体を酸化から守っています。足りないと男女ともに不妊になります。アンチエイジングに極めて重要です。血流を改善します。しもやけ、レイノー症状、狭心症や動脈硬化による動脈狭窄に有効です。
ビタミンD不足
ビタミンDは粘膜や皮膚細胞の密着結合、免疫の調整、蛋白産生に欠かせません。足りないと花粉症、リーキーガット、感染症、くる病、冬期うつ、ガン、骨粗鬆症、多発性硬化症になります。日光で作られるはずなのですが、ほとんどの人がビタミンD不足です。
ビタミンA不足
ビタミンAはDNAから遺伝情報を読み出すときに必須です。網膜での光の検出、皮膚・粘膜の維持に必要です。発癌を抑制します。足りないと夜盲症(とり目)、鳥肌、乾燥肌、あせも、食物アレルギーになります。摂取量がすくないと発癌します。必要量の個人差が大きいとされます。
漢方の適応疾患
内科領域
感冒、その他の急性感染症
漢方の独壇場です。寒熱、虚実、表裏の判定が重要です。現代医学には、この概念がないので風邪の治療がうまくいきません。体温に関係なく寒がっているのが寒証、暑がっているのが熱証です。体力がなく汗がでているのが虚証で、逆が実証です。脈が浮いているのが表証で沈んでいるのが裏証です。寒がっていて汗なく脈が浮いていれば、表寒実証のたとえば麻黄湯などを使います。汗があれば表寒虚証の桂枝湯となります。脈が沈んでいれば、裏証であり裏寒虚証の麻黄附子細辛湯、真武湯などとなります。暑がっている熱証の風邪であれば、銀翹散などの冷やす薬を使用します。
感染症は低栄養で起こります。風邪引きやすい人と引きにくいひとの差は栄養状態の差です。
喘息
消炎、精神安定作用の柴朴湯で発作を予防し、発作時に麻杏甘石湯で消炎、気管支拡張をはかるとされますが、根本的原因は気道粘膜の脆弱性です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合が劣化し抗原が侵入しやすくなっています。栄養療法と補剤で気管支粘膜を立て直します。
喘息気管支拡張症、副鼻腔気管支症候群、非定型抗酸菌症
痰が出にくい体質が原因です。気管支の炎症を繰り返すうちに、気管支が拡張してしまい、さらに痰がだせなくなります。出ていかない痰は気管支内に貯留し乾燥して固まります。気管支の炎症も治りません。漢方的には燥熱です。気管支を潤して冷やして痰を出す薬を用います。背景に栄養障害により炎症を起こしやすく痰をだせない体質があるので、適切な栄養摂取が必要です。水素の併用も考慮します。
間質性肺炎
肺の劣化した蛋白に反応している自己免疫疾患と考えます。蛋白不足が主因です。随証的漢方治療に水素、栄養療法を併用します。
過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎
低栄養による脳の機能低下により、消化管のコントロールがうまくいっていない状態です。通常、消化管自体の劣化もともなっています。随証的漢方治療に栄養両方を併用します。
潰瘍性大腸炎、クローン病
腸の劣化した蛋白に反応している自己免疫疾患と考えます。蛋白不足が主因です。炎症をとめる漢方を使います。随証的漢方治療に水素、栄養療法を併用します。
しもやけ、冷え症、レイノー病
ミトコンドリア機能低下による熱産生不足に血流コントロールの異常が伴った状態と考えます。熱産生を増やし、血流を調節します。手足の血流を増やす漢方を用います。ビタミンE、ナイアシンなどの血流を増やすサプリを併用することがあります。さらに蛋白、鉄、ビタミンB群などでミトコンドリア機能を改善すると治ります。
不整脈
心筋細胞内のマグネシウム不足によります。マグネシウムは細胞を興奮しにくくし、不整脈をおさえます。カルシウムはマグネシウムの逆の働きをします。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。随証的に漢方を併用します。
高血圧
現代薬で血圧をさげると脳の血流は低下します。結果として朦朧としたり倒れたりする危険があります。マグネシウムで血管の緊張をとり栄養療法で血管を丈夫にします。必要があれば降圧薬を併用します。カルシウムはマグネシウムと逆の働きをします。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。
高脂血症
筋肉痛やしびれなどの副作用の多いスタチン製剤をできるだけ使わないことが肝要です。スタチンによりからだを酸化から守っているコエンザイムQ10が低下し、放射線や抗癌剤の障害がでやすくなり発癌しやすくなります。動脈硬化の最大の原因は動脈壁の材料不足、すなわち蛋白不足です。低栄養による動脈壁の劣化に対応するためにコレステロールをあげているのです。栄養状態を改善せずにコレステロールをさげるのは本末転倒です。ナイアシンが有効とされます。
膠原病、関節リウマチ、SLE
変性した体蛋白を免疫系が攻撃している状態です。蛋白不足が原因です。女性に多いのはこのためです。体蛋白の更新のために十分な栄養が必要です。症状緩和のために用いられる現代薬では、副作用が問題となります。漢方やサプリであれば副作用は軽度です。水素が有効です。
アレルギー疾患、花粉症
根本的原因は皮膚粘膜の脆弱性です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合が劣化し抗原が侵入しやすくなっています。栄養療法と補剤で皮膚粘膜を立て直すべきです。随証的に漢方を併用します。
橋本病、バセドー病
変性した甲状腺を免疫系が攻撃している状態です。蛋白不足が原因です。女性に多いのはこのためです。甲状腺蛋白の更新のために十分な栄養が必要です。現代薬で副作用が出る場合は、漢方で対応します。
糖尿病
高血糖は血管を障害しますが、実はインシュリンも血管毒性があります。糖質制限で高血糖を避けつつ、インシュリンやインシュリンを分泌させる薬剤をさけることが望まれます。降圧薬と高脂血症治療薬で糖尿病の血管障害がさけられるとされます。
腎機能低下
腎機能を下げないためには糖質制限、低インシュリンが必要です。痛み止めの使用や慢性上咽頭炎も腎機能をさげるので注意が必要です。腎機能がさがったときに蛋白制限は逆効果です。腎の再生のためには材料すなわち十分な蛋白摂取が必要です。漢方では養腎降濁湯、オウギ末が有効とされます。
片頭痛
漢方的に一番多いのは水滞の頭痛で、気圧変化による頭痛です。水チャンネル(アクアポリン)の劣化が原因です。五苓散などの利水剤を用います。次に多いのが肝気鬱結、気逆の頭痛です。通常は朝の頭痛となります。局所的な血圧の異常のようです。釣藤散その他の解鬱薬を用います。お腹の冷えと同時に出る頭痛があります。呉茱萸湯などお腹を温める薬を使います。他にも気滞(肩こりなど)、瘀血(血流障害)、血虚(低栄養)でも頭痛がおこります。いずれも鉄蛋白不足、マグネシウム、亜鉛、ビタミン不足が背景にあります。漢方と栄養療法の併用で治癒します。
化学物質過敏症
低栄養で解毒酵素の活性がさがると、抗生剤や抗癌剤などの薬物で副作用がでやすくなります。この場合は栄養療法で解毒機能があがれば治癒します。これとは異なり通常は不快に感じない臭いや音、電磁波が不快でたまらないことがあります。これは解毒能の低下ではなく脳の情報処理の異常です。通常は低栄養によります。女性に多く見られます。栄養療法と随証的漢方治療を行います。
不定愁訴
現代医学で不定愁訴とされる症状は一定の類型を持ち、大昔から存在していました。現代医学的には説明できないというだけで伝統医学的には解釈可能で、症状別に対応する方剤が存在します。検査をすると鉄蛋白不足が高頻度に見られます。原因は脳のエネルギー(ATP)不足と考えています。栄養療法、随証的漢方治療で改善します。
小児科領域
小児疾患のかなりの部分は、胎児期、小児期の低栄養が原因です。成長の過程では、小児は常に相対的低栄養であり、おとなより低栄養の症状がでやすいのです。採血すると子供と母親のデータがそっくりなことがほとんどです。一部には遺伝的背景もあるのでしょうが、低栄養の母親から低栄養の子が生まれ似たような病気になるという、一見遺伝性に見える負の連鎖が見られます。栄養療法で母子ともに治療することが望まれます。
起床困難、起立性調節障害、不登校、うつ、イライラ、チック
成長期には相対的に低栄養状態となり、鉄蛋白不足の症状が出ます。エネルギー不足になり頭と体が働きません。その結果、イライラして反抗的になります。反抗期のイライラ、気分変調の主な原因は相対的栄養不足です。視床下部下垂体副腎もやられますので副腎疲労になり朝起きられません。また消化管も弱いことが多く、しばしばリーキーガットのために食物アレルギーになっています。皮膚粘膜も弱く、アトピー、花粉症などのアレルギー性疾患を併発します。しばしば青色強膜(白目が青味がかっている)を認めます。まずは鉄蛋白を補充することが必要ですが、すでに胃腸が弱っている場合にはうまく吸収できません。食事だけでは対応できないことが多く、プロテイン、アミノ酸、消化剤、サプリメント、漢方の併用を考慮します。つらい症状があれば随証的に漢方を使用します。
発達障害、学習障害
遺伝的背景、環境汚染などの影響はあると思いますが、受診される方はほぼ全員重度の鉄蛋白不足です。身長の伸びとともに出現した症状は、鉄蛋白不足が原因です。栄養療法、漢方が有効です。
虚弱体質
消化管は胎生期の最後に完成する臓器です。このため低体重児は消化機能が弱くなりがちです。ひよわ=脾(消化器)弱であり、虚弱体質になりやすい傾向があります。腸管粘膜のバリアも弱く食物アレルギーが出やすくなります。成人でも出生体重3000g以下だったひとは消化機能が弱い可能性があります。胃腸を丈夫にする漢方を使用し、栄養を吸収しやすい形で与える必要があります。
夜驚、夜なき
通常、甘麦大棗湯、抑肝散を用います。母子同服といい、母親も同じ薬を飲むと効果が上がります。
精神科領域
うつ、気分障害、神経症性障害、発達障害、人格障害
遺伝的要因、社会的要因は当然ありますが、栄養異常によるものが注目されています。特に蛋白不足、鉄不足、亜鉛不足、ビタミンB群不足、ビタミンD不足が多いとされます。経験的には鉄蛋白不足が大部分を占めます。血液検査を行い栄養療法行います。つらい症状があれば漢方で対処します。
身体表現性障害、疼痛性障害、線維筋痛症
明らかな病変がないのに痛みやしびれなどを感じる場合、脊髄以下の神経が障害されているか感覚情報の処理をする脳の異常のどちらかです。神経が障害されている場合、そのほとんどは薬害です。原因となる薬物を同定する必要があります。感覚情報処理の異常はほとんどが栄養障害です。栄養療法と随証的漢方を用います。
不眠症
不眠は漢方的にみると複数の症状のひとつに過ぎないことがほとんどです。随証的漢方で改善します。
産婦人科領域
血の道症、更年期障害、PMS、月経困難症、月経不順、過多月経、過小月経、産後の不調
血の道症という病名があります。漢方からきた病名です。「月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性のホルモンの変動による不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のこと」とされています。血の道症に対する漢方方剤は多数存在し、それなりに有効です。血の道症の主因は鉄蛋白不足だと考えます。月経、出産をくりかえしているうちに鉄蛋白不足になり体調を崩す。これがすなわち血の道症です。漢方で症状はある程度とれますが、鉄蛋白を補充しないと本質的解決にはなりません。栄養療法と随証的漢方で改善します。毎月排卵するということは体にとっては大きな負担です。出産を望まないのであれば、婦人科で月経を止めると改善します。ただし蛋白不足の方は薬害がでやすいので注意が必要です。
外科領域
ケロイド、不良肉芽
皮膚が傷ついて切り離されると、切断部分に肉芽をつくり皮膚をを接着させます。この肉芽を構成するのは主にはコラーゲンです。コラーゲンをつくるのには蛋白、鉄、ビタミンCが必要で、足りないとつきがわるくなったり、傷が盛り上がってケロイドになります。古い傷もつねに古くなったコラーゲンを新しいものに更新しています。蛋白不足で新しいコラーゲンが作れないと古い傷が開いてしまいます。傷をきれいに付けるには蛋白が必要です。
動脈瘤、静脈瘤
低栄養だと血管壁のコラーゲン等の更新がおくれ、血管壁が劣化します。血管が脆くなり出血しやすくなります。動脈瘤、静脈瘤ができます。栄養療法に随証的に漢方を併用します。
四肢循環障害
動脈硬化などで動脈側の流れが悪くなるのは血虚で四物湯の適応、静脈側の流れが悪いのが瘀血で駆瘀血剤の適応とする考えがあります。動脈硬化による血流低下には疎経活血湯が有効とされます。
整形外科領域
加齢による変化、変形性関節症、骨関節症、骨粗鬆症、五十肩、ヘバーデン結節
加齢により起こってくる疾患は栄養障害です。骨、関節、軟部組織を構成する蛋白は徐々に劣化していいきます。劣化した蛋白は新しくするのですが、栄養不足ではそれができません。結果、徐々に破壊が進みます。これが骨関節症です。骨が劣化したとき、必要なのはカルシウム以前に蛋白、鉄、ビタミンCです。薬剤で骨にカルシウムを沈着させても骨の強化にはかならずしもなりません。十分な栄養で引っ張り強度のある骨をつくることが大事です。
現代薬の鎮痛薬は急性期の熱を持った状態には効くのですが、慢性期に入り血流がさがると効かなくなります。また鎮痛薬は治癒を遅らせ、長期連用で腎機能が低下します。附子などの血流をおとさない痛み止めが必要です。また通常、瘀血と水滞を伴っているので、それらをとる薬も必要です。
手根管症候群、足底筋膜炎
体内にできたケロイドと考えるとわかりやすいと思います。補血剤と栄養療法で対応します。
痛風、石灰化腱炎
急性期の痛みは湿熱、すなわち炎症と浮腫が強い状態です。越婢加朮湯、茵蔯五苓散などの清熱利水剤で対応します。痛風の原因となる尿酸は、本来は体を守る抗酸化物質です。尿酸が高いときは体のどこかに炎症があるときです。慢性上咽頭炎、歯周病、脂肪肝など有無を確認して治療する必要があります。
筋痙攣、こむら返り
血管壁や筋肉細胞内のマグネシウム不足によります。筋肉細胞が興奮すると痙攣がおこります。筋肉に行く血管壁の細胞が興奮すると血管が攣縮し血が流れなくなり筋肉が痙攣します。マグネシウム投与で改善します。マグネシウムは細胞を興奮しにくくします。カルシウムはマグネシウムの逆の働きをします。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。随証的に漢方を併用します。
成長期に起こる異常、側弯症、成長痛、骨端症、スポーツ障害、大腿骨頭すべり症、先天性股関節脱臼
こどもの異常は栄養障害が背景にあります。成長の過程では、どんなに栄養を摂取していても常に相対的低栄養状態です。蛋白の必要量も成人の倍となります。漢方その他で除痛しつつ、十分な蛋白、鉄、ビタミンCを与えます。
むちうち後遺症
治打撲一方合葛根加朮附湯が標準治療とされています。閉経前女性に多く、鉄蛋白不足を伴っています。外傷により損傷した組織が修復されない状態です。コラーゲンの劣化と更新不足が背景にあります。適切な栄養療法の併用が必要です。
外傷
外傷の急性期は瘀血です。駆於血剤が有効です。骨・関節には桂枝茯苓丸、治打撲一方の組み合わせが有効です。靱帯、腱、筋肉の障害には桂枝茯苓丸、麻杏薏甘湯湯、皮下組織の障害に対しては通導散が有効とされます。
耳鼻科領域
慢性上咽頭炎
インフルエンザの検査では鼻から棒をいれて喉の奥を調べます。その際、棒の先が当たる部分が上咽頭です。風邪のウイルスが最初に付着する部位です。この部分が慢性炎症を起こすことがあります。咽頭違和感、後鼻漏、咳喘息、痰、首こり、肩こり、頭痛、耳鳴り、舌痛、歯の知覚過敏、歯痛、顎関節痛などの局所の症状を起こします。また上咽頭は頭蓋の底にあたり、神経、動脈、静脈の出入り口になっているため、全身倦怠感、めまい、睡眠障害、起立性調節障害、記憶力・集中力の低下、過敏性腸症候群、機能性胃腸症、むずむず足、慢性疲労症候群、線維筋痛症などの様々な症状を引き起こします。また炎症が長引くと慢性腎炎や掌蹠膿疱症になるとされます。漢方治療を希望される方に結構な率で存在します。耳鼻科で処置をすると治ります。薬剤による鼻うがい、漢方、水素も有効です。検査をすると、ほぼ全員蛋白不足です。治ってもしばしば再発します。詳細は下記のサイトを参照ください。
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/
花粉症、アレルギー性鼻炎
漢方的に寒熱、燥湿をみて方剤を決めます。寒湿であれば小青竜湯でいいのですが、現代薬の使用により、湿熱や燥熱の状態になっていることもあるので注意が必要です。根本的原因は粘膜・皮膚の脆弱性です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合が劣化して抗原が侵入することが原因です。ビタミンDが特効薬とされます。栄養療法の併用が望まれます。
めまい、耳鳴
漢方的に一番多いのは水滞で、水チャンネル(アクアポリン)の劣化が原因です。利水剤を用います。次に多いのが局所的な血圧の異常です。釣藤散その他を用います。他に冷え、瘀血(血流障害)、血虚(低栄養)、気滞(肩こりなど)でも頭痛がおこります。随証的漢方治療と栄養療法で治療します。
皮膚科領域
ヘルペス、イボなどの慢性ウイルス感染
低栄養による免疫力低下のある方がほとんどです。適切な栄養療法が必要です。病変自体は湿熱が多く清熱利湿剤を主に使用します。ウイルスを押さえるためにビタミンC、ヨクイニンを用います。
アレルギー性皮膚炎、アトピー、手湿疹、慢性じんま疹、汗疱、酒さ
皮膚の炎症そのものを押さえるのは、漢方でも現代薬でも水素でも構いません。問題はそのあとで、直ちに皮膚の再生を促す必要があります。すなわち補気補血です。補剤を使うのですが、それだけでは不十分で材料となる栄養を補充することが必要です。そもそも様々な抗原に皮膚が反応するのは、低栄養のため皮膚の細胞の密着結合が劣化して容易に抗原が侵入するためです。栄養療法の併用が望まれます。
帯状疱疹後神経痛
桂姜棗草黄辛附湯(桂枝湯+麻黄附子細辛湯)が有効とされますが、長期に続き難治化した例では附子の増量、他の方剤への変更が必要です。ちなみに帯状疱疹の急性期は漢方的には湿熱です。抗ウイルス薬に清熱利水剤、ビタミンCを併用することで神経障害を防げます。そもそも帯状疱疹の発症自体が体力低下、気血両虚を意味します。適切な栄養摂取と気血双補剤の使用が望まれます。
眼科領域
結膜炎
原因の如何によらず、漢方的には湿熱です。清熱利水剤が有効です。
翼状片
ケロイド治療に準じます。
泌尿器科領域
夜間頻尿
いわゆる腎虚の症状です。八味丸などの補腎剤が有効ですが、同時に様々な漢方的異常が存在することが多く、それらを治療すると頻尿も同時に改善することが多々あります。
慢性膀胱炎、間質性膀胱炎
漢方的には下焦(下半身)の湿熱として治療されることが多いのですが、必ずしもうまくいきません。慢性炎症は低栄養です。間質性膀胱炎は、血管もふくめて膀胱が脆くなってしまった状態です。低栄養のなれの果てです。随証的漢方治療に栄養療法、水素の併用が有効です。
慢性前立腺炎
漢方的には瘀血とされます。鬱血をとる漢方が有効です。慢性炎症は低栄養ですので栄養療法、水素の併用が有効です。
歯科口腔外科領域
歯ぎしり、かみしめ、顎関節症
なにかの弾みで歯ぎしり、かみしめが始まると、その結果、頭部が鬱血して頭痛、肩こり、めまいなどが起こります。それらがつらいので、また歯ぎしり、かみしめが起こります。あとは悪循環です。かみしめる力で顎関節、歯が破壊されます。硬口蓋、口腔底に骨性隆起が発生します。抑肝散などで緊張を緩和することが必要です。しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。背景には低栄養があり、栄養療法が必要です。
舌痛症
低栄養のため中枢神経の働きに異常がおき、痛みを感じやすくなった状態です。現代薬、漢方に加え栄養療法が必要です。
薬剤副作用の治療
薬剤による痛み、しびれなど
生活習慣病などで長期に薬剤を飲んでいる方に見られます。薬剤性の横紋筋融解症や末梢神経障害です。漢方は無効です。高脂血症に使われるスタチン類によるものが目立ちます。薬害が出やすい方には、蛋白不足による解毒酵素の活性低下が存在します。適切な栄養摂取が望まれます。また胃酸抑制剤を長期に使用すると鉄不足になり、医学的異常がない部位に痛みを訴えます。脳のミトコンドリア機能低下による感覚情報処理の異常です。血液検査をしないと分からないので要注意です。
抗癌剤の副作用対策
下痢、口内炎、手足症候群のような皮膚粘膜の障害が主に問題になります。漢方的には湿熱です。清熱利水剤を用います。気血両虚≒鉄蛋白不足の患者で起こりやすくなります。適切な栄養補給、気血双補剤、水素などを考慮します。
コロナワクチン副作用
心臓、血管に対して毒性があり、心筋炎、脳梗塞、心筋梗塞、脳出血、血管炎、血栓症がおこります。免疫抑制により帯状疱疹がでたり発癌したり、癌が急に進行したります。また様々な部位に炎症が起こります。S蛋白は脳にも入るので脳の炎症も起こします。自己免疫疾患が悪化します。S蛋白の解毒にファスティング、ナットウキナーゼが有効とされます。背景に栄養障害があり、閉経前女性に多く見られます。栄養療法、漢方、水素などを適宜使用します。詳細は、下記サイトを参照ください。
https://www.isom-japan.org/article/article_page?uid=C22Sq1652348266
https://www.isom-japan.org/article/article_page?uid=DdY861660887089
https://isom-japan.org/article/article_page?uid=dhO5d1682651508
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