読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

小児科 石田優香

■はじめに
小麦といえば乳幼児期に発症する食物アレルギーとして代表的なアレルゲンの一つ。
これまで小麦含有製品を食べてもアレルギー症状が出なかったのに、子供でも大人でも突然アレルギー症状が出ることがあります。これは本当の小麦アレルギーでしょうか。

■アレルギーとは
アレルギーとは食物や花粉、ダニなどの「アレルゲン」に対して免疫が過剰に反応することで、蕁麻疹、咳、嘔吐などの症状を引き起こします。代表的なものは食物アレルギーやダニアレルギー、スギに代表される花粉症です。

乳幼児期の食物アレルギーは鶏卵・牛乳・小麦の3大アレルギーが有名ですが、近年はピーナッツアレルギーも増加しています。いずれの食材が入っている製品を摂取すると摂取後約30分から2時間で蕁麻疹、嘔吐、咳の症状が出現し、病院を受診したことがある方もいるでしょう。乳幼児期の食物アレルギーは0歳から1歳の離乳食開始時期に多く発症しますが、適切に除去や治療を行うと小学校入学前、6歳頃までに耐性が獲得されます。その後は症状が出なくなり食物を摂取できるようになることが多いです。そのため、小学校入学以降に突然鶏卵・牛乳・小麦アレルギーを発症することは少なくなります。

一方、ダニ・ハウスダストやスギアレルギーの患者数は近年増加傾向であり、発症年齢の低年齢化が報告されています。1年を通して鼻汁や咳がでるアレルギー性鼻炎や喘息、花粉症が代表的で、耐性獲得は少なく、食物アレルギーのように小学生になれば治るものではありません。近年、ダニ・スギアレルギーが原因のアレルギー性鼻炎と診断された5歳以上のお子さんに対しては舌下免疫療法ができるようになり、症状の改善を目指せるようになりました。ご興味がある方はぜひ小児科にご相談ください!

■パンケーキ症候群とは
さて、小麦粉とダニにどんな関連があるのでしょうか。
多量のダニを摂取し、まるで小麦アレルギーのような 症状を起こす経口ダニアレルギーを、俗に「パンケーキ 症候群」といいます。日本ではパンケーキばかりではなく、 たこ焼きやお好み焼きなどで、特にベーキングパウダー も混合している小麦粉を使用した食品でより発症しやす いとされています。

発症の原因は完全には解明されていませんが、ダニアレルギーの人が多量のダニを含んだ小麦製品を摂取することで、口腔粘膜で急激にダニアレルゲンを吸収しアレルギー症状が出現すると考えられています。 ダニアレルギーは小麦アレルギーと関連はなく、一般的な食物アレルギーで出る症状より強く、摂取から症状が出る時間までの時間が短いことが知られています。つまり、これまで小麦粉を使ったものは何も気にせず摂取していたのに、突然強いアレルギー症状が出る可能性があるのです。

■パンケーキ症候群を防ぐには?
パンケーキ症候群を発症しないためには、小麦粉内にダニを繁殖させないことが鉄則です。ダニは室温27℃、湿度70%以上の高温多湿な環境を好みます。開封から2か月以上経った小麦粉の袋の中にはおびただしい数のダニが発生している可能性があります。ダニは小さく小麦粉と同じ色をしているため、においをかいでも、袋の中をのぞいてもダニがいるかはわかりません。パンケーキ症候群にならないためには、ダニが繁殖しにくい環境で小麦粉を保存することが大切です。開封した小麦粉をペットボトルなどの密閉できる容器に詰め替え、冷蔵庫で保存することをお勧めします。

■さいごに
お子さん、お孫さんはそろそろ冬休み。冬休みには待ちに待ったクリスマス、お正月と行事が目白押し。家族で集まってケーキやご飯を食べる機会も増えるでしょう。自宅で小麦粉を使う場合は、開封時期と保存方法を確認してから使いましょう。
「いつ開封したかわからない」、「室温で保存していた」という小麦粉を手に取ったら、家族の笑顔のために開封済みの小麦粉を捨て、新しい小麦粉を使用しましょう!