診療科・各部門について

漢方外来

スタッフと専門領域

医師名 出身大学 医師免許取得年 専門領域・資格等
科長
尾崎正時
千葉大学 昭和58年 ・医学博士
・日本東洋医学会認定 漢方専門医
・日本東洋医学会認定 日本東洋医学会指導医
・日本東洋医学会代議員
・日本東洋医学会東海支部幹事
・日本東洋医学会東海支部 静岡県部会副会長
・日本医学放射線学会認定 放射線治療専門医
・日本医学放射線学会認定 日本医学放射線学会研修指導者
・第一種放射線取扱主任者

診療案内・外来表

目次

漢方の適応疾患

内科領域 小児科領域 精神科領域
産婦人科領域 外科領域 整形外科領域
耳鼻科領域 皮膚科領域 眼科領域
泌尿器科領域 歯科口腔外科領域 薬剤副作用の治療

内科領域

感冒、その他の急性感染症
漢方の独壇場です。寒熱、虚実、表裏の判定が重要です。現代医学には、この概念がないので風邪の治療がうまくいかないことがあります。体温に関係なく寒がっているのが寒証、暑がっているのが熱証です。体力がなく汗がでているのが虚証で、逆が実証です。脈が浮いているのが表証で沈んでいるのが裏証です。寒がっていて汗なく脈が浮いていれば、表寒実証のたとえば麻黄湯などを使います。汗があれば表寒虚証の桂枝湯となります。脈が沈んでいれば、裏証であり裏寒虚証の麻黄附子細辛湯、真武湯などとなります。暑がっている熱証の風邪であれば、銀翹散などの冷やす薬を使用します。
感染症は低栄養で起こります。風邪引きやすい人と引きにくいひとの差は栄養状態の差です。


喘息
消炎、精神安定作用の柴朴湯で発作を予防し、発作時に麻杏甘石湯で消炎、気管支拡張をはかるとされますが、根本的原因は気道粘膜の脆弱性です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化し抗原が侵入しやすくなっています。栄養療法と補剤で気管支粘膜を立て直します。


喘息気管支拡張症、副鼻腔気管支症候群、非定型抗酸菌症
痰が出にくい体質が原因です。気管支の炎症を繰り返すうちに、気管支が拡張してしまい、さらに痰がだせなくなります。出ていかない痰は気管支内に貯留し乾燥して固まります。気管支の炎症も治りません。漢方的には燥熱です。気管支を潤して冷やして痰を出す薬を用います。


間質性肺炎
肺の劣化した蛋白に反応している自己免疫疾患と考えます。蛋白不足が主因です。随証的漢方治療に水素、栄養療法を併用します。


過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎
低栄養による脳の機能低下により、消化管のコントロールがうまくいっていない状態です。通常、消化管自体の劣化もともなっています。随証的漢方治療に栄養両方を併用します。慢性上咽頭炎が原因のことがありますので注意が必要です。


潰瘍性大腸炎、クローン病
腸の劣化した蛋白に反応している自己免疫疾患と考えます。蛋白不足が主因です。炎症をとめる漢方を使います。随証的漢方治療に水素、栄養療法を併用します。


しもやけ、冷え症、レイノー病
ミトコンドリア機能低下による熱産生不足に血流コントロールの異常が伴った状態と考えます。熱産生を増やし、血流を調節します。蛋白、鉄、ビタミンB群などでミトコンドリア機能を改善し、手足の血流を増やす漢方を用います。ビタミンE、ナイアシンなどの血流を増やすサプリも有効です。


高血圧
動脈壁の蛋白の劣化により動脈壁の弾性がなくなると血圧を上げないと臓器の血流量が保てなくなります。薬で血圧を下げると臓器の血流が少なくなり臓器の血流低下になります。流れが悪いので梗塞も起こしやすくなります。
降圧薬で血圧をさげると脳の血流は低下します。結果として朦朧としたり倒れたりする危険があります。高齢者の交通事故の原因は降圧薬だともいわれています。同じように肝臓や腎臓の機能も低下します。
大切なことは血圧を下げることではなく、血管壁の弾力を取り戻して、血圧が低くても十分な血流が流れるようにすることです。十分な栄養摂取で劣化した血管壁の蛋白を正常なものに置き換えます。またマグネシウムで血管の緊張をとり血圧を下げ不整脈を防ぎます。マグネシウムはカルシウムの逆の働きをします。天然のカルシウム拮抗薬といえます。現代人はマグネシウム不足、カルシウム過剰の状態にあります。不用意なカルシウム摂取は高血圧、不整脈、動脈石灰化の原因となります。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。


不整脈
心筋細胞内のマグネシウム不足によりおこります。マグネシウムは細胞を興奮しにくくし、不整脈をおさえます。カルシウムはマグネシウムの逆の働きをします。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。随証的に漢方を併用します。


高脂血症
一番大切なことは、副作用の多いスタチン製剤を使わないことです。スタチンなどのHMG-CoA還元酵素阻害剤はからだを活性酸素から守っているCoQ10を低下させます。そのため放射線や抗癌剤の障害が強く出ます。また発癌しやすくなります。一番多い副作用は筋肉痛やしびれです。通常、副作用は飲んですぐにはおきません。数ヶ月から数年後に発症しますので、しばしば見落とされます。
動脈硬化の最大の原因は動脈壁の材料不足による劣化であり、通常は蛋白、鉄、ビタミンC不足でおきます。動脈壁にコレステロールが沈着しているからといって、栄養状態を改善せずにコレステロールをさげるのは本末転倒です。コレステロールは細胞の維持に必要なものであり、肝臓で合成されLDLコレステロールにより末梢組織に送られます。加齢によりコレステロールが上がるのは、全身の細胞のコレステロールが劣化して、その補充のためにコレステロールが必要だからです。これを下げると体調不良となります。脳はコレステロールの需要が特に大きい臓器であり、コレステロールを下げると様々な精神症状がでます。スタチン服用者に列車飛び込み自殺が多いと言われますが当然のことと考えます。コレステロールを下げたければコレステロールが劣化しないようにすればいいわけです。栄養療法で抗酸化酵素の活性を正常化し、必要な抗酸化物質をとることで低下します。ちなみに蛋白不足だとコレステロールを運ぶリポタンパクが作れないのでコレステロールは低くなります。こういうひとはコレステロールが低くても体調は悪いはずです。またHDLコレステロールの上昇は肝臓で処理しなくてはならない劣化した脂質が多いことを意味します。


膠原病、関節リウマチ、SLE
変性した体蛋白を免疫系が攻撃している状態です。蛋白不足が原因です。女性に多いのはこのためです。体蛋白の更新のために十分な栄養が必要です。症状緩和のために用いられる現代薬では、副作用が問題となります。漢方や水素で炎症をおさえて、栄養療法で体蛋白の更新を図ります。


アレルギー疾患、花粉症
根本的原因は皮膚・粘膜のバリア機能の低下です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化し抗原が侵入しやすくなっています。栄養療法と補剤で皮膚・粘膜を立てなおします。随証的に漢方を併用します。


橋本病、バセドー病
変性した甲状腺を免疫系が攻撃している状態です。蛋白不足が原因です。女性に多いのはこのためです。甲状腺蛋白の更新のために十分な栄養が必要です。現代薬で副作用が出る場合は、漢方で対応します。


糖尿病
高血糖は血管を障害しますが、実はインシュリンも血管毒性があります。糖質制限で高血糖を避けつつ、インシュリンやインシュリンを分泌させる薬剤を避けることが望まれます。高血糖による障害を回復させるために栄養療法、漢方が有効です。


腎機能低下
腎機能を下げないためには糖質制限、低インシュリン状態が必要です。痛み止めの使用や慢性上咽頭炎も腎機能をさげるので注意が必要です。腎機能がさがったときに蛋白制限は逆効果です。腎の再生のためには材料すなわち十分な蛋白摂取が必要です。漢方では養腎降濁湯、オウギ末などが有効とされます。


片頭痛
漢方的に一番多いのは水滞の頭痛で、気圧変化で起こります。通常、雨の前後に起こります。水チャンネル(アクアポリン)の劣化により、体内の水の流れが制限され、気圧の変化に対応できないことが原因です。五苓散などの利水剤を用います。次に多いのが肝気鬱結、気逆の頭痛です。通常は朝の頭痛となります。局所的な血圧の異常のようです。釣藤散その他の解鬱薬を用います。お腹の冷えと同時に出る頭痛があります。呉茱萸湯などお腹を温める薬を使います。肩こり、首こり、頚椎の異常から来る頭痛もあります。葛根加朮附湯などを使用します。他にも瘀血(血流障害)、血虚(低栄養)でも頭痛がおこります。いずれも栄養不良が背景にあります。また原因も通常ひとつではなく、複数の原因で起こっていることがほとんどです。漢方と栄養療法の併用で治癒します。しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。


化学物質過敏症
低栄養で解毒酵素の活性がさがると、抗生剤や抗癌剤などの薬物の副作用がでやすくなります。栄養療法で解毒機能があがると改善します。これとは異なり通常は不快に感じない臭いや音、電磁波が不快でたまらないことがあります。これは解毒能の低下ではなく脳の情報処理の異常です。通常は低栄養によります。女性に多く見られます。栄養療法と随証的漢方治療を行います。


不定愁訴
現代医学で不定愁訴とされる症状は一定の類型を持ち、大昔から存在していました。現代医学的には説明できないというだけで伝統医学的には解釈可能で、症状別に対応する方剤が存在します。検査をすると鉄蛋白不足が高頻度に見られます。原因は脳のエネルギー(ATP)不足と考えています。栄養療法、随証的漢方治療で改善します。しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。


小児科領域

小児疾患のかなりの部分は、胎児期、小児期の低栄養が原因です。小児は成長するために常に大量の栄養を必要としています。十分量の栄養を与えても成長に使われてしまい、さらに栄養が必要になります。小児は大人に比し常に低栄養状態にあります。この状態は成人になるまで続きます。このため大人より低栄養の症状が出やすくなります。また消化器の弱い子は、必要量が摂取ができないことがあります。一般に出生体重が3000g以下の小児は消化器が弱いとされます。十分な観察と栄養投与が必要です。
採血すると子供と母親のデータがそっくりなことがほとんどです。一部には遺伝的背景もあるのでしょうが、低栄養の母親から低栄養の子が生まれ似たような病気になるという、一見遺伝性に見える負の連鎖が見られます。栄養療法で母子ともに治療することが望まれます。


起床困難、起立性調節障害、不登校、うつ、イライラ、チック
小児は常に相対的低栄養状態であり、大人より鉄蛋白不足の症状が出やすくなります。身長が伸びたときに悪化するのが特徴です。2-3cmの伸びでも症状は悪化します。常に身長と体重をモニターすることが望まれます。鉄蛋白不足の症状が主体です。まずエネルギー不足で頭と体が働きません。その結果、イライラして反抗的になります。反抗期のイライラ、気分変調の主な原因は相対的栄養不足です。視床下部下垂体副腎軸もやられますので副腎疲労で朝起きられません。また消化管も弱いことが多く、しばしばリーキーガットのために食物アレルギーになっています。皮膚粘膜も弱く、アトピー、花粉症などのアレルギー性疾患を併発します。しばしば青色強膜(白目が青味がかっている)を認めます。

青色強膜(白目が青みがかっている)

まずは鉄蛋白を補充することが必要ですが、すでに胃腸が弱っている場合にはうまく吸収できません。食事だけでは対応できないことが多く、プロテイン、アミノ酸、消化剤、サプリメント、漢方の併用を考慮します。また慢性上咽頭炎を起こしていることもあります。後鼻漏、のどに張り付いている感じがあれば精査が必要です。上咽頭炎を放置した状態では、どのような治療も無効です。つらい症状があれば随証的に漢方を使用します。


発達障害、学習障害
遺伝的背景、環境汚染などの影響はあると思いますが、受診される方はほぼ全員重度の鉄蛋白不足です。身長の伸びとともに出現した症状は、ほぼ全例鉄蛋白不足が原因です。栄養療法、漢方が有効です。


虚弱体質
消化管は胎生期の最後に完成する臓器です。このため低体重児は消化機能が弱くなりがちです。ひよわ=脾(消化器)弱であり、虚弱体質になりやすい傾向があります。腸管粘膜のバリアも弱く食物アレルギーが出やすくなります。成人でも出生体重3000g以下だったひとは消化機能が弱い傾向にあります。虚弱児は体幹の筋の緊張が低いため、体幹が不安定ですぐに診察台に横になろうとします。精神的には過緊張状態で、腹直筋だけがピンとはっていたり、異常にくすぐったがりです。漢方的には小建中湯を用いる症状とされます。原因は鉄蛋白不足です。胃腸を丈夫にする漢方を使用し、栄養を吸収しやすい形で与える必要があります。


夜驚、夜なき
できるだけ現代薬を避けることが望まれます。通常、甘麦大棗湯、抑肝散を用います。母親も同じ薬を飲むと効果が上がります。これを母子同服といいます。


精神科領域

うつ、気分障害、神経症性障害、発達障害、人格障害
遺伝的要因、社会的要因は当然ありますが、栄養異常によるものが注目されています。特に蛋白不足、鉄不足、亜鉛不足、ビタミンB群不足、ビタミンD不足が多いとされます。経験的には鉄蛋白不足が大部分を占めます。血液検査を行い栄養療法行います。つらい症状があれば漢方で対処します。現代薬の併用は問題ないと考えます。


身体表現性障害、疼痛性障害、線維筋痛症
明らかな病変がないのに痛みやしびれなどを感じる場合、脊髄以下の神経が障害されているか感覚情報の処理をする脳の異常のどちらかです。神経が障害されている場合、そのほとんどは薬害です。原因となる薬物を同定する必要があります。感覚情報処理の異常は、痛覚変調性疼痛を含みます。ほとんどが栄養障害です。栄養療法と随証的漢方で改善します。


不眠症
不眠は漢方的にみると複数の症状のひとつに過ぎないことがほとんどです。随証的漢方で改善します。


産婦人科領域

血の道症、更年期障害、PMS、月経困難症、月経不順、過多月経、過小月経、産後の不調
血の道症という病名があります。漢方からきた病名です。「月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性のホルモンの変動による不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のこと」とされています。血の道症に対する漢方方剤は多数存在し、それなりに有効です。栄養療法的には血の道症の原因はホルモンの変動とは関係なく、鉄蛋白不足だといわれています。月経、出産をくりかえしているうちに鉄蛋白不足になり体調を崩す。これがすなわち血の道症です。漢方で症状はある程度とれますが、鉄蛋白を補充しないと本質的解決にはなりません。栄養療法と随証的漢方で改善します。毎月排卵するということは体にとっては大きな負担です。出産を望まないのであれば、婦人科で月経を止めると改善します。ただし蛋白不足の方は薬害がでやすいので注意が必要です。


不妊症
鉄蛋白不足、糖質過剰のかたがほとんどです。治療は血の道症に準じます。


外科領域

ケロイド、不良肉芽
皮膚が傷ついて切り離されると、切断部分に肉芽をつくり皮膚を接着させます。この肉芽を構成するのは主にはコラーゲンです。コラーゲンをつくるのには蛋白、鉄、ビタミンCその他が必要で、足りないと傷のつきが悪くなり、傷が盛り上がってケロイドになります。古い傷もつねに古くなったコラーゲンを新しいものに更新しています。蛋白不足で新しいコラーゲンが作れないと古い傷が開いてしまいます。術創をきれいに付けるには蛋白が必要です。


動脈瘤、静脈瘤
低栄養だと血管壁のコラーゲン等の更新がおくれ、血管壁が劣化します。血管が脆くなり出血しやすくなり、青あざができます。また血管の内圧に負けて血管壁が膨らんでしまうと、動脈瘤、静脈瘤になります。栄養療法に漢方を併用します。


四肢循環障害
動脈硬化などで動脈側の流れが悪くなるのは血虚で四物湯の適応、静脈側の流れが悪いのが瘀血で駆瘀血剤の適応とされます。糖尿などの基礎疾患による動脈の血流低下には疎経活血湯が有効とされます。


整形外科領域

加齢による変化、変形性関節症、骨関節症、骨粗鬆症、五十肩、ヘバーデン結節、ばね指
加齢により起こってくる疾患は栄養障害です。骨、関節、軟部組織を構成する蛋白は徐々に劣化していきます。劣化した蛋白は新しくする必要があるのですが、栄養不足ではそれができません。結果、徐々に骨・関節の破壊が進みます。これが骨関節症です。骨が劣化したとき、必要なのはカルシウム以前に蛋白、鉄、ビタミンCです。薬剤で骨にカルシウムを沈着させても骨の強化にはなりません。十分な栄養で引っ張り強度のある骨・靱帯を再建することが必要です。症状をとる漢方を用いながら栄養療法を行います。
現代薬の鎮痛薬は急性期の熱を持った状態には効くのですが、慢性期の血流がさがった状態には効きません。また鎮痛薬は治癒を遅らせ、長期連用で腎機能が低下します。附子剤などの血流をおとさない痛み止めを使用すべきです。


足底筋膜炎、デュプイトラン拘縮などの線維症、歯突起後方偽腫瘍
体内にできる繊維組織は、すべてケロイドと考えるとわかりやすいと思います。すなわち低栄養による組織の修復障害です。補血剤と栄養療法で対応します。


神経痛、手根管症候群、足根管症候群、肘部管症候群
神経がむくんだために周囲から押されて、しびれ、痛みが起こっている状態です。神経の浮腫と炎症です。柴苓湯を中心に用います。背景には血虚すなわち栄養障害があります。


痛風、偽痛風、石灰化腱炎
急性期の痛みは湿熱、すなわち炎症と浮腫が強い状態です。越婢加朮湯、茵蔯五苓散などの清熱利水剤で対応します。痛風の原因となる尿酸は、本来は体を守る抗酸化物質です。尿酸が高いときは体のどこかに炎症があるときです。慢性上咽頭炎、歯周病、脂肪肝など有無を確認して治療する必要があります。


筋痙攣、こむら返り
血管壁や筋肉細胞内のマグネシウム不足で起こります。筋肉細胞が興奮すると痙攣がおこります。筋肉に行く血管壁の細胞が興奮すると血管が攣縮し血が流れなくなり筋肉が痙攣します。マグネシウム投与で改善します。マグネシウムは細胞を興奮しにくくします。カルシウムはマグネシウムの逆の働きをします。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。随証的に漢方を併用します。


成長期に起こる異常、側弯症、成長痛、骨端症、スポーツ障害、大腿骨頭すべり症、先天性股関節脱臼
こどもの運動器疾患は栄養障害が背景にあります。成長の過程では、どんなに栄養を摂取していても常に相対的低栄養状態になっています。蛋白の必要量は成人の倍とされます。漢方その他で除痛しつつ、十分な蛋白、鉄、ビタミンCを与えます。


むちうち後遺症
治打撲一方合葛根加朮附湯が標準治療とされています。閉経前女性に多く、鉄蛋白不足を伴っています。外傷により損傷した組織が修復されない状態です。コラーゲンの劣化と更新不足が背景にあります。適切な栄養療法の併用が必要です。


外傷
外傷の急性期は瘀血です。駆於血剤が有効です。骨・関節には桂枝茯苓丸、治打撲一方の組み合わせが有効です。靱帯、腱、筋肉の障害には桂枝茯苓丸、麻杏薏甘湯、皮下組織の障害に対しては通導散が有効とされます。


耳鼻科領域

慢性上咽頭炎
インフルエンザの検査では鼻から棒をいれて喉の奥を調べます。その際、棒の先が当たる部分が上咽頭の咽頭扁桃というところです。風邪のウイルスが最初に付着する部位です。この部分が慢性炎症を起こすことがあります。咽頭違和感、後鼻漏、肩こり、頭痛、顎関節痛などの局所の症状を起こします。また上咽頭は頭蓋の底にあたり、脳神経、内頚動脈、内頚静脈の通り道になっているため、全身倦怠感、めまい、睡眠障害、起立性調節障害、過敏性腸症候群、機能性胃腸症などの自律神経症状を起こします。また炎症が長引くとIgA腎症や掌蹠膿疱症になるとされます。

慢性上咽頭炎が関与しうる疾患と症状

上咽頭炎を疑う所見としては後鼻漏、咽頭違和感(何かが張り付いている感じ)以外に、耳下部の圧痛、歯ぎしり、かみしめ、歯牙損傷、骨性隆起、側頭筋肥厚などがあります。耳下部の圧痛は下図の部位にでます。


耳下部圧痛の部位


骨性隆起とは写真のように上顎や下顎の骨が突出することです。骨性隆起があるならまずは上咽頭炎の検査をするべきです。

骨性隆起


下の写真は慢性上咽頭炎の内視鏡写真です。上咽頭に発赤はなく、むしろ白くむくんで見えます。表面には粘液がはりついて糸を引いています。(写真、上段)この粘液が下に落ちると後鼻漏となります。薬液をつけた綿棒でこすると容易に出血し(写真、下段)、血液、粘液、膿が綿棒に付着します。

慢性上咽頭炎の内視鏡所見

慢性上咽頭炎は漢方治療を希望される方に結構な率で存在します。耳鼻科で上咽頭擦過療法(EAT)をすると治ります。薬剤による鼻うがい、漢方も有効です。検査をすると、ほぼ全員蛋白不足です。治ってもしばしば再発します。詳細は下記のサイトを参照ください。

日本病巣疾患研究会HP 慢性上咽頭炎
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/

漢方.jp特別講演会「所見の無い咽頭痛・後鼻漏は上咽頭炎を疑う!」竹越哲男先生
https://www.youtube.com/watch?v=hXCQzvY0We4&list=PLtTk6jwp4X9AyBPKFY-9IGlfbRaaI60Xk&index=2&t=1754s

コロナ後遺症、コロナワクチン副作用で慢性上咽頭炎になるケースが増えています。通常の慢性上咽頭炎より治りにくい傾向にあり、しばしば治療に難渋します。


花粉症、アレルギー性鼻炎
漢方的に寒熱、燥湿をみて方剤を決めます。冷えてむくんでいる寒湿であれば小青竜湯でいいのですが、現代薬の使用により、寒熱錯雑、湿熱、燥熱の状態になっていることもあるので注意が必要です。熱を持っていれば越婢加朮湯などの冷やす方剤が必要ですし、熱をもっていて乾いていれば白虎加人参湯などで清熱滋潤しないといけません。
根本的原因は粘膜・皮膚の脆弱性です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化して抗原が侵入することが原因です。ビタミンDが有効とされます。栄養療法の併用が望まれます。


めまい、耳鳴
漢方的に一番多いのは水滞で、水チャンネル(アクアポリン)の劣化が原因です。利水剤を用います。次に多いのが局所的な血圧の異常です。釣藤散その他を用います。他に冷え、瘀血(血流障害)、血虚(低栄養)、気滞(肩こりなど)、頚椎の異常でもおこります。随証的漢方治療と栄養療法で治療します。


皮膚科領域

ヘルペス、イボなどの慢性ウイルス感染
低栄養による免疫力低下のある方がほとんどです。適切な栄養療法が必要です。病変自体は湿熱が多く清熱利湿剤を主に使用します。ウイルスを押さえるためにビタミンC、ヨクイニンを用います。


アレルギー性皮膚炎、アトピー、手湿疹、慢性じんま疹、汗疱、酒さ
皮膚の炎症そのものを押さえるのは、漢方でも現代薬でも水素でも構いません。問題はそのあとで、直ちに皮膚の再生を促す必要があります。すなわち補気補血です。補剤を使うのですが、それだけでは不十分で材料となる栄養を補充することが必要です。そもそも様々な抗原に皮膚が反応するのは、低栄養のため皮膚の細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化して容易に抗原が侵入するためです。栄養療法の併用が望まれます。


帯状疱疹後神経痛
桂姜棗草黄辛附湯(桂枝湯+麻黄附子細辛湯)が有効とされますが、長期に続き難治化した例では附子の増量、他の方剤への変更が必要です。ちなみに帯状疱疹の急性期は漢方的には湿熱です。抗ウイルス薬に清熱利水剤、栄養療法を併用することで神経障害を防げます。そもそも帯状疱疹の発症自体が体力低下、気血両虚を意味します。適切な栄養摂取と気血双補剤の使用が望まれます。


眼科領域

結膜炎
原因の如何によらず、漢方的には湿熱です。越婢加朮湯などの清熱利水剤が有効です。


翼状片
ケロイド治療に準じます。


泌尿器科領域

夜間頻尿
いわゆる腎虚の症状です。八味丸などの補腎剤が有効ですが、同時に様々な漢方的異常が存在することが多く、それらを治療すると頻尿も同時に改善します。


慢性膀胱炎、間質性膀胱炎
漢方的には下焦(下半身)の湿熱として治療されることが多いのですが、必ずしもうまくいきません。慢性炎症の原因は低栄養です。間質性膀胱炎は、血管もふくめて膀胱が脆くなってしまった状態です。低栄養のなれの果てです。随証的漢方治療に栄養療法、水素の併用が有効です。


慢性前立腺炎
漢方的には瘀血とされます。鬱血をとる漢方が有効です。慢性炎症は低栄養ですので栄養療法、水素の併用が有効です。


歯科口腔外科領域

歯ぎしり、かみしめ、顎関節症
なにかの弾みで歯ぎしり、かみしめが始まると、その結果、頭部が鬱血して頭痛、肩こり、めまいなどが起こります。それらがつらいので、また歯ぎしり、かみしめが起こります。あとは悪循環です。かみしめる力で顎関節、歯が破壊されます。硬口蓋、口腔底に骨性隆起が発生します。(骨性隆起)抑肝散などで緊張を緩和することが必要です。しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。背景には低栄養があり、栄養療法が必要です。


舌痛症
低栄養のため中枢神経の働きに異常がおき、痛みを感じやすくなった状態です。やはり、しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。背景には低栄養があり、栄養療法が必要です。


薬剤副作用の治療

薬剤による痛み、しびれなど
生活習慣病などで長期に薬剤を飲んでいる方に見られます。薬剤性の横紋筋融解症や末梢神経障害です。これらに対して漢方はほぼ無効です。高脂血症に使われるスタチンによるものが目立ちます。薬害が出やすい方には、蛋白不足による解毒酵素の活性低下が存在します。適切な栄養摂取が望まれます。また胃酸抑制剤を長期に使用すると鉄不足になり、医学的異常がない部位に痛みを訴えることがあります。痛覚変調性疼痛です。脳のミトコンドリア機能低下による感覚情報処理の異常です。血液検査をしないと分からないので要注意です。


抗癌剤の副作用対策
下痢、口内炎、手足症候群のような皮膚粘膜の障害が主に問題になります。漢方的には湿熱です。清熱利水剤を用います。気血両虚≒鉄蛋白不足の患者で起こりやすくなります。適切な栄養補給、気血双補剤、水素などを考慮します。


コロナワクチン副作用
心臓、血管に対して毒性があり、心筋炎、脳梗塞、心筋梗塞、脳出血、血管炎、血栓症がおこります。免疫抑制により帯状疱疹がでたり発癌したり、癌が急に進行したります。また様々な部位に炎症が起こります。多いのは慢性上咽頭炎です。通常の慢性上咽頭炎より治りにくいと考えています。S蛋白は脳にも入るので脳の炎症も起こします。自己免疫疾患が悪化します。S蛋白の解毒にファスティング、ナットウキナーゼが有効とされます。背景に栄養障害があります。栄養療法、漢方、水素などを適宜使用します。詳細は、下記サイトを参照ください。

新型コロナワクチン副反応・後遺症の実態 ①臨床症状について
https://www.isom-japan.org/article/article_page?uid=C22Sq1652348266

新型コロナワクチン副反応・後遺症の実態 ②今後の課題とは
https://www.isom-japan.org/article/article_page?uid=DdY861660887089

ワクチン副反応・後遺症治療ー『後遺症治療研究会』『コロワク治療ナビ』のご紹介
https://isom-japan.org/article/article_page?uid=dhO5d1682651508

漢方とは

古代~近世までにもたらされた中国伝統医学と我が国の経験医学に西洋医学の知識を加え、独自に発展・体系化した日本の伝統医学です。江戸時代に入ってきた西洋医学を蘭方と呼ぶようになったのにともない、漢方と呼ばれるようになりました。中国の中医学に対して日本漢方とも呼ばれます。中国では現代医学を西医学、中国伝統医学を中医学と呼んでいます。漢方と中医学は、似ていますが違いもあります。漢方では、症状(証)に合わせて処方を決めます(方証相対)。また病位を重視します。傷寒論の六病位を現在も使用しています。中医学では、症状を伝統医学的に解釈し治療方針を決め(弁証論治)、処方を組みます。病質(臓象)を中心に考えることが多く、それらの相互関係を重視します。臓腑偏重で感染症以外では病位(経絡)を考えません。

漢方の適応

現代医療のなかで漢方が使われるのは、主には下記のようなケースです。


1.現代医学ではっきりした診断がつかない場合

不定愁訴や原因不明とされる症状でも、漢方的には病態を把握でき、対応する方剤が存在します。

 

2.診断はついているがよい治療法がない場合

たとえば風邪です。風邪を治す薬があればノーベル賞といわれていますが、漢方では大昔からあるのです。風邪薬という一種類の薬があるわけではなく、数十の処方を証にあわせて使い分けます。風邪の治療で特に重要なのは寒熱の判別です。患者が寒がっているのが寒証、暑がっているのが熱証です。寒がっている寒証の患者には、熱があっても解熱剤を使ってはいけません。体を温める方剤を使わなくてならないのです。現代医学には、附子、乾姜、桂枝のような体を温める薬物がないので、寒がっている寒証の風邪を治療できません。寒熱の概念のない現代医学では、熱があると解熱剤を使って風邪を遷延させてしまいます。

 

3.現代医学的治療の副作用の予防・治療

近年、様々な抗悪性腫瘍薬が使用されていますが、副作用対策が不十分です。現代薬にはよい薬が少ないので、副作用が強いと休薬しなくてはいけません。漢方が有効です。また放射線治療の副作用は、現代薬がほぼ無効で漢方でないと治療できません。 現代薬で合併症が出る人には、栄養障害が存在します。低栄養だと解毒能力が下がり薬剤の副作用が出やすくなるのです。栄養療法を併用することで治療効果があがります。

 

4.多臓器・多系統にわたる疾患

たとえば水滞(水毒)という病態があります。からだのなかで水が滞る病態です。アクアポリン(水チャンネル)の劣化によって起こるようです。雨の頭痛、乗り物酔い、口渇、歯根舌、胃内停水、小便が多い、小便が少ない、水様帯下、水様下痢、むくみ、関節液貯留など全身に多彩な症状をおこすのですが、原因は水の流れの悪さです。治療には、アクアポリンに働いて水の流れを整える利水剤を使います。このように漢方は体全体を把握して治療することができます。

 

5.病気の予防、体質改善、病後、産後の体力回復

虚弱な人、炎症を起こしやすい人、病後などで弱った人に漢方を長期に使用すると確かに効果があるのですが、こういう人には背景に栄養障害があります。体質の異常とは、胎生期も含めた過去の栄養不足の結果です。漢方薬は栄養にはなりませんが、栄養の吸収や利用を促進し体力をつける働きがあります。

当科の漢方の特徴

漢方でも現代医学でも、どういった種類の病気が時間経過のなかで治療時にどのような状態になっているのかを把握して治療することが必要です。病気の性質(病質、証)と進み具合(病位、経絡)を二次元的にとらえる必要があります。このような考え方は、清朝末期から中華民国時代には主流だったようですが、中華人民共和国により現代中医学がまとめられたときに簡略化により失われてしまいました。日本漢方でも最近は中医学の影響で病位が軽視される傾向にあります。当科では、病質と病位を二次元的に捉える漢方を実践しています。
漢方薬は、原則として保険適応のエキス製剤と生薬末のみを使用します。煎じ薬、鍼灸には対応していません。

漢方理論について

漢方理論には空理空論が多く、こじつけも多々あります。しかし漢方薬物、漢方方剤の運用のために作られた取り決め、約束事ですので知らないと応用が利きません。現代医学的発想で漢方を使ってもそれなりに効きますが、やはり長年の検証に耐えて残っている漢方理論に分があります。以下、気血水、病質、病位について解説します。


1.気血水

主には日本漢方で使われる概念です。単純で理解しやすく多用される理論です。詳細については漢方理論(気血水)の現代医学的解釈を参照ください。


2.病質(病気の性質)

病気の性質の分類です。病性、病勢、六淫、四傷、病向、臓象の6つの観点から病気を分類します。

 

①病性 寒熱
熱証 
緊張的・興奮的・充血的・炎症的・高血圧的・機能亢進的状態。

顔面紅潮、あつがり、暖房嫌い、口渇、多飲、冷飲食好き、生理が早い、経血鮮紅、尿が濃い、硬便、頻脈、黄色痰、膿性帯下などの症状。

寒証 弛緩的・萎縮的・貧血的・無力的・低血圧的・機能衰退的状態。

顔面蒼白、冷房嫌い、温飲食好き、生理が遅れる、経血暗黒、尿が薄い、尿意頻回、軟便下痢、徐脈、悪寒、冷え症、薄い痰、水様帯下などの症状。

 

②病勢 虚実
実証  
出ない悩みをもつ体質。

実とは過剰。病邪の体外排瀉障害、充血、汗が出にくい、経前痛、過小月経、尿意欠乏、尿量少ない、硬便、便意欠乏、便量少ない、便秘などの症状。

虚証 出過ぎる悩みをもつ体質。

虚とは不足。体力不足、貧血、顔面蒼白、元気ない、汗が多い、経時痛、過多月経、尿意頻回、尿量多い、軟便、便意頻数、便量多い、下痢などの症状。

 

③六淫 病邪
風邪 
痛み、かゆみ、こり、マヒ、無感覚、しびれ、ひきつれ、こわばり、けいれん、震え、てんかん、アレルギーなどの症状。

冷邪 体温不足、低温侵襲、冷え症、冷感、悪感、低血圧、消化不良、下痢、帯下、頻尿などの症状。

湿邪 体内水分過剰、水分の部分的貯留、浮腫、舌縁の歯形、薄い痰、嘔吐、水様帯下、頻尿、尿量減少、下痢、黄疸、胃内停水、腸鳴などの症状。

燥邪 全身的絶対的水分不足、皮膚枯燥、煩褐、舌のひび割れ、乾咳、多汗、寝汗、無月経、便秘などの症状。

火邪 病的興奮状態、炎症、不眠、腫物などの症状。

暑邪 体熱放散不全による鬱熱状態、日射病、熱中症などの症状。

 

④四傷 気血痰鬱
上述の気血水と重複する概念。
気傷 機能障害のみ(血傷、痰傷、鬱傷の症状がない場合)。気虚、気滞(気欝+気逆)に相当。

血傷 血液関連症状:出血、充血、鬱血、貧血、瘀血。血虚、瘀血に相当。

痰傷 呼吸器、消化器の異常水分、浮腫、痰が多い、胃内停水、腸鳴、嘔吐、下痢。水滞に相当。

欝傷 消化器、循環器の異常、消化不良、痛み、肢痛、身体痛、リンパ腺の腫れ、血栓。気滞(気欝+気逆)に相当。

 

⑤病向 升降散収
升証 
上がるべきでないものが上がり、下るべきものが下らない為の症状。

上熱下寒、怒りっぽい、イライラ、のぼせ、不眠、体力なしの疲れ知らず、体上部の出血(鼻血、喀血、吐血)、目充血、咳、喘息、嘔吐、耳鳴、便秘などの症状。

降証 下るべきでないものが下り、上がるべきものが上がらない為の症状。

上寒下熱、低血圧、いつもだるい、いつも横になりたい、体力ありの元気なし、嗜眠、動悸、帯下が多い、習慣性流産、体下部の出血、下痢、月経過多、多尿などの症状。

散証 出るべきでないものが出たり、出るべきものが出過ぎる為の症状。

気が散って集中できない、不眠、体が冷える、多汗、寝汗、不正出血、痰が多い、嘔吐、月経過多、帯下が多い、尿量が多い、下痢などの症状。

収証 出るべきものが出ない状態。

体温上昇、発熱、発疹、乾咳、無汗、無月経、尿量減少、便秘などの症状。

 

⑥臓象 五行
薬物はその味によって酸味薬、苦味薬、甘味薬、辛味薬、鹹味(+淡味)薬の5種類に分類できます。臓象とはこの5種類の薬物に反応する病状を、肝木病、心火病、脾土病、肺金病、腎水病の五つに分類したものです。

 

肝木病

木性薬に反応する症状。木性薬とは酸味薬の最大公約数的薬効をもつ薬物。この薬効をもつ薬物は酸味でなくとも木性薬とし、この薬効をもたない薬物は酸味であっても木性薬ではない。実証には木性、火性、金性の瀉薬、虚証には木性、水性、土性の補薬を使用。

情緒の変動、自律神経失調、栄養障害、循環障害、関節の異常、目の障害と関係。
三番目に治療すべき症状。

 

肝木病の代表的病態

[虚証]
肝血虚 
皮膚枯燥、爪割れ、脱毛、眼精疲労、目のかすみ、ドライアイ、羞明、眠りが浅い、しびれ感、筋痙攣、月経遅延、経血過少。中枢神経以外の血虚の症状。虚証の血傷などに相当。

肝陰虚 肝血虚の症状に、ほてり、のぼせ、熱感、寝汗などの虚熱の症状が加わる。虚熱証の燥邪、火邪、血傷などに相当。

肝陽上亢 肝血虚、肝陰虚に頭痛、顔面紅潮、イライラ、易怒、耳鳴など頭部の症状を伴う。虚熱証の燥邪、火邪、血証、升証などに相当。

肝風内動 ふるえ、痙攣、熱性痙攣、ひきつけ、ふらつきなどを内風すなわち体内の風と捉える。風邪に相当。

[実証]
肝気鬱結 
血虚がなく、情緒不安定、ヒステリー、ため息、胸脇苦満、便秘、経前乳房脹痛。実熱証の気傷、火邪などに相当。

肝火上炎 血虚がなく、イライラ、易怒、不眠、頭痛、めまい、耳鳴、難聴、顔面紅潮。実熱証の火邪、升証などに相当。

肝胆湿熱 肝炎、胆嚢炎など。実熱証の湿邪、痰傷などに相当。

肝気横逆 肝木病にともない、ストレス性胃炎などの胃腸症状を来したもの。

 

心火病
火性薬に反応する症状。火性製薬とは苦味薬の最大公約数的薬効をもつ薬物。この薬効をもつ薬物は苦味でなくとも火性薬とし、この薬効をもたない薬物は苦味であっても火性薬ではない。実証には火性、土性、水性の瀉薬、虚証には火性、木性、金性の補薬を使用。

循環器疾患、意識障害、精神障害、血液循環、舌症状、味覚異常、血管・血液の異常と関係。
四番目に治療すべき症状。

 

心火病の代表的病態
[虚証]
心気虚 
動悸、息切れ、胸苦しい、不安感、めまい感、多汗、顔色不良、動くと症状悪化、不整脈。虚証の気傷などに相当。

心陽虚 心気虚の症状に、四肢の冷え、寒気、チアノーゼ、不整脈などの寒証が加わる。虚寒証の気傷、冷邪などに相当。

心血虚 寝つきが悪い、断眠、多夢、驚きやすい、不安感、健忘、めまい、頭のふらつき、動悸。虚証の血傷、散証などに相当。

心陰虚 心血虚の症状に、のぼせ、焦燥、手足ほてり、口喝、寝汗などの虚熱の症状が加わる。虚熱証の火邪、燥邪、血傷、散証などに相当。

[実証]
心火旺 
不眠、多夢、顔面紅潮、焦燥、口渇が強い。口内炎、舌びらん、狂躁、精神異常。心陰虚の症状が強いもの。実熱証の気傷、火邪、燥邪、升証などに相当。

心腎不交 心火旺の症状に腎陰虚の症状が加わったもの。

 

脾土病

土性薬に反応する症状。土性薬とは甘味薬の最大公約数的薬効をもつ薬物。この薬効をもつ薬物は甘味でなくとも土性薬とし、この薬効をもたない薬物は甘味であっても土性薬ではない。実証には土性、金性、木性の瀉薬、虚証には土性、火性、水性の補薬を使用。

栄養調節、消化吸収、口唇症状、口腔異常、筋肉症状、唾液・涎と関係。
最優先で治療すべき症状。

 

脾土病の代表的病態
[虚証]
脾気虚 
食欲不振、小食、味がしない、腹部膨満、便秘、泥状便、息切れ、元気がない、虚証の気傷などに相当。

脾陽虚 脾気虚の症状に、不消化下痢、よだれ、腹が冷えて痛む、寒がり、四肢の冷えなど、寒証を伴う。虚寒証の気傷、冷邪などに相当。

中気下陥 脾気虚または脾陽虚の症状に手足のだるさ、立ちくらみ、胃下垂、遊走腎、脱肛、子宮脱などの内臓下垂を伴う。虚証の降証に相当。

脾不統血 脾虚の症状に鼻出血、皮下出血、市販、血尿、過多月経、不正出血などの出血傾向を伴う。虚証の血傷、散証などに相当。

[実証]
寒湿困脾 
食欲不振、悪心、上腹部膨満感、口粘、体がだるくて重い、頭が締め付けられて重い、腹痛、水様便。実寒証の冷邪、湿邪などに相当。

胃熱 上腹部灼熱感、食べると悪化、口臭、口苦、胸やけ、悪心、嘔吐、呑酸、口渇、多飲、飢餓感、便秘。 実熱証の火邪などに相当。

胃気上逆 悪心、嘔吐、おくび、吃逆。気傷、升証、冷邪、火邪、暑邪、湿邪などに相当。

 

肺金病
金性薬に反応する症状。金性薬とは辛味薬の最大公約数的薬効をもつ薬物。この薬効をもつ薬物は辛味でなくとも金性薬とし、この薬効をもたない薬物は辛味であっても金性薬ではない。実証には金性、水性、火性の瀉薬、虚証には金性、土性、木性の補薬を使用。

呼吸機能、大便排泄機能、鼻症状、嗅覚異常、皮膚症状、発汗異常と関係。
二番目に治療すべき症状。

 

肺金病の代表的病態
[虚証]
肺気虚 
多汗、寒気、易感冒、咳嗽、息切れ、声に力がない、顔面蒼白、薄い痰。虚寒証の気傷、冷邪、湿邪、散証などに相当。

肺陰虚 乾性咳嗽、粘痰、嗄声、喉の乾燥、口渇、ねあせ、羸痩。虚熱証の気傷、燥邪、散証などに相当。

[実証]
風寒束表 
悪寒、頭痛、くしゃみ、鼻水、身体痛。寒証の気傷、風邪などに相当。

風熱犯肺 熱感、咽痛、黄色鼻汁、頭痛。熱証の気傷、風邪などに相当。

燥邪犯肺 感性咳嗽、粘痰、鼻口乾燥、皮膚乾燥、無汗、鼻閉。実証の燥邪などに相当。

 

腎水病
水性薬に反応する症状。水性薬とは鹹味薬の最大公約数的薬効をもつ薬物。この薬効をもつ薬物は鹹味でなくとも水性薬とし、この薬効をもたない薬物は鹹味であっても水性薬ではない。実証には水性、木性、土性の瀉薬、虚証には水性、金性、火性の補薬を使用。
生殖機能、感染早期の防衛機能、耳症状、聴覚異常、骨格症状、泌尿器異常と関係。
最後に治療すべき症状。

 

腎水病の代表的病態
[虚証]
腎精不足 
眩暈、耳鳴、脱毛、歯牙動揺、知能減退、健忘、動作緩慢、腰膝のだるさ、性機能減退、小児の発達不良、女性の無月経、不妊。虚証の気傷、降証、散証などに相当。

腎気不固 腎精不足の症状に、尿失禁、夜尿、尿の余瀝、無性、早漏。虚証の降証、散証などに相当。

腎陽虚 腎精不足の症状に、元気がない、いつも眠い、寒がる、四肢冷感、多尿、頻尿などの寒証。虚寒証の気傷、冷邪、湿邪、痰傷、降証、散証などに相当。

腎陰虚 腎精不足の症状に、熱感、のぼせ、手掌足蹠熱感、口渇、寝汗、尿が濃いなどの虚熱の症状。虚熱の気傷、火邪、燥邪、降証、散証などに相当。

[実証]
膀胱湿熱 
急性膀胱炎。実熱の火邪、湿邪に相当。

 

病質、臓証、五行色体表

二宮文乃、松永均、張明澄  尾崎改

表現の重複と病態分類
病性、病勢、六邪、四傷、病向、病質・臓象は病態を異なった視点で分類しているのですが、重複した分類、表現があります。例えば寒証と冷邪と腎水病は似ていますし、陽虚とも近い概念です。単純に掛け合わせると2×2×6×4×4×5で1920通りの病態があることになりますが、実臨床では寒熱虚実×(六邪+升降散収)の40分類で十分とされます。


3.病位(病気の進行度)

病気の進行の程度を表します。

 

病位分類の変遷

最初は表裏の分類だけでした。その後手足のツボの分類である十二正経を用いて十二分類されるようになりました。傷寒論では、三陰三陽の六経になり、温病論では三焦・衛気営血の六分類になりました。清末から中華民国時代に活躍した名医、張錫純は十二経絡を用いていたといわれます。昭和から平成にかけ活動した漢方研究家、張明澄はこの十二経絡を簡略化し八分類にしたものを提唱しました。当科では、この八分類を用いています。


二宮文乃、松永均、張明澄  尾崎改

十二病位(経絡)
以下、十二経絡について概説します。

膀胱経 表証 急性病で発熱、頭痛、呼吸器症状、皮膚症状のほかに何らかの他の症状がる段階。

肺経 表証 急性病で発熱、頭痛、呼吸器症状、皮膚症状のほかに何も症状がない段階。

心経 裏証 不眠・のぼせ・イライラなどの精神的、心理的、情緒的症状だけがあって、他の身体症状が無い段階。

心包経 裏証 心包とは解剖学的には胃。精神的、心理的、情緒的原因によって、ムカムカ、吐気、悪心、食欲不振など軽い胃(心窩部)症状がともなう段階。

胆経 裏証 精神的、心理的、情緒的症状の段階。胃(心窩部)以外の症状を伴う段階。

胃経 裏証 胃腸症状が主になっている段階。

小腸経 裏証 肩こりや血液・尿などの異常が主症状になっている段階。

三焦経 裏証 化膿や炎症が主症状となっている段階。

大腸経 裏証 顔面症状または排泄症状が主症状になっている段階。

脾経 裏証 栄養異常が主症状になっている段階。

腎経 裏証 生命力が低下している段階。

肝経 裏証 血液の異常(鬱血、貧血、出血など)、起床困難または身体の構造的異常がある段階。

 

病位の求め方
急性発症で頭痛、悪寒、関節痛、腰背部痛、皮膚症状、浮腫などがある
 全身症状  膀胱経
 呼吸器症状、皮膚症状のみ 肺経
2週間以上続く症状で明らかな器質的疾患がなく、外見正常
 心身症的 胆経
 消化器症状中心 胃経
 上記以外 腸経
2週間以上続く症状で明らかな器質的疾患がなく、消耗した外見
 栄養異常が主体 脾経  
 上記以外 腎経
2週間以上続く症状で器質的疾患が存在 肝経

 

方剤帰経の求め方

上記は市販の書籍をもとに当帰芍薬散の構成生薬を表にしたものです。単位とはエキス製剤の標準使用量に対する比です。6種の生薬がほぼ均等に入っています。作用より血を増やし流れをよくし、利水することがわかります。気味より温性のものが多く、全体として温める性質を持つことが分かります。全体として補の性質をもち虚証に用いられます。潤燥は燥優位で乾かす方剤です。升降散収に偏りはありません。すなわち暖めて、補って利水する方剤です。五行は肝木、心火、脾土の方剤です。帰経とはどの病位(経絡)に使用するかを示します。脾経、肝経のもの、すなわち六経でいうと太陰病、厥陰病の薬が多く、病が進行し体力が弱った状態に使用する方剤であることがわかります。また茯苓、白朮は土性の補薬なので木性の補薬である当帰、芍薬を助けます。つまり当帰芍薬散の病質は虚寒証で湿邪であり、病位は肝経です。

 

病質(病気の種類)、病位(病気の進行度)による方剤の使い分け

上述のように各方剤の性質を求めると、方剤がどの病質のどの病位に適応するかが分かります。縦軸に病質、横軸に病位をとり、エキス製剤をあてはめたものが下図です。当帰芍薬散は虚寒証湿邪、陰病なので、虚寒の湿邪の列を見ると肝経に当帰芍薬散が載っています。病質と病位がわかれば早見表で使用方剤を決めることができます。病位と病質をひとつに決めかねる場合には、寒熱虚実と表裏と陰陽を決めて、そこに含まれる方剤を参考に使用する方剤を決めるという方法をとります。

 

二宮文乃、松永均、張明澄  尾崎改

複数の病質・病位
古来、病質病位が複数カ所にまたがることが観察されていて、このような状態を合病、併病、兼病などと呼びます。病質病位が一点に決まり、一つの方剤で対応できればすっきりするのですが、実臨床では異なった病質病位の複数の方剤を併用することが多々あります。たとえば虚証で陰病のひとが、体のつらさのために肝気鬱結をきたして胆経の実証の症状を来している場合を考えれば、ひとつの方剤では追いつかないことが容易に理解できると思います。

漢方理論(気血水)の現代医学的解釈

漢方理論のひとつに気血水の考え方があります。気はエネルギー・機能で血は材料・血液などといわれます。気の異常として、気虚(気が足りない)、気欝(気が流れない)、気逆(気が逆流する)があります。気欝と気滞を合わせて気滞ともいいます。血の異常として、血虚(血が足りない)、瘀血または血滞(血の流れが悪い)があります。水の異常として水滞(水の流れが悪い)があります。現代中医学の陽は気+熱、陰は血+水(津液)と捉えておけばよいと思います。以下、気虚、気滞、血虚、瘀血、水滞の症状をあげ、栄養の視点も加えて現代医学的に説明します。


気虚、陽虚の症状とその原因

 

気力がない、疲れやすい、日中の眠気、驚きやすい、倦怠感、息切れ、味がしない
脳のミトコンドリア機能低下によるエネルギー(ATP)不足の症状です。神経伝達物質の不足、神経細胞の劣化とも関係します。

立ちくらみ、動悸、多汗、自汗、手掌発汗
自律神経の異常活動です。自律神経を調整するより上位の脳のエネルギー(ATP)不足により起こります。

風邪をひきやすい
免疫力低下です。交感神経過緊張、低栄養によります。

寒がり、四肢の冷え
全身のエネルギー(ATP)産生障害です。ミトコンドリア機能の低下が主因です。交感神経過緊張による四肢の血流低下とも関係します。

食欲不振、小食、腹部不快、軟便・泥状便、食後腹満、胃もたれ
いわゆる胃腸虚弱です。出生体重の低い人に多く見られます。消化器の相対的低形成や酸化、糖化、低栄養などによる消化器の劣化、消化器をコントロールする自律神経の機能低下などが原因です。

脱肛、子宮脱、胃下垂
内臓下垂です。臓器そのものの劣化、内臓を挙上する筋肉の弛緩によります。後者は中枢神経の機能低下によると考えています。

鼻出血、皮下出血、経血過多、不正出血
軽い壊血病です。コラーゲン劣化などによる血管壁の劣化、血液凝固能の低下により起こります。


気滞(気鬱、気逆)の症状とその原因

 

抑うつ傾向、起床困難、時間により症状が変わる、移動性の痛み、焦燥感
大脳新皮質の活動低下とそれに伴う辺縁系以下の異常です。脳のエネルギー(ATP)不足により起こります。神経伝達物質の不足、神経細胞の劣化とも関係します。

冷えのぼせ、顔面紅潮、臍上悸、四肢の冷え、手掌足蹠の汗
自律神経の異常活動です。自律神経を調整するより上位の脳のエネルギー(ATP)不足により起こります。

月経不順
視床下部、下垂体の機能低下によりホルモンの調整がうまくいかない状態です。脳のエネルギー(ATP)不足により起こります。

動悸、頭重・頭帽感、喉のつかえ感、胸の詰まった感じ、季肋部のつかえ感、経前乳房脹痛
知覚情報を脳が誤読することで起こります。大脳、視床のエネルギー(ATP)不足によります。

胸部・腹部膨満感、げっぷ、排ガスが多い、残尿感、腹部の鼓音
自律神経の異常活動です。自律神経を調整する上位の脳のエネルギー(ATP)不足により起こります。臓器そのものの劣化も関係しています。

発作性頭痛、悪心の少ない嘔吐、怒責を伴う咳嗽、腹痛発作
反射の異常亢進です。反射を調整する脳のエネルギー(ATP)不足により起こります。


血虚、陰虚の症状とその原因

 

多夢、健忘、不安感、集中力低下、不眠、めまい感、しびれ感(蟻走感、鈍麻)、眼精疲労、過少月経、月経不順
大脳新皮質の機能低下とそれに伴う辺縁系以下の活動異常です。脳のエネルギー(ATP)不足によります。神経伝達物質の不足、神経細胞の劣化とも関係します。

顔色不良、脱毛、皮膚乾燥、口唇乾燥・裂、皮膚荒れ、あかぎれ、爪の異常、ドライアイ
体を作る材料の不足です。主には蛋白不足、鉄不足によります。

こむら返り、筋肉痙攣
マグネシウム不足、血管壁の痙攣による血流低下によります。


瘀血の症状とその原因

 

口唇・歯肉・舌の暗赤化、細絡、痔疾、静脈瘤
静脈壁の劣化による静脈の拡張です。主にはコラーゲンの劣化によります。毛細血管の流れにくさも一因です。

臍傍臍下圧痛、左右下腹部圧痛
内臓の鬱血により起こるとされます。静脈壁の劣化、血液の流れにくさが原因です。

目のクマ、顔面色素沈着
眼窩周辺の鬱血、物質沈着によると考えます。

皮下出血、過多月経、経血塊
血管壁の劣化、血液凝固能の異常により起こります。


水滞の症状とその原因

 

体が重い、むくみ、朝のこわばり
水チャンネル(アクアポリン)の劣化、更新不足により起こります。蛋白不足によるアルブミンの低下でも起こります。

頭重感、悪心・嘔吐、拍動性頭痛
脳の浮腫です。水チャンネル(アクアポリン)の劣化、更新不足により起こります。

車酔い、めまい、立ちくらみ、雨天症状増悪
内耳の水の流れの異常です。内耳の水チャンネル(アクアポリン)の劣化、更新不足により起こります。

胃内停水感、水瀉様下痢、グル音
腸管の水分吸収障害です。腸管の水チャンネル(アクアポリン)の劣化、更新不足により起こります。

口粘、胸水、腹水、心嚢水、帯下が多い
水の輸送能の低下です。水チャンネル(アクアポリン)の劣化、更新不足が一因となります。

尿量減少、多尿
腎臓の劣化によります。腎臓はもっとも水チャンネル(アクアポリン)の多い臓器です。腎臓の水チャンネル(アクアポリン)の劣化、更新不足が一因です。

水様鼻汁、唾液分泌過多
冷えによるとされます。エネルギー(ATP)産生障害です。


気血水の考え方は、栄養の視点を加えると現代医学的に解釈可能です。しかし現代医学では原因がわかっても治療ができません。漢方の診断方法は、原因を特定して解決するのではなく、方剤の運用のために決められたものです。おなじ蛋白不足の症状でも気虚と血虚では使う方剤は全く異なります。したがって方剤の選択には従来通りの漢方の診断が必要です。
気血水の異常と栄養の関係を図示すると下記のようになります。

 

鉄蛋白不足と気血水

漢方と分子栄養学・オーソモレキュラー医学

漢方が得意とする病気は栄養障害と密接な関係があります。漢方を十分に効かせるには栄養状態も同時に改善する必要があります。従来の漢方はこの点に問題があったと考えています。漢方で症状がとれても、栄養状態が改善しないと完全な治癒は望めません。薬をやめると再燃します。一方、栄養療法だけでは症状の改善に時間がかかります。一般的には治癒までに小児で数ヶ月、成人で数年を要するといわれます。薬物療法で症状をおさえながら栄養療法で体を丈夫にするのが最善と考えます。
漢方治療を始める際には、血液検査等で現代医学的疾患の有無、蛋白不足、鉄・マグネシウム・亜鉛などのミネラル不足、ビタミン不足、糖質摂取過剰などの栄養学的異常の有無を把握しておくことが必要です。以下、主な栄養異常について説明します。


蛋白不足

人体の蛋白は酸素、糖、炎症、飲酒などにより徐々に劣化していきます。劣化した蛋白は、新しく作られた蛋白に置き換えなくてはいけません。しかし蛋白摂取量が少ないと新しい蛋白ができずに劣化した蛋白がそのまま使われ続けます。
体を構成する蛋白が劣化すると体が脆く弱くなります。腸粘膜が弱くなるとリーキーガットになり食物アレルギーを起こします。皮膚や粘膜が弱くなると、花粉などの抗原が容易に入り込み、アレルギーを起こします。また皮膚が薄く傷つきやすくなり、妊娠線などの皮膚線条ができやすくなります。さらに傷の修復がうまくいかなくなります。傷のつきが悪い、付いた傷が開く、ケロイドができる、などの症状がでます。血管壁が弱くなると出血しやすくなります。長期的には血管が拡張し、静脈瘤、動脈瘤ができます。骨や関節が弱くなると、骨折しやくなり、徐々に変形性関節症、骨粗鬆症になっていきます。
劣化した体の蛋白を免疫系が異物と認識すると自己免疫疾患になります。 細胞のエネルギーを作るミトコンドリアの酵素も蛋白です。蛋白不足だとミトコンドリアの酵素活性が低下してエネルギー不足になります。症状は中枢神経にでやすく、疲労感、思考力低下、感情の暴走、知覚の異常、ホルモン調節の異常、自律神経の異常などが起こります。また熱産生が少なくなり冷え症になります。手っ取り早くエネルギーを得るために甘いものを好むようになります。
免疫応答には蛋白が必要です。蛋白不足だと感染に弱くなります。
体を活性酸素からまもる抗酸化酵素、消炎酵素が少なくなると、炎症を起こしやすくなり、放射線や化学物質の害を受けやすくなります。
解毒酵素の活性が低下すると薬物や毒性のある物質を処理できなくなり、薬剤の副作用が出やすくなります。化学物質過敏症になることもあります。 困ったことに蛋白不足になると消化管の劣化、消化酵素の減少により蛋白質を食べても消化できなくなり、より蛋白不足になっていきます。蛋白不足のひとほど蛋白をうけつけないのです。無理に蛋白を食べても消化できず、下痢や放屁がおこり、かえって体調をくずします。
以下に食品中の蛋白量、プロテインスコア(利用可能率)、プロテインスコアで補正した利用可能蛋白量を示します。

 

食品100g中の蛋白量とプロテインスコア(利用可能率)、利用可能蛋白量

一日の蛋白必要量はプロテインスコア100の蛋白で健康な人で体重g、子供はその倍、病気の場合は体重の1.5倍g、手術後は2倍gです。蛋白含有量を卵1個7g、食肉・魚肉は15%として概算します。食品中の総蛋白量で考えるなら、健康成人の一日の蛋白必要量を100gとします。蛋白は多すぎると体に負担がかかります。一日200g以上の摂取を長期間継続するのは危険です。
食事だけで摂取困難であれば、プロテイン、医療用アミノ酸、消化酵素を使用します。検査では、アルブミン(ALB)4.2g/dL以下、尿素窒素(UN)14mg/dL以下AST、ALT 20U/L未満、γ-GT 14U/L以下を蛋白不足としています。体調が悪いときは脱水になっているので数値が高めになり、一見正常に見えることもあるので注意が必要です。一方、点滴をすると数値は下がるので、正常な人でも異常値となることがあります。

 

鉄不足

ほとんどの閉経前女性、未成年では蛋白不足と鉄不足が併存しています。女性は月経、分娩で蛋白と鉄を同時に失います。また成長期には蛋白、鉄を大量に必要とするので、相対的鉄蛋白不足になります。鉄はヘモグロビンを作るのに必要なだけではありません。ミトコンドリアにおけるエネルギー産生に必要です。足りないとエネルギー不足の状態になります。コラーゲン産生にも必要です。足りないと皮膚、粘膜、血管、骨が脆くなります。コラーゲンがうまくできないと白目が青くなります(青色強膜)。青色強膜は重度の鉄タンパク不足なのですぐに治療すべきです。鉄は他にも様々な重要な働きをしています。
鉄は不足すると困るのですが、多すぎると炎症が悪化したり悪い菌が増えるなどの不具合が起こります。摂ればいいというものではないのです。
検査ではヘモグロビン(Hb)が有名ですが、Hbでは組織に存在する鉄の評価はできません。組織鉄を表すのはフェリチンです。男女とも100ng/mL以下は潜在的鉄不足です。またTIBC(総鉄結合能)は鉄需要を示します。300mcg/dL以上は鉄需要ありと判断します。蛋白不足がひどいと鉄を利用できないためフェリチンが低くても鉄需要がないことがあります。この場合は鉄を摂ってはいけません。TIBCが低いときはフェリチンが低くても鉄は不要です。治療には医療用鉄製剤、もしくは市販の鉄製剤を使用します。

 

鉄蛋白不足≒気血両虚

月経、分娩では、鉄と蛋白が同時に失われます。また鉄蛋白は、外傷、手術、献血、ビーガン食などでも失われます。子供では身長が伸びると鉄、蛋白が使われて鉄蛋白不足になります。鉄と蛋白はどちらが欠けてもいけません。たとえば体の蛋白の半分をしめるコラーゲンをつくるには蛋白と鉄とビタミンCが必要です。

 

TCA回路における酵素、補酵素、補因子の作用部位

TCA回路での8つの反応における補因子、補酵素について考えてみます。鉄、マグネシウムは3カ所に関与しています。ビタミンB群も必要だということはわかりますが、一番大切なものは8カ所での反応をつかさどる酵素です。酵素の活性は蛋白摂取量が少ないと低下していきます。これらは濃度のべき乗で影響しますので、たとえば鉄の濃度が90%になるとTCA回路全体の反応は0.93=0.729に低下します。もし蛋白不足で酵素活性が90%になると全体では 0.98=0.43に低下します。エネルギーを作るTCA回路の反応でも鉄不足より蛋白不足のほうが影響が大きいといえます。エネルギー産生にも蛋白と鉄が同時に必要なのです。
鉄と蛋白は密接に関係して働くので、鉄不足の症状と蛋白不足の症状は重なっています。蛋白と鉄に留意するだけで、体の不調のかなりの部分は解消します。逆に鉄蛋白不足が解消しなければ、どんなに薬、サプリ、針灸、整体、食養生などで治療しても症状の改善は一時的なものとなります。鉄蛋白不足の症状を、まとめると下の表のようになります。

 

鉄蛋白不足の症状

上記の表について説明します。

 

材料不足
蛋白が不足するとコラーゲンなどの体を構成する蛋白が作れません。蛋白の入れ替わりの多い爪、髪、皮膚に症状が出ます。通常は劣化していくのですが、異常な増殖をしめすこともあります。また体が傷ついたあとの修復が遅くなったり、うまく直せなかったりします。材料不足で体の蛋白が更新されないと、血管や骨、皮膚、腸管が脆く弱くなります。結果として出血や骨折が起こります。


酵素活性低下
体内の酵素活性が全般的にさがります。ミトコンドリアの酵素が減ると、エネルギーを作れなくなり、冷えや疲労感が出現します。また抗酸化酵素の活性が下がると炎症を起こしやすくなります。肝臓の解毒酵素が減ると、薬剤や化学物質に弱くなります。


水滞
水の通り道である水チャンネル(アクアポリン)という蛋白が劣化すると、体内での水の流れが悪くなり、水の偏在が起こります。むくみや眩暈、頭痛、下痢などが起こります。


組織鉄不足
組織中の鉄が減少すると明らかな貧血がなくても、顔や舌の色が白っぽくなります。


免疫力低下
免疫応答には細胞や抗体をたくさん作る必要があります。また大量のエネルギーが必要です。材料不足、エネルギー不足の状態だと、免疫力が下がってしまいます。


中枢神経症状

FDGーPET画像

上図は放射性ブドウ糖を投与したFDG-PET画像です。ブドウ糖の使用が多い臓器が黒く写っています。脳が一番エネルギーを使っていることが分かります。腎臓の一部と膀胱が黒いのは尿中に排泄された放射性ブドウ糖のためです。このように脳はエネルギーの消費密度が高い臓器です。しかも脳細胞は高度に役割分担をしていてネットワークとして活動するので、一カ所でも不調になると症状がでてしまいます。


神経細胞と軸索輸送

加えて、個々の神経細胞は神経突起や軸索という長い構造をもつ複雑な構造をしています。蛋白などは細胞の中央でしかつくれないため、それらを突起の先端まで輸送し、不要なものを中央に送り返さないといけません。これを軸索輸送といいます。エネルギーを作るミトコンドリアも細胞の中央でつくられ、突起の先端におくられます。神経細胞は単に大量のエネルギーを使うというだけでなく、その構造が複雑なために大量の物質の移動を必要とするのです。この細胞内の輸送が一ヶ所でも滞ると神経細胞としての機能を失います。脳はネットワークとして動くので、一ヶ所でも損傷を受けると症状がでてしまいます。このような臓器を直列臓器といいます。一カ所でも損傷をうけると症状がでる臓器には、他に腸管、脊髄などがあります、これに対して一部が損傷を受けても大丈夫な臓器としては肝臓、腎臓などがあります。このような臓器を並列臓器といいます。


さらに脳のネットワークを構成する個々の神経細胞自体が線状、放射状の構造をしているので、細胞の一ヶ所が不調になると信号が伝わらなくなるのです。脳はエネルギー不足の際に症状を出しやすく、かつ蛋白、鉄、ビタミン・ミネラルなどの細胞の材料不足に極めて弱い臓器だといえます。加えて人間の脳は体に比し極めて大きいので、他の動物より脳の症状がでやすいのです。
ミトコンドリアでエネルギーが作れないと脳の作業ができなくなります。前頭葉がうまく働かないと、長文が読めなくなったり短期記憶の障害がでます。体からの信号をうまく処理できないと、正常な部位に痛みや異常な感覚を感じます。辺縁系のコントロールができず感情が暴走すると、怒ったり、泣いたり、不安になったり、緊張しやすくなります。内分泌のコントロールがうまくいかなくなると月経不順、副腎疲労などが起こります。自律神経のコントロールがうまくいかなくなると下痢や便秘、起立性調節障害などの症状がでます。
鉄蛋白不足の症状は、漢方的にはほぼ気血両虚(気虚+血虚)の症状です。かつて、人間の最大の脅威はウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫などの感染症でした。これらは通常は存在しない病邪が存在するために起こる病態です。漢方的には実証(実は過剰の意味)の病気となります。これに対し、本来あるはずの鉄蛋白などの栄養が足りないために起こる病態は、漢方的には虚症(虚は不足の意味)の病気となります。虚証の病気のほとんどは鉄蛋白不足によるものです。
鉄、蛋白を失う原因は、月経、分娩、外傷、飢餓などです。月経、分娩をくりかえしているうちに、女性は鉄蛋白不足になっていき不調を訴えます。感染や中毒ではないのに元気がない人をみたとき、古代中国人は何かが足りない虚の状態と捉えました。まず月経や分娩が原因なのだから、血が足りなくなったのだろうと考えました。さらに体外に出た血液は、体内の血液と異なり熱や動きを失っています。二元論の好きな古代中国人は、このとき血液から失われたものを、気と名付けたのです。すなわち鉄蛋白不足で足りなくなったものの陽的(機能的)側面が気であり、陰的(物質的)側面が血なのです。鉄蛋白不足は気も血も両方足りない状態、すなわち気血両虚です。図示すると以下のようになります。

鉄蛋白と気血

鉄蛋白不足以外の栄養不足はどうだったのでしょう。ビタミンではB1不足の脚気、ナイアシン不足のペラグラ、C不足の壊血病、D不足のくる病、A不足の夜盲症が有名ですが、名前がついているくらいなので、比較的希な病態だったと思われます。現代社会で問題になるマグネシウム、亜鉛不足などは今より地味が肥えていたのと自然塩を使っていたのであまりなかったようです。したがって古代より最も頻度の高い栄養不足は鉄蛋白不足≒気血両虚だったと考えます。


糖質過剰
糖質摂取過剰により起こる疾患として、糖尿病、高脂血症、認知症、非アルコール性脂肪肝、種々の婦人科疾患、変形性関節症などの運動器の異常、緑内障、真菌感染、歯周病、難聴などがあがります。また、エネルギー源が糖質だけだと血糖の乱高下が起こります。昼食後の眠気、夕方の低血糖、朝方の悪夢などが起こります。
食後血糖140mg/dL以上、またはHgA1c6.0%以上が糖尿の基準ですが、これ以下でも糖質過剰の症状はでます。 1.5AGが18mcg/ml以下であれば要注意です。このような場合には糖質制限がいいとされますが、鉄蛋白不足のひとが糖質制限をすると体調を崩します。脂肪からエネルギーを得るための酵素がつくれないためエネルギー不足になってしまうのです。規定量の蛋白を摂取できるようになることが最優先となります。


マグネシウム不足
マグネシウムが足りないとこむら返り、痙攣、興奮、不安、過緊張、高血圧、不整脈、便秘、頭痛などを来します。カルシウムと逆の働きをし、細胞の興奮を抑えます。天然のカルシウム拮抗薬です。マグネシウム摂取だけで血圧が正常化し不整脈が消失することはしばしば経験します。精製塩を使用するようになって、マグネシウム不足の人がふえてしまいました。サプリ、薬剤等によるカルシウム摂取のため、相対的マグネシウム不足になっている場合があります。こむら返りや痙攣は重度のマグネシウム不足によるものです。常に積極的に摂りたいミネラルです。ALPの補因子で、足りないとALP低値となります。


亜鉛不足
ほとんどの方が亜鉛不足です。亜鉛は300以上の酵素の活性中心に必要で2000もの酵素の補因子です。細胞分裂に必要です。足りないと味覚・嗅覚低下、爪の白斑・凹凸、脱毛、趾のひび割れ、肌荒れ、皮膚炎、皮膚粘膜移行部(目、鼻、口、肛門)のトラブル、性欲減退、月経不順などの様々な症状を来します。 体内では銅とペアになっていて亜鉛が少ないと銅過剰になります。また亜鉛過剰だと銅不足になるのですが頻度は希です。


ナイアシン不足
ナイアシンが欠乏するとペラグラ(皮膚炎、下痢、認知症になり死亡)、精神疾患、関節炎、高脂血症になります。必要量は個人差が大きいとされます。LD低値だとナイアシン不足とされます。LD150U/L以下で精神症状のある方は、十分量を摂取することが必要です。ナイアシンはアルコール代謝においても重要で、摂取するとアルコールに強くなります。二日酔いにも有効です。血流を改善します。


ビタミンB群不足
ビタミンB群はエネルギー産生、神経伝達物質産生に欠かせません。足りないと脚気、口内炎・口角炎、舌の溝、悪夢、聴覚過敏、易疲労、集中力欠如、読書ができない、物忘れなどの症状を呈します。アルコール多飲、糖質過剰摂取の場合は発症しやすくなります。
AST-ALT>3でB6不足疑いとされます。通常B群は腸内細菌から相当量が供給されるのでB6不足を見たら他のB群も同様に不足していると考えます。


ビタミンC不足
ビタミンCが足りないとコラーゲンが作れずに壊血病になります。コラーゲンが作れないと体が脆くなります。またビタミンCはからだを活性酸素からまもる抗酸化物質です。また抗ウイルス作用、抗菌作用があり、風邪の予防、治療に使えます。抗ヒスタミン作用を有し、アレルギー、炎症に広く使えます。また抗癌作用も有します。安価であり、日頃から十分摂っておきたいビタミンです。


ビタミンE不足
ビタミンEは、脂溶性の抗酸化物質で体を酸化から守っています。足りないと男女ともに不妊になります。アンチエイジングに重要です。血流を改善します。しもやけ、レイノー症状、狭心症や動脈硬化による動脈狭窄に有効です。


ビタミンD不足
ビタミンDは粘膜や皮膚細胞の密着結合(タイトジャンクション)、免疫の調整、蛋白産生に欠かせません。足りないと花粉症、リーキーガット、感染症、くる病、冬期うつ、ガン、骨粗鬆症になります。日光で作られるはずなのですが、ほとんどの人がビタミンD不足です。


ビタミンA不足
ビタミンAはDNAから遺伝情報を読み出すときに必須です。網膜での光の検出、皮膚・粘膜の維持に必要です。発癌を抑制します。足りないと夜盲症(とり目)、鳥肌、乾燥肌、あせも、アレルギーになります。摂取量がすくないと発癌します。必要量の個人差が大きいとされます。

漢方の適応疾患

内科領域

感冒、その他の急性感染症
漢方の独壇場です。寒熱、虚実、表裏の判定が重要です。現代医学には、この概念がないので風邪の治療ができません。体温に関係なく寒がっているのが寒証、暑がっているのが熱証です。体力がなく汗がでているのが虚証で、逆が実証です。脈が浮いているのが表証で沈んでいるのが裏証です。寒がっていて汗なく脈が浮いていれば、表寒実証のたとえば麻黄湯などを使います。汗があれば表寒虚証の桂枝湯となります。脈が沈んでいれば、裏証であり裏寒虚証の麻黄附子細辛湯、真武湯などとなります。暑がっている熱証の風邪であれば、銀翹散などの冷やす薬を使用します。
感染症は低栄養で起こります。風邪引きやすい人と引きにくいひとの差は栄養状態の差です。


喘息
消炎、精神安定作用の柴朴湯で発作を予防し、発作時に麻杏甘石湯で消炎、気管支拡張をはかるとされますが、根本的原因は気道粘膜の脆弱性です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化し抗原が侵入しやすくなっています。栄養療法と補剤で気管支粘膜を立て直します。


喘息気管支拡張症、副鼻腔気管支症候群、非定型抗酸菌症
痰が出にくい体質が原因です。気管支の炎症を繰り返すうちに、気管支が拡張してしまい、さらに痰がだせなくなります。出ていかない痰は気管支内に貯留し乾燥して固まります。気管支の炎症も治りません。漢方的には燥熱です。気管支を潤して冷やして痰を出す薬を用います。


間質性肺炎
肺の劣化した蛋白に反応している自己免疫疾患と考えます。蛋白不足が主因です。随証的漢方治療に水素、栄養療法を併用します。


過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎
低栄養による脳の機能低下により、消化管のコントロールがうまくいっていない状態です。通常、消化管自体の劣化もともなっています。随証的漢方治療に栄養両方を併用します。慢性上咽頭炎が原因のことがありますので注意が必要です。


潰瘍性大腸炎、クローン病
腸の劣化した蛋白に反応している自己免疫疾患と考えます。蛋白不足が主因です。炎症をとめる漢方を使います。随証的漢方治療に水素、栄養療法を併用します。


しもやけ、冷え症、レイノー病
ミトコンドリア機能低下による熱産生不足に血流コントロールの異常が伴った状態と考えます。熱産生を増やし、血流を調節します。蛋白、鉄、ビタミンB群などでミトコンドリア機能を改善し、手足の血流を増やす漢方を用います。ビタミンE、ナイアシンなどの血流を増やすサプリも有効です。


高血圧
動脈壁の蛋白の劣化により動脈壁の弾性がなくなると血圧を上げないと臓器の血流量が保てなくなります。薬で血圧を下げると臓器の血流が少なくなり臓器の血流低下になります。流れが悪いので梗塞も起こしやすくなります。
降圧薬で血圧をさげると脳の血流は低下します。結果として朦朧としたり倒れたりする危険があります。高齢者の交通事故の原因は降圧薬だともいわれています。同じように肝臓や腎臓の機能も低下します。
大切なことは血圧を下げることではなく、血管壁の弾力を取り戻して、血圧が低くても十分な血流が流れるようにすることです。十分な栄養摂取で劣化した血管壁の蛋白を正常なものに置き換えます。またマグネシウムで血管の緊張をとり血圧を下げ不整脈を防ぎます。マグネシウムはカルシウムの逆の働きをします。天然のカルシウム拮抗薬といえます。現代人はマグネシウム不足、カルシウム過剰の状態にあります。不用意なカルシウム摂取は高血圧、不整脈、動脈石灰化の原因となります。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。


不整脈
心筋細胞内のマグネシウム不足によりおこります。マグネシウムは細胞を興奮しにくくし、不整脈をおさえます。カルシウムはマグネシウムの逆の働きをします。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。随証的に漢方を併用します。


高脂血症
一番大切なことは、副作用の多いスタチン製剤を使わないことです。スタチンなどのHMG-CoA還元酵素阻害剤はからだを活性酸素から守っているCoQ10を低下させます。そのため放射線や抗癌剤の障害が強く出ます。また発癌しやすくなります。一番多い副作用は筋肉痛やしびれです。通常、副作用は飲んですぐにはおきません。数ヶ月から数年後に発症しますので、しばしば見落とされます。
動脈硬化の最大の原因は動脈壁の材料不足による劣化であり、通常は蛋白、鉄、ビタミンC不足でおきます。動脈壁にコレステロールが沈着しているからといって、栄養状態を改善せずにコレステロールをさげるのは本末転倒です。コレステロールは細胞の維持に必要なものであり、肝臓で合成されLDLコレステロールにより末梢組織に送られます。加齢によりコレステロールが上がるのは、全身の細胞のコレステロールが劣化して、その補充のためにコレステロールが必要だからです。これを下げると体調不良となります。脳はコレステロールの需要が特に大きい臓器であり、コレステロールを下げると様々な精神症状がでます。スタチン服用者に列車飛び込み自殺が多いと言われますが当然のことと考えます。コレステロールを下げたければコレステロールが劣化しないようにすればいいわけです。栄養療法で抗酸化酵素の活性を正常化し、必要な抗酸化物質をとることで低下します。ちなみに蛋白不足だとコレステロールを運ぶリポタンパクが作れないのでコレステロールは低くなります。こういうひとはコレステロールが低くても体調は悪いはずです。またHDLコレステロールの上昇は肝臓で処理しなくてはならない劣化した脂質が多いことを意味します。


膠原病、関節リウマチ、SLE
変性した体蛋白を免疫系が攻撃している状態です。蛋白不足が原因です。女性に多いのはこのためです。体蛋白の更新のために十分な栄養が必要です。症状緩和のために用いられる現代薬では、副作用が問題となります。漢方や水素で炎症をおさえて、栄養療法で体蛋白の更新を図ります。


アレルギー疾患、花粉症
根本的原因は皮膚・粘膜のバリア機能の低下です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化し抗原が侵入しやすくなっています。栄養療法と補剤で皮膚・粘膜を立てなおします。随証的に漢方を併用します。


橋本病、バセドー病
変性した甲状腺を免疫系が攻撃している状態です。蛋白不足が原因です。女性に多いのはこのためです。甲状腺蛋白の更新のために十分な栄養が必要です。現代薬で副作用が出る場合は、漢方で対応します。


糖尿病
高血糖は血管を障害しますが、実はインシュリンも血管毒性があります。糖質制限で高血糖を避けつつ、インシュリンやインシュリンを分泌させる薬剤を避けることが望まれます。高血糖による障害を回復させるために栄養療法、漢方が有効です。


腎機能低下
腎機能を下げないためには糖質制限、低インシュリン状態が必要です。痛み止めの使用や慢性上咽頭炎も腎機能をさげるので注意が必要です。腎機能がさがったときに蛋白制限は逆効果です。腎の再生のためには材料すなわち十分な蛋白摂取が必要です。漢方では養腎降濁湯、オウギ末などが有効とされます。


片頭痛
漢方的に一番多いのは水滞の頭痛で、気圧変化で起こります。通常、雨の前後に起こります。水チャンネル(アクアポリン)の劣化により、体内の水の流れが制限され、気圧の変化に対応できないことが原因です。五苓散などの利水剤を用います。次に多いのが肝気鬱結、気逆の頭痛です。通常は朝の頭痛となります。局所的な血圧の異常のようです。釣藤散その他の解鬱薬を用います。お腹の冷えと同時に出る頭痛があります。呉茱萸湯などお腹を温める薬を使います。肩こり、首こり、頚椎の異常から来る頭痛もあります。葛根加朮附湯などを使用します。他にも瘀血(血流障害)、血虚(低栄養)でも頭痛がおこります。いずれも栄養不良が背景にあります。また原因も通常ひとつではなく、複数の原因で起こっていることがほとんどです。漢方と栄養療法の併用で治癒します。しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。


化学物質過敏症
低栄養で解毒酵素の活性がさがると、抗生剤や抗癌剤などの薬物の副作用がでやすくなります。栄養療法で解毒機能があがると改善します。これとは異なり通常は不快に感じない臭いや音、電磁波が不快でたまらないことがあります。これは解毒能の低下ではなく脳の情報処理の異常です。通常は低栄養によります。女性に多く見られます。栄養療法と随証的漢方治療を行います。


不定愁訴
現代医学で不定愁訴とされる症状は一定の類型を持ち、大昔から存在していました。現代医学的には説明できないというだけで伝統医学的には解釈可能で、症状別に対応する方剤が存在します。検査をすると鉄蛋白不足が高頻度に見られます。原因は脳のエネルギー(ATP)不足と考えています。栄養療法、随証的漢方治療で改善します。しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。


小児科領域

小児疾患のかなりの部分は、胎児期、小児期の低栄養が原因です。小児は成長するために常に大量の栄養を必要としています。十分量の栄養を与えても成長に使われてしまい、さらに栄養が必要になります。小児は大人に比し常に低栄養状態にあります。この状態は成人になるまで続きます。このため大人より低栄養の症状が出やすくなります。また消化器の弱い子は、必要量が摂取ができないことがあります。一般に出生体重が3000g以下の小児は消化器が弱いとされます。十分な観察と栄養投与が必要です。
採血すると子供と母親のデータがそっくりなことがほとんどです。一部には遺伝的背景もあるのでしょうが、低栄養の母親から低栄養の子が生まれ似たような病気になるという、一見遺伝性に見える負の連鎖が見られます。栄養療法で母子ともに治療することが望まれます。


起床困難、起立性調節障害、不登校、うつ、イライラ、チック
小児は常に相対的低栄養状態であり、大人より鉄蛋白不足の症状が出やすくなります。身長が伸びたときに悪化するのが特徴です。2-3cmの伸びでも症状は悪化します。常に身長体重をモニターすることが望まれます。鉄蛋白不足の症状が主体です。まずエネルギー不足で頭と体が働きません。その結果、イライラして反抗的になります。反抗期のイライラ、気分変調の主な原因は相対的栄養不足です。視床下部下垂体副腎軸もやられますので副腎疲労で朝起きられません。また消化管も弱いことが多く、しばしばリーキーガットのために食物アレルギーになっています。皮膚粘膜も弱く、アトピー、花粉症などのアレルギー性疾患を併発します。しばしば青色強膜(白目が青味がかっている)を認めます。

青色強膜(白目が青みがかっている)

まずは鉄蛋白を補充することが必要ですが、すでに胃腸が弱っている場合にはうまく吸収できません。食事だけでは対応できないことが多く、プロテイン、アミノ酸、消化剤、サプリメント、漢方の併用を考慮します。また慢性上咽頭炎を起こしていることもあります。後鼻漏、のどに張り付いている感じがあれば精査が必要です。上咽頭炎を放置した状態では、どのような治療も無効です。つらい症状があれば随証的に漢方を使用します。


発達障害、学習障害
遺伝的背景、環境汚染などの影響はあると思いますが、受診される方はほぼ全員重度の鉄蛋白不足です。身長の伸びとともに出現した症状は、ほぼ全例鉄蛋白不足が原因です。栄養療法、漢方が有効です。


虚弱体質
消化管は胎生期の最後に完成する臓器です。このため低体重児は消化機能が弱くなりがちです。ひよわ=脾(消化器)弱であり、虚弱体質になりやすい傾向があります。腸管粘膜のバリアも弱く食物アレルギーが出やすくなります。成人でも出生体重3000g以下だったひとは消化機能が弱い傾向にあります。虚弱児は体幹の筋の緊張が低いため、体幹が不安定ですぐに診察台に横になろうとします。精神的には過緊張状態で、腹直筋だけがピンとはっていたり、異常にくすぐったがりです。漢方的には小建中湯を用いる症状とされます。原因は鉄蛋白不足です。胃腸を丈夫にする漢方を使用し、栄養を吸収しやすい形で与える必要があります。


夜驚、夜なき
できるだけ現代薬を避けることが望まれます。通常、甘麦大棗湯、抑肝散を用います。母親も同じ薬を飲むと効果が上がります。これを母子同服といいます。


精神科領域

うつ、気分障害、神経症性障害、発達障害、人格障害
遺伝的要因、社会的要因は当然ありますが、栄養異常によるものが注目されています。特に蛋白不足、鉄不足、亜鉛不足、ビタミンB群不足、ビタミンD不足が多いとされます。経験的には鉄蛋白不足が大部分を占めます。血液検査を行い栄養療法行います。つらい症状があれば漢方で対処します。現代薬の併用は問題ないと考えます。


身体表現性障害、疼痛性障害、線維筋痛症
明らかな病変がないのに痛みやしびれなどを感じる場合、脊髄以下の神経が障害されているか感覚情報の処理をする脳の異常のどちらかです。神経が障害されている場合、そのほとんどは薬害です。原因となる薬物を同定する必要があります。感覚情報処理の異常は、痛覚変調性疼痛を含みます。ほとんどが栄養障害です。栄養療法と随証的漢方で改善します。


不眠症
不眠は漢方的にみると複数の症状のひとつに過ぎないことがほとんどです。随証的漢方で改善します。


産婦人科領域

血の道症、更年期障害、PMS、月経困難症、月経不順、過多月経、過小月経、産後の不調
血の道症という病名があります。漢方からきた病名です。「月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性のホルモンの変動による不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のこと」とされています。血の道症に対する漢方方剤は多数存在し、それなりに有効です。栄養療法的には血の道症の原因はホルモンの変動とは関係なく、鉄蛋白不足だといわれています。月経、出産をくりかえしているうちに鉄蛋白不足になり体調を崩す。これがすなわち血の道症です。漢方で症状はある程度とれますが、鉄蛋白を補充しないと本質的解決にはなりません。栄養療法と随証的漢方で改善します。毎月排卵するということは体にとっては大きな負担です。出産を望まないのであれば、婦人科で月経を止めると改善します。ただし蛋白不足の方は薬害がでやすいので注意が必要です。


不妊症
鉄蛋白不足、糖質過剰のかたがほとんどです。治療は血の道症に準じます。


外科領域

ケロイド、不良肉芽
皮膚が傷ついて切り離されると、切断部分に肉芽をつくり皮膚を接着させます。この肉芽を構成するのは主にはコラーゲンです。コラーゲンをつくるのには蛋白、鉄、ビタミンCその他が必要で、足りないと傷のつきが悪くなり、傷が盛り上がってケロイドになります。古い傷もつねに古くなったコラーゲンを新しいものに更新しています。蛋白不足で新しいコラーゲンが作れないと古い傷が開いてしまいます。術創をきれいに付けるには蛋白が必要です。


動脈瘤、静脈瘤
低栄養だと血管壁のコラーゲン等の更新がおくれ、血管壁が劣化します。血管が脆くなり出血しやすくなり、青あざができます。また血管の内圧に負けて血管壁が膨らんでしまうと、動脈瘤、静脈瘤になります。栄養療法に漢方を併用します。


四肢循環障害
動脈硬化などで動脈側の流れが悪くなるのは血虚で四物湯の適応、静脈側の流れが悪いのが瘀血で駆瘀血剤の適応とされます。糖尿などの基礎疾患による動脈の血流低下には疎経活血湯が有効とされます。


整形外科領域

加齢による変化、変形性関節症、骨関節症、骨粗鬆症、五十肩、ヘバーデン結節、ばね指
加齢により起こってくる疾患は栄養障害です。骨、関節、軟部組織を構成する蛋白は徐々に劣化していいきます。劣化した蛋白は新しくする必要があるのですが、栄養不足ではそれができません。結果、徐々に骨・関節の破壊が進みます。これが骨関節症です。骨が劣化したとき、必要なのはカルシウム以前に蛋白、鉄、ビタミンCです。薬剤で骨にカルシウムを沈着させても骨の強化にはなりません。十分な栄養で引っ張り強度のある骨・靱帯を再建することが必要です。症状をとる漢方を用いながら栄養療法を行います。
現代薬の鎮痛薬は急性期の熱を持った状態には効くのですが、慢性期の血流がさがった状態には効きません。また鎮痛薬は治癒を遅らせ、長期連用で腎機能が低下します。附子剤などの血流をおとさない痛み止めを使用すべきです。


足底筋膜炎、デュプイトラン拘縮などの線維症、歯突起後方偽腫瘍
体内にできる繊維組織は、すべてケロイドと考えるとわかりやすいと思います。すなわち低栄養による組織の修復障害です。補血剤と栄養療法で対応します。


神経痛、手根管症候群、足根管症候群、肘部管症候群
神経がむくんだために周囲から押されて、しびれ、痛みが起こっている状態です。神経の浮腫と炎症です。柴苓湯を中心に用います。背景には血虚すなわち栄養障害があります。


痛風、偽痛風、石灰化腱炎
急性期の痛みは湿熱、すなわち炎症と浮腫が強い状態です。越婢加朮湯、茵蔯五苓散などの清熱利水剤で対応します。痛風の原因となる尿酸は、本来は体を守る抗酸化物質です。尿酸が高いときは体のどこかに炎症があるときです。慢性上咽頭炎、歯周病、脂肪肝など有無を確認して治療する必要があります。


筋痙攣、こむら返り
血管壁や筋肉細胞内のマグネシウム不足で起こります。筋肉細胞が興奮すると痙攣がおこります。筋肉に行く血管壁の細胞が興奮すると血管が攣縮し血が流れなくなり筋肉が痙攣します。マグネシウム投与で改善します。マグネシウムは細胞を興奮しにくくします。カルシウムはマグネシウムの逆の働きをします。骨粗鬆症などでカルシウムや活性型ビタミンDをとっている場合はやめてもらいます。随証的に漢方を併用します。


成長期に起こる異常、側弯症、成長痛、骨端症、スポーツ障害、大腿骨頭すべり症、先天性股関節脱臼
こどもの運動器疾患は栄養障害が背景にあります。成長の過程では、どんなに栄養を摂取していても常に相対的低栄養状態になっています。蛋白の必要量は成人の倍とされます。漢方その他で除痛しつつ、十分な蛋白、鉄、ビタミンCを与えます。


むちうち後遺症
治打撲一方合葛根加朮附湯が標準治療とされています。閉経前女性に多く、鉄蛋白不足を伴っています。外傷により損傷した組織が修復されない状態です。コラーゲンの劣化と更新不足が背景にあります。適切な栄養療法の併用が必要です。


外傷
外傷の急性期は瘀血です。駆於血剤が有効です。骨・関節には桂枝茯苓丸、治打撲一方の組み合わせが有効です。靱帯、腱、筋肉の障害には桂枝茯苓丸、麻杏薏甘湯、皮下組織の障害に対しては通導散が有効とされます。


耳鼻科領域

慢性上咽頭炎
インフルエンザの検査では鼻から棒をいれて喉の奥を調べます。その際、棒の先が当たる部分が上咽頭の咽頭扁桃というところです。風邪のウイルスが最初に付着する部位です。この部分が慢性炎症を起こすことがあります。咽頭違和感、後鼻漏、肩こり、頭痛、顎関節痛などの局所の症状を起こします。また上咽頭は頭蓋の底にあたり、脳神経、内頚動脈、内頚静脈の通り道になっているため、全身倦怠感、めまい、睡眠障害、起立性調節障害、過敏性腸症候群、機能性胃腸症などの自律神経症状を起こします。また炎症が長引くとIgA腎症や掌蹠膿疱症になるとされます。

慢性上咽頭炎が関与しうる疾患と症状

上咽頭炎を疑う所見としては後鼻漏、咽頭違和感(何かが張り付いている感じ)以外に、耳下部の圧痛、歯ぎしり、かみしめ、歯牙損傷、骨性隆起、側頭筋肥厚などがあります。耳下部の圧痛は下図の部位にでます。


耳下部圧痛の部位


骨性隆起とは写真のように上顎や下顎の骨が突出することです。骨性隆起があるならまずは上咽頭炎の検査をするべきです。

骨性隆起


下の写真は慢性上咽頭炎の内視鏡写真です。上咽頭に発赤はなく、むしろ白くむくんで見えます。表面には粘液がはりついて糸を引いています。(写真、上段)この粘液が下に落ちると後鼻漏となります。薬液をつけた綿棒でこすると容易に出血し(写真、下段)、血液、粘液、膿が綿棒に付着します。

慢性上咽頭炎の内視鏡所見

慢性上咽頭炎は漢方治療を希望される方に結構な率で存在します。耳鼻科で上咽頭擦過療法(EAT)をすると治ります。薬剤による鼻うがい、漢方も有効です。検査をすると、ほぼ全員蛋白不足です。治ってもしばしば再発します。詳細は下記のサイトを参照ください。

日本病巣疾患研究会HP 慢性上咽頭炎
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/

漢方.jp特別講演会「所見の無い咽頭痛・後鼻漏は上咽頭炎を疑う!」竹越哲男先生
https://www.youtube.com/watch?v=hXCQzvY0We4&list=PLtTk6jwp4X9AyBPKFY-9IGlfbRaaI60Xk&index=2&t=1754s

コロナ後遺症、コロナワクチン副作用で慢性上咽頭炎になるケースが増えています。通常の慢性上咽頭炎より治りにくい傾向にあり、しばしば治療に難渋します。


花粉症、アレルギー性鼻炎
漢方的に寒熱、燥湿をみて方剤を決めます。冷えてむくんでいる寒湿であれば小青竜湯でいいのですが、現代薬の使用により、寒熱錯雑、湿熱、燥熱の状態になっていることもあるので注意が必要です。熱を持っていれば越婢加朮湯などの冷やす方剤が必要ですし、熱をもっていて乾いていれば白虎加人参湯などで清熱滋潤しないといけません。
根本的原因は粘膜・皮膚の脆弱性です。低栄養のため粘膜細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化して抗原が侵入することが原因です。ビタミンDが有効とされます。栄養療法の併用が望まれます。


めまい、耳鳴
漢方的に一番多いのは水滞で、水チャンネル(アクアポリン)の劣化が原因です。利水剤を用います。次に多いのが局所的な血圧の異常です。釣藤散その他を用います。他に冷え、瘀血(血流障害)、血虚(低栄養)、気滞(肩こりなど)、頚椎の異常でもおこります。随証的漢方治療と栄養療法で治療します。


皮膚科領域

ヘルペス、イボなどの慢性ウイルス感染
低栄養による免疫力低下のある方がほとんどです。適切な栄養療法が必要です。病変自体は湿熱が多く清熱利湿剤を主に使用します。ウイルスを押さえるためにビタミンC、ヨクイニンを用います。


アレルギー性皮膚炎、アトピー、手湿疹、慢性じんま疹、汗疱、酒さ
皮膚の炎症そのものを押さえるのは、漢方でも現代薬でも水素でも構いません。問題はそのあとで、直ちに皮膚の再生を促す必要があります。すなわち補気補血です。補剤を使うのですが、それだけでは不十分で材料となる栄養を補充することが必要です。そもそも様々な抗原に皮膚が反応するのは、低栄養のため皮膚の細胞の密着結合(タイトジャンクション)が劣化して容易に抗原が侵入するためです。栄養療法の併用が望まれます。


帯状疱疹後神経痛
桂姜棗草黄辛附湯(桂枝湯+麻黄附子細辛湯)が有効とされますが、長期に続き難治化した例では附子の増量、他の方剤への変更が必要です。ちなみに帯状疱疹の急性期は漢方的には湿熱です。抗ウイルス薬に清熱利水剤、栄養療法を併用することで神経障害を防げます。そもそも帯状疱疹の発症自体が体力低下、気血両虚を意味します。適切な栄養摂取と気血双補剤の使用が望まれます。


眼科領域

結膜炎
原因の如何によらず、漢方的には湿熱です。越婢加朮湯などの清熱利水剤が有効です。


翼状片
ケロイド治療に準じます。


泌尿器科領域

夜間頻尿
いわゆる腎虚の症状です。八味丸などの補腎剤が有効ですが、同時に様々な漢方的異常が存在することが多く、それらを治療すると頻尿も同時に改善します。


慢性膀胱炎、間質性膀胱炎
漢方的には下焦(下半身)の湿熱として治療されることが多いのですが、必ずしもうまくいきません。慢性炎症の原因は低栄養です。間質性膀胱炎は、血管もふくめて膀胱が脆くなってしまった状態です。低栄養のなれの果てです。随証的漢方治療に栄養療法、水素の併用が有効です。


慢性前立腺炎
漢方的には瘀血とされます。鬱血をとる漢方が有効です。慢性炎症は低栄養ですので栄養療法、水素の併用が有効です。


歯科口腔外科領域

歯ぎしり、かみしめ、顎関節症
なにかの弾みで歯ぎしり、かみしめが始まると、その結果、頭部が鬱血して頭痛、肩こり、めまいなどが起こります。それらがつらいので、また歯ぎしり、かみしめが起こります。あとは悪循環です。かみしめる力で顎関節、歯が破壊されます。硬口蓋、口腔底に骨性隆起が発生します。(骨性隆起)抑肝散などで緊張を緩和することが必要です。しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。背景には低栄養があり、栄養療法が必要です。


舌痛症
低栄養のため中枢神経の働きに異常がおき、痛みを感じやすくなった状態です。やはり、しばしば慢性上咽頭炎を併発しています。この場合は上咽頭炎治療も同時に行います。背景には低栄養があり、栄養療法が必要です。


薬剤副作用の治療

薬剤による痛み、しびれなど
生活習慣病などで長期に薬剤を飲んでいる方に見られます。薬剤性の横紋筋融解症や末梢神経障害です。漢方はほぼ無効です。高脂血症に使われるスタチンによるものが目立ちます。薬害が出やすい方には、蛋白不足による解毒酵素の活性低下が存在します。適切な栄養摂取が望まれます。また胃酸抑制剤を長期に使用すると鉄不足になり、医学的異常がない部位に痛みを訴えることがあります。痛覚変調性疼痛です。脳のミトコンドリア機能低下による感覚情報処理の異常です。血液検査をしないと分からないので要注意です。


抗癌剤の副作用対策
下痢、口内炎、手足症候群のような皮膚粘膜の障害が主に問題になります。漢方的には湿熱です。清熱利水剤を用います。気血両虚≒鉄蛋白不足の患者で起こりやすくなります。適切な栄養補給、気血双補剤、水素などを考慮します。


コロナワクチン副作用
心臓、血管に対して毒性があり、心筋炎、脳梗塞、心筋梗塞、脳出血、血管炎、血栓症がおこります。免疫抑制により帯状疱疹がでたり発癌したり、癌が急に進行したります。また様々な部位に炎症が起こります。多いのは慢性上咽頭炎です。通常の慢性上咽頭炎より治りにくいと考えています。S蛋白は脳にも入るので脳の炎症も起こします。自己免疫疾患が悪化します。S蛋白の解毒にファスティング、ナットウキナーゼが有効とされます。背景に栄養障害があります。栄養療法、漢方、水素などを適宜使用します。詳細は、下記サイトを参照ください。

新型コロナワクチン副反応・後遺症の実態 ①臨床症状について
https://www.isom-japan.org/article/article_page?uid=C22Sq1652348266

新型コロナワクチン副反応・後遺症の実態 ②今後の課題とは
https://www.isom-japan.org/article/article_page?uid=DdY861660887089

ワクチン副反応・後遺症治療ー『後遺症治療研究会』『コロワク治療ナビ』のご紹介
https://isom-japan.org/article/article_page?uid=dhO5d1682651508

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