診療科・各部門について

スタッフと専門領域

歯科医師名 出身大学 医師免許取得年 専門領域・資格等

科長
池内 忍
東京歯科大学 昭和52年 ー口腔外科全般ー

・日本口腔外科学会 専門医
・日本小児口腔外科学会専門医・指導医
・博士(医学)
・慶應義塾大学医学部非常勤講師


科長
髙森康次
東京歯科大学 昭和62年 ー口腔癌・口腔粘膜疾患ー

・日本口腔外科学会専門医・指導医
・インフェクション・ コントロールドクター
・日本がん治療認定医機構暫定教育医
・日本歯科薬物療法学会認定歯科医師
・日本口腔ケア学会認定医
・日本口腔感染症学会院内感染予防対策認定医
・慶應義塾大学医学部客員講師


科長
道端 彩
神奈川歯科大学 平成10年 ー口腔インプラントー

・日本口腔外科学会 認定医
・日本顎顔面インプラント学会認定専門医

歯科医師
臼田 聡
東京歯科大学 平成23年  ー口腔外科全般ー

 

非常勤歯科医師
和嶋浩一
神奈川歯科大学 昭和53年 ・慶應義塾大学医学部 非常勤講師
・昭和大学歯学部兼担講師
・日本顎関節学会理事・専門医、指導医
・日本頭痛学会 理事・専門医、指導医
・日本口腔顔面痛学会 専門医、指導医
・Diplomate American Board of Orofacial pain(米国口腔顎顔面痛学会認定医)
・Asian Academy of Craniomandibular Disorders(2015-2017理事長)
・International Association For the study of pain
非常勤歯科医師
井川雅子
東京歯科大学 昭和59年 ・日本口腔顔面痛学会 専門医・指導医
・日本顎関節症学会 専門医
・日本頭痛学会 専門医
・Diplomate American Board of Orofacial pain(米国口腔顎顔面痛学会認定医)
非常勤歯科医師
池田浩子
東京歯科大学 平成10年 ・日本補綴歯科学会 専門医
・日本老年歯科医学会 認定医
歯科衛生士 ・病棟専属歯科衛生士 1名
・外来・病棟兼務歯科衛生士 4名
うち 口腔ケア学会認定歯科衛生士 3名

学会施設認定

日本口腔外科学会 認定研修施設(2009年 10月1日、認定番号 3070)
日本小児口腔外科学会 認定研修施設(2012年1月1日、登録番号0015号)
日本顎顔面インプラント学会 認定関連研修施設(2015年4月1日、認定番号AF005号)

はじめに

口腔外科ではう蝕歯の治療や歯周病の管理、義歯の作製などのいわゆる歯科治療は原則的に行っておりませんのでご了解のうえ受診をお願いいたします。

それでは口腔外科って何をする科?

口腔外科は歯科の一分野ですが、欧米では口腔顎顔面外科とよばれているように、口の中だけでなく、顎(あご)の骨や顔の一部を担当します。具体的には口腔腫瘍(口の中や舌になにかできた)、顎顔面外傷(顎や顔の骨を骨折した)、顎口腔の炎症(顔がはれた)、顎変形症(受け口など)、口腔粘膜疾患(口内炎、ヘルペス、口腔乾燥)、口腔顔面痛(三叉神経痛など)、インプラント、顎関節症(口をあけるとあごが痛い)などを主な対象疾患とします。それぞれの疾患に対し当科で行っている治療の特徴は以下のとおりです。

治療について

親知らずの抜歯

抜歯は口腔外科の重要な分野です。特に骨に埋まった親知らず(智歯といいます)はできるだけ無痛的な処置をこころがけています。具体的には、愛護的 な抜歯操作が要求されることは当然ですが、笑気吸入鎮静や静脈鎮静といった安全な鎮静法を併用すると有効なことが多いようです。

ところで「親知らずはどうしても抜歯しなければいけないのでしょうか?」
という質問をよくいただきます。腫れの原因になったり、虫歯になった親知らずは抜歯が必要です。また、前の歯を押して歯並びが悪くなることもあり親知らず は基本的に必要のない歯ですので、今までは全く無症状でもできれば抜歯してすっきりしておいたほうがよいと思われます。

口腔癌

舌癌を代表とする口腔癌では治療は主として手術によりなされていますが、手術後の機能障害が問題となることが少なからずあります。それでは抗がん剤はどうでしょう。通常は薬は静脈から注入するため全身にまわりますが、この方法ではいまのところ残念ながら期待どおりの治療効果のでる薬はありません。そこで考えられたのが動脈から抗がん剤を注入する方法です。腫瘍に入ってゆく動脈に薬を流す方法を動注といいます。動脈から注入された抗がん剤は腫瘍に高濃度にはいるため効果が高く、全身の副作用は少なくてすむといわれています。抗がん剤を動注しながら放射線治療をする方法を動注化学併用放射線療法といいますが当科では放射線科と協同で全国に先駆け導入しています。すべての癌にたいして有効なわけではありませんが、大きさや場所によっては大変効果があります。当科の成績では手術とほぼ同程度の治癒率が期待できることがわかっています。

顎変形症

顎変形にはさまざまな種類がありますが日本人には下顎前突(いわゆる受け口)がおおく、十分に噛むことができないだけでなく顔貌にも不満がでるため、性格が内向的になったりもします。当科では歯科矯正医と緊密に連携し、手術前矯正から手術後にいたるまで確立された一連のシステムで治療にあたっています。また、吸収性のプレートを使うことにより、手術回数を減らし患者さんの負担を軽くしています。なお、顎変形症は手術の内容により保険診療が適応されないことがありますので、担当医とよくご相談ください。

顎関節症

顎関節症の原因
治療法
顎関節症の注意事項
セルフケア(SELF-CARE)症状の自己管理

口腔顔面痛

歯の痛みとして感じる頭痛、原因のない口腔や顔の痛み、治療をしても消えない歯のいたみなどを専門にする特殊外来です。全国にさきがけて設置され日本では数少ない米国口腔顔面痛学会認定医が診療にあたっており、全国のセンター的施設となっています。

口腔顔面痛外来

口腔粘膜疾患

いわゆる口内炎にも非常に難治性のものがありますが、従来は口内炎用の軟膏で対処するしかありませんでした。しかし近年、漢方薬の効果がわかってきました。漢方薬で体質を変えることにより口内炎ができにくくなる、できても早く治る、数がすくなくなる、といった効果が期待できます。
また、口内炎がいつまでもなおらないとおもっていたらヘルペスだった、あるいは癌だった、ということもよくあります。なおりにくい口内炎は放置せずに専門医を受診することをおすすめします。

口腔インプラント

歯を失った場所に新たに噛む機能をつくる治療、これが口腔インプラント治療です。

人は永久歯を失ってしまうと、二度と生え変わることはありません。歯を失うと今まで当たり前だった会話や食事などに不都合を覚えます。そのため今までは義歯(入れ歯)を作ったり、健康な歯を削ってブリッジを作成したりという治療が主流でした。しかし義歯がなかなか合わなかったり、健康な歯を削るのに抵抗を感じたりと色々な問題が出てきていた方も多いと思います。

このように歯を失ってお悩みの方には、天然の歯と変わらない感覚で食事や会話ができる口腔インプラント治療をお勧めいたします。

〈治療法は?〉

口腔インプラント治療は、歯を失ってしまった顎の骨の中へチタン製の金属ネジを埋め込み、安定した後にかぶせ物をして人工の歯を作成し噛み合わせを回復する治療法です。治療にあたっては、手術が必要となります。

〈期間は?〉

インプラントの金属が顎の骨と結合するまでに時間を要します。4ヶ月~8ヶ月ほどの期間が必要ですが、部位や個人差があります。

〈インプラントができない人は?〉

  • チタンアレルギーをお持ちの方
  • 毎日の歯磨きなどの口腔清掃が不十分な方
  • 定期的に歯科検診を受けられない方
  • 全身的な病気があり医師に手術不可と診断された方
  • 顎の成長が終了していない方

上記以外にも適応外の場合がありますので、歯科医師にお尋ね下さい。

〈手術時間は?〉

インプラントの埋入本数や、手術の内容により個人差はありますが1本30分~1時間程度です。

〈治療費は?〉

インプラント治療は保険治療適応外となります。
本数や顎の骨の状態により治療の内容が異なりますので、詳しくは歯科医師へご相談下さい。

当科では一般的な口腔インプラント手術のほかに、関連した手術も行っております

1. 骨移植術

骨の厚みや高さを改善させる手術。(ベニアグラフト、オンレーグラフト、サイナスリフト等)
インプラントの埋め込み前にあらかじめ骨の形態を整える手術です。場合によっては手術と同時に行うこともあります。局所麻酔で行うことがほとんどですが、交通事故などで骨の欠損した部位が大きい場合には全身麻酔下で行うこともあります。

2. 粘膜移植術

インプラント手術後に粘膜が不足している場合に行うことがあります。

3. 骨延長術

骨の高さや長さが不足している場合に、骨を徐々に延ばして骨を作る手術です。

※静脈鎮静下での局所麻酔手術もおこなっておりますので担当医へご相談下さい。


手術室での手術症例件数 (外来での手術は除く)

手 術 件 数 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
消炎手術 3 3 1 0 1
良性腫瘍切除・摘出手術 9 7 29 23 28
嚢胞摘出手術 24 19
唾液腺関連手術 2 3 6 4 11
上顎洞関連手術 2 0 1 2 3
顎関節手術 1 0 0 0 0
顎顔面外傷手術 6 4 1 3 6
顎矯正手術 10 13 9 10 9
前癌病変手術 5 2 2 2
悪性腫瘍切除手術 9 8 4 8 6
再建外科手術 2 1 1 2
補綴前外科手術 10 5 3 3 6
インプラント手術 51 25 41 42 19
抜歯術 60 48 53 59 54
その他 4 2 4 7 8
合  計(人) 191 144 155 164 154
麻 酔 件 数 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
全身麻酔 142 119 122 133 136
局所麻酔 49 25 33 31 18
合 計(人) 191 144 155 164 154

入院件数

入 院 件 数 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
抜 歯 埋伏智歯 38 31 42 57 49
過剰埋伏歯 23 12 11 11 13
その他 16 13 15 8 20
腫瘍・嚢胞 32 25 44 35 53
炎 症 28 20 10 31 15
21 24 7 10 11
外 傷 10 6 1 3 4
顎変形症 10 12 9 10 13
インプラント関連 7 2 7 7 4
その他 9 13 11 8 16
合 計(人) 194 158 157 180 198

当科のめざす医療について

100人の患者さんがいれば100通りの医療があるはずです。これからも患者さんにとって真に有益な「オーダーメード医療の提供」をモットーに地域医療に貢献したいと考えています。また、病診連携といわれる地域の歯科医師会・医師会との連携をさらに深めて、上質な医療の提供をめざしていきます。

顎関節症の原因=強い力が持続的にかかること



現在考えられている顎関節症の主な原因は、「強い力」が「長い時間」関節や筋肉にかかること、です。 具体的には、夜中のはぎしりやくいしばり、日中のくいしばりやかみしめ、などのくせが挙げられます。

1)夜中のはぎしりやくいしばり


案外知られていないことですが、ほとんどの人が夜中にくいしばったり歯ぎしりをしたりしています。 しかし、普通は時間が短い(数秒単位)ので、痛みは生じません。 また、歯ぎしりの80%は音がしないので、「歯ぎしりを指摘されたことはない」=「歯ぎしりをしていない」と誤解している人がほとんどです。 睡眠中は脳が眠っているため痛みを感じにくくなっており、起きているときには不可能なほど強力に食いしばることができます。 時には、昼間の6倍の強烈な咬合力(かみしめる力)が出ることもあります。 これは、奥歯でクルミが噛み割れるくらいの力ですから、この力を出すために酷使される関節や筋肉は強いダメージをうけることになります

夜中のはぎしりやくいしばりの診断法
*朝起きた時に顎のまわりが疲れている、朝食の時に口が開きづらい・痛みが強いなど、起きたてのときに顎の症状が一番強い場合は、歯ぎしりやくいしばりが疑われます。 人間の関節や筋肉は、睡眠中にリラックスしますから、起床時が一番症状が楽なはずです。 ところが、上記のような方は、夜中に顎に負荷をかけていますから、朝が一番辛く、午後になるに従って、顎の症状がやわらいでくるのです。 明け方、ひどくくいしばったあまりに目が覚めた、という人もいます。

*顎関節症専門医は、歯のすり減り方で歯ぎしりの有無をおおむね判断できます。
 
*より確実に診断したい場合は、プラスチック性のマウスピース(スプリント)を装着して調べる方法があります。 スプリントについた傷で、歯ぎしりの有無や強さが診断できます。 スプリントは、健康保険でつくることができます。

2)日中のかみしめ・くいしばり


日中のかみしめ癖がある人は非常に多いのですが、これを自覚している人はほとんどいません。 そもそも人間の上下の歯は、いつも2-3mm離れているのが自然な状態です。 ところが、かみしめ癖がある人は、テレビを見ているとき、運転をしているとき、包丁を使っているとき、パソコンのキーボードを叩いているときなどに、いつでも奥歯をくっつけてたりかみしめたりしています。 また、力仕事をしている人は、かみしめずには力が出ませんから、やはり仕事の間中関節や筋肉を酷使することとなります。 日中のかみしめは、力は弱いのですが、持続時間が長いため、やはり顎にかかる負荷は大きくなります。

3)突然固い物を噛んでしまった


フランスパンの皮や、スルメなどを噛み千切ろうとした瞬間に「ギクッ」ときて、痛みで口があかなくなった、というケースも少なくありません。 上記のかみしめやくいしばりを慢性的な原因から生じた顎関節症とすると、こちらは急性の顎関節症ということができます。 状態としては「捻挫」と同じですから、安静にしていれば治ります。

治療法



1)安静を守る・力をかけない


顎関節症は、関節と筋肉の障害ですから、まず安静にすることが第一です。 足の捻挫なら意識して使わずにいることもできますが、顎の関節は食事・会話などで使わざるをえないため、安静にしておくのは案外むずかしいものです。 しかし、以下の「痛いときの注意」を良く守って安静にすることで、自然治癒を促進することができます。

2)暖める・冷やす・マッサージする


ずきずき痛むときには冷やしても良いのですが、多くの場合は暖める方が効果があります。 血液の循環を良くして、関節や筋肉の中の老廃物を洗い流すことで痛みが取れてきます。
同様にマッサージが効果があることもあります。


3)薬


医師・歯科医師に処方してもらうのがベストですが、多忙で病院に来れない場合は、市販の痛み止めを1日3回(食後・各1錠)1週間から2週間服用することで炎症を抑えることができます。 この場合、薬は飲んだり飲まなかったりでは効果がなく、きちんと時間を守って服用し、血中濃度を維持することが重要です。
痛み止めを服用する際に大事なことは、
*時間を守って服用すること(1日3回)
*胃腸に潰瘍がないこと
痛み止めは胃腸粘膜をもろくしますので、胃潰瘍や十二指腸潰瘍があると、潰瘍が悪化する場合があります
*2週間以上、だらだら服用を続けないこと
2週間服用しても痛みが止まらない場合は、専門医を受診してください。
長期間痛み止めを服用し続けると、血が固まらなくなって出血しやすくなることがあります。また、痛み止めを止めるともっと強い痛みが発生するようになり、止められなくなってしまうことがあります。これは一種の中毒状態です。

顎関節症:痛みが強いときの注意事項


早く痛みを引かせるためには顎関節と顎の筋肉を安静にすることが重要です。以下の注意をよく守ってください。

*食事の注意:口を大きく開けない・固い物を噛まない・長く噛まない
1)食べ物は一口で食べられる大きさに切って、口を大きく開けることを避けてください。
2)パンの皮の固いところや生野菜、肉など、固い物、長く噛まなければならない物は避けてください。
3)チューインガムは無意味に顎を酷使しますから、ガムを噛んではいけません。
*不用意にあくびをしない
*顎を前に突き出さない
5)前歯で物を噛んだり、噛み切ったりしないでください。
6)顎を前に出す動作を避けてください。

(例)会話時、喫煙時、口紅をつける時など
*顎に負担をかけない(力をかけない)
7)仰向けに寝てください。
8)首の牽引や、頬杖をつくのはやめてください。
9)電話の受話器を顎と肩で挟むのをやめてください。
10)日常生活の中で、上下の歯を噛みしめていないか自分で注意してみてください。歯の噛みしめやくいしばりは顎に非常に大きい負担をかけます。

かみしめ・くいしばりによる筋肉痛を治すために


日常生活の中で、上下の歯をかみしめていないか自分で注意してみてください。 歯のかみしめやくいしばりは顎に非常に大きな負担をかけます。
1) 本来人間の上下の歯が接触するのは、物を噛む時と飲み込む時だけだということを覚えておいてください。
2) もし、かみしめやくいしばり、はぎしり等をしていると、あなたの噛むための筋肉や関節は持続的に破壊され続け、治療しても効果が現れにくく、なかなか治らないという結果になってしまいます。 このような癖がありましたら、ただちに止めるよう注意してください。  
3) かみしめやはぎしりの習慣を止める最も効果的な方法は、唇を閉じて歯を離すことを覚えることです。

「唇を閉じて、上下の歯を離し、顔の筋肉の力を抜く」ことを意識して努力してください。 このことを1日に何度も練習してください。 この簡単な方法で顎の関節と筋肉は非常にリラックスし、緊張やこわばりから解放されます。 そして筋の緊張によって引き起こされていた、顎や首のまわりの痛みは少しずつ引いていきます。

セルフケア(SELF-CARE)症状の自己管理


顎関節症は、ぎっくり腰に似ていて、くいしばりや歯ぎしりがひどくなったり、体力が落ちたり、ストレスがたまったりすると再発することがあります。 何年に1回くらいの割合で再発を繰り返すことは珍しくありません。 したがって、顎関節症の治療のゴールは、症状をすっかり消し去ることではなく(それが可能な場合もあります)、症状とうまく共存できるようになることです。 そのためには、顎関節症の自己管理法を身につけることが必要です。

顎関節症の自己管理


50代の主婦のAさんは顎関節が痛くて食事ができないといって口腔外科を受診しました。 痛みは耳や側頭部にまで放散し、うどんくらいしか咬めないという状態でした。 診察してみると両側の顎関節や側頭部、頬の筋肉にも強い圧痛が認められました。 また、Aさんは、雑巾掛けをしたりテレビを見たりするときに、いつも歯を強くかみしめていることに気づいていました。 主治医はAさんに、まず治癒を促すために痛んでいる筋や関節を安静にして柔らかい物だけ食べるよう指示しました。 また、常に上下の歯を接触させている癖をやめるように説明しました。 このようにして2週間もするとAさんは徐々に固いものが咬めるようになり、やがて普通の食事ができるようになりました。 Aさんは、くいしばりをやめ、食べ物の種類と固さを調節する事で顎関節症の症状を自分で管理できることを学びました。 その後もAさんは、顎の痛みがぶりかえしそうになると柔らかい食事に戻し、大きく口を開けなくて済むよう食べ物を小さく切って奥歯で咬むようにし、何日かして顎の痛みが良くなると、また普通の食事をするという風にしています。 Aさんはここ数年間この方法で顎の痛みを自分で管理しており、顎関節症が、病院に薬をもらいに来なければならないようなひどい状態に悪化することはなくなりました。

これでいいのです。
私たちは、専門医ですから顎関節症の患者さんの治療をすることが仕事ですが、患者さんの中には、仕事を休むわけにはいかず、治療を受けにいらっしゃれない方も少なくありません。 幸い、顎関節症は自己管理が可能な疾患ですから、以下の方法で自分で症状を飼い慣らし、顎関節症とうまく共存していければいいのです。 もちろん、可能であれば一度きちんと専門医の診察を受けたほうがよいことはいうまでもありません。

Self-care


1)関節と筋の安静
関節や筋に痛みがある場合は、なによりもまず安静にすることが大原則です。つまり、顎の使用を最小限に抑え、状態を悪化させる様なことをしないで、自然緩解を待つのです。足首の捻挫と同じで、安静を守るだけで症状はずいぶん緩和します。

a)柔らかい食事
特に避けなければいけないのは、噛みごたえのある肉や生野菜、フランスパンの皮の部分、前歯で咬みきらなければならない固いものなどです。 他にも長く咬まなければならないものも避けなければいけません。 可能ならば、おかゆ、うどん、スープ、柔らかい煮物、ヨーグルトなどのほとんど咬まないで済む食べ物以外は食べない方が良いのです。 これを守ることで顎関節と筋肉は安静に保たれ、自然緩解しやすくなります。

b)顎関節症を治す呪文:上下の歯を離す(ティースアパートteeth apart法)
上下の歯が接触するのは物をかみ切るときと飲み込む時だけで、これ以外の時には歯が接触しないのが普通です。もしそれ以外の時に上下の歯が接触しているなら、それはかみしめ癖があるということなので、ただちに止めなければいけませんい。なぜならかみしめは歯や顎関節、筋に大きな負担を強い、痛みの原因になるからです。
歯を離しておくための方法として、「唇を閉じて、奥歯を離し、顔の力を抜く」という簡単なフレーズを一日に何度も自分に言い聞かせます。この方法は、簡単で絶大な効果が得られる顎関節症治療の強力な武器であるため、専門医の間では「TMDマントラ(顎関節症を直す呪文)」とまでよばれています。

c)ガムは禁止
チューインガムは顎を酷使させますから、顎関節症の人はガムを食べてはいけません。

2)口を大きく開けない
a)あくびをコントロールする
あくびの時には、筋肉や関節の靭帯は通常以上に引き伸ばされるため痛みを悪化させます。 とはいっても、あくびをかみ殺すのは困難ですから、口を大きく開けずににあくびができるトリックをお教えします。
1)こぶしをオトガイ(顎の先端)にあてて、こぶしの押す力に逆らってあくびをします。 この方法により顎はこぶしに支えられ、必要以上に大きくあけずに済みます。
2)手が塞がっている時にどうしてもあくびをしたくなったら、顎を胸にくっつけてあくびをすればよいのです。 こうすれば胸が顎を支えて、やはり口を大きくあけずに済みます。
3)その他に、舌先を上顎の前歯の裏側につけ、舌先が離れないようにあくびをするという方法もあります。

3)冷湿布
打撲や捻挫などの急性の痛みに対しては、最初の48時間から72時間は冷湿布を応用するべきです。冷やすことによりはれや痛みは軽減します。氷を紙コップに入れて凍らせることで使いやすく成型することができますから、これをタオルに包んで痛んでいる部位にあてがうとよいでしょう。

4)温湿布
湿タオルを電子レンジで温めたり、熱いシャワーを10分ほどかけることでも代用できます。大事なのは、毎日家庭で実行することです。

5)マッサージ
痛んでいる筋を自分でそっとマッサージすることも効果があります。 温湿布の後で、気持ちいいと感じられる程度のマッサージを行うことは筋のリラクゼーションに有効です。

6)寝るときの姿勢
寝ている間の姿勢も重要です。 仰向けに寝ることができない人は意外に多いのですが、仰向けになることによって顔や顎や首の筋肉はよりリラックスした位置をとることができます。 もし、腕や硬い枕を片方の顎の下に入れて横向きに寝ると、顎は反対側に押されて顎関節や筋肉に一方向からの力をかけることになり、顎にストレスがかかりますからこのような寝方をする習慣を止めるよう努力しなければなりません。
また高すぎる枕は、顎をくいしばりやすくしたり、首の後ろの筋を疲労させますから、適切な高さの枕を選択することも重要です。

口腔顔面痛外来(木曜日、完全予約制)


原因不明の歯や顔の痛みの診断と治療を行う特殊外来です。口腔顔面痛学は1990年代に米国で発展し、今世紀に入って日本に普及し始めた歯科の新しい分野です。当外来は全国にさきがけて設置され、日本では数少ない米国口腔顔面痛学会認定医が診療にあたり、全国のセンター的施設となっています。また、難治性疼痛には心理的要因がかかわっていることが多いため、午後2:30からは慢性疼痛の薬物療法を専門とする精神科医(山田和男医師)が同席するリエゾン外来を行っています。

口腔顔面痛外来で扱う疾患


■非定型歯痛・非定型顔面痛

■舌痛症・口腔内灼熱症候群
歯に持続性のじんじん・じわじわする痛みが生じており、治療を繰り返しても全く痛みがとれない。舌の先端や縁のところ、また口の中全体にヒリヒリする痛みが生じているなど、いずれも「原因不明」とされてきた代表的な口腔顔面痛疾患です。脳のセロトニンやノルアドレナリンという物質が不足して生じている痛みで、薬物療法がよく効きます。

■群発頭痛、“三叉神経・自律神経性頭痛”
数分から3時間ほど続く激烈な顔面痛発作を起こす疾患です。「頭痛」とはいっても、痛むのは目を中心とした顔面です。命に別状はありませんが、うずくまって動けなくなるほどの非常に激しい痛みです。種類があり、それぞれに治療法が異なりますから、まずは正確な診断を行うことが重要です。

■三叉神経痛・舌咽神経痛
顔面やのどの奥、耳の奥深くに、瞬間的(数秒間)に強烈な痛みが生じる神経痛です。三叉神経痛は、歯の痛みと感じられることが多いため、歯痛との鑑別が難しいこともあります。

■心理的要因と関係した顔面痛
あまり知られていませんが、うつ病や身体表現性障害とよばれる精神疾患で顔面痛が生じることが少なくありません。原因は脳の中で痛みの感じ方が変わってしまうためで、「気の持ちよう」では治りません。当科リエゾン外来で、精神科医と口腔顔面痛専門医が連携して診断と治療に当たります。

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