読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

                                産婦人科科長 岩崎真也

サザエさんは24歳です。波平さんは54歳、舟さんは52歳の設定です。

皆さんの感じている年齢はもっと上(30歳くらい)だったのではないでしょうか?

サザエさんは50年前から放送されています。

50年前の24歳女性のイメージがサザエさんなのです。

女性の平均寿命は50年前のサザエさんが始まった時は75歳、令和となった今は87歳を超えています。

この50年間で女性の平均寿命は12歳も延びたのです。

日本の100歳以上の高齢者数は50年前は300人くらいだったのが今や7万人を超えています。そのうち9割を女性が占めています。

しかし閉経の年齢は今も50年前も50~51歳と伸びていません。

すなわち、女性の小児期、思春期、性成熟期、更年期、老年期の5つの期間ののうち更年期、老年期の人たちが増えているのです。

言い換えると女性は一生のうち生理を経験する時間(およそ40年間くらい)よりも生理がない時間のほうが長くなっているのです。

そのため産婦人科が対応する領域も変化してきています。

今までの周産期、腫瘍、生殖の3分野に加え新たに女性医学という女性のヘルスケアを扱う学問ができました。

少子高齢化、晩産化、未婚化の時代を迎え、高齢者特有の疾患も増え、介護を必要とする高齢者も増加の一途にあります。

高齢化社会では「健康で幸福感あふれる老後をいかに過ごせるか」に大きな関心が寄せられ、「医療福祉の面だけではなく、国家経済の面も重要な課題」になっています。

一方高齢女性に特有な疾患は老年期になって突然発症してくるわけではありません。それまでの生活習慣に関する様々な要因が蓄積し相互に影響しあって、これに閉経や加齢といった生物学的要因が加わり様々な病気が発生してくるのです。

そのため女性の健康維持のためには女性の生涯を通しての予防医学が必須となったのです。

それが女性医学なのです。

具体的には更年期障害、骨粗しょう症、脂質異常症、メタボリックシンドローム、ホルモン補充療法、排尿障害、骨盤臓器脱、婦人科心身症、セクシャリティ、卵巣摘出後の術後管理、さらには思春期、無月経女性のヘルスケア、産婦人科診療に必要な法律知識、ホルモン剤の基礎知識など極めて多彩な疾患、多岐の分野を網羅しています。

 

今年生まれた女の赤ちゃんの半分は90歳まで生きると予測されています。平均寿命はどんどん延びているのです。しかしその反面高齢になるほど生活習慣病になる可能性が増えてくるので寝たきりや認知症も増えてくるのです。

寿命は長ければそれでいいのでしょうか?平均寿命から介護が必要な年を差し引いた寿命を健康寿命といいます。平均寿命と健康寿命は12.68年違います。つまり女性は一生のうち13年ほどは何らかの障害を背負って生きなければいけないのです。

女性の健康寿命を考えるのが女性医学なのです。

核家族化が進む中、高齢者を取り巻く環境も変化してきました。単独で生活している女性高齢者、夫婦のみの高齢者世帯が増加しています。30年前の倍になっています。みなさんの周りにも一人暮らししている女性が多くいらっしゃるのではないでしょうか?

 

女性医学については産婦人科医師にご相談ください。