読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

麻酔科 仲地 翔

 ●喫煙の健康リスク
喫煙は、心臓病、喘息、肺がんなどの重大な病気を引き起こします。また、手術の時に麻酔に関係した合併症を引き起こす可能性が高くなります。特に、全身麻酔(意識を失うタイプの麻酔)を受ける場合に合併症が起こりやすいです。
●手術前の禁煙の重要性
手術を控えている喫煙者は、できるだけ早く喫煙をやめることが推奨されます。喫煙は、手術中または手術後に呼吸困難を引き起こす可能性があり、肺炎のリスクを高め、手術後に人工呼吸器を必要とする可能性も増加します。また、喫煙は血流を減少させ、手術の傷の治りを遅らせ、感染するリスクを高めます。さらに、心臓病の主要な原因であるため、手術中や手術後に心臓発作(心筋梗塞など)を起こす可能性も高くなります。
●喫煙をやめるタイミング
理想的には、手術の4週間以上前に喫煙をやめることが望ましいです。しかし、手術の前日に喫煙をやめるだけでも合併症の可能性をある程度は低くできます。喫煙をやめるとすぐに体は回復しはじめ、徐々に心臓や肺の機能が改善されます。体内のニコチンや一酸化炭素も直ちに低下しはじめ、血流が改善され、手術の傷に問題を起こす可能性が減少します。また、手術からの回復期間中も禁煙を続けることが効果的です。
●手術を機に禁煙を
手術は禁煙を始める絶好の機会です。手術を機に健康を改善しようと考えることは大事ですし、入院中には喫煙ができないため、禁煙を始めるのに適しています。この機会を利用して禁煙計画を進めることができます。
●手術がなくても禁煙を
手術を控えていない場合でも、禁煙することには多くのメリットがあります。麻酔科では、喫煙が体に与える害を手術中に目の当たりにしているので、手術をしない場合でも健康のために禁煙を推奨しています。禁煙は寿命を6〜8年延ばし、肺がんや心臓病のリスクを減少させ、1日1箱吸われる方の場合には年間約18万円の節約につながります。また、周囲の人々への受動喫煙の影響をなくすことにもなります。禁煙をしていれば、将来的に手術や全身麻酔が必要になった場合に、健康な状態で臨むことができます。