整形外科 諏訪本拓海
■骨折が骨折を呼ぶ?
「転んで骨を折ってしまったけれど、治ったからもう大丈夫」そう思っていませんか?実は骨粗鬆症のある方が一度骨折を経験すると、その後また別の場所で骨折を起こしやすくなることがわかっています。これを『骨折連鎖』と呼びます。

骨粗鬆症は日本全国で約1,300万人の方が罹患していると言われており、特に閉経後の女性や高齢の男性に多く見られます。「自分には関係ない」と思われている方も多いかもしれませんが、実は60代以上の女性の3人に1人は骨粗鬆症とも言われており、決して他人事ではありません。
■そもそも骨粗鬆症ってどんな病気?
骨は一見、変化のない硬い組織のように思えますが、実は毎日少しずつ古い骨が壊され、新しい骨が作られるという『リモデリング』を繰り返しています。若いうちはこのバランスが保たれていますが、加齢や女性ホルモンの減少によって骨が壊れるスピードが作られるスピードを上回るようになると、骨の中がスカスカになっていきます。これが骨粗鬆症です。
骨粗鬆症になっても、最初は痛みなどの自覚症状がほとんどありません。そのため「気づかないうちに進んでいた」というケースがとても多く、骨折して初めて発覚することも珍しくありません。
■なぜ骨折が繰り返されるの?
骨粗鬆症による骨折が一度起きると、なぜ次の骨折につながりやすいのでしょうか。主な理由は3つあります。
①骨や筋肉がさらに弱くなる 骨折後は痛みや治療のために動くことが減り、その間に骨や筋肉がどんどん弱くなります。特に足腰の筋力が落ちると体のバランスが崩れやすくなり、ちょっとしたことで転倒しやすくなります。転倒は次の骨折の大きなきっかけになります。
②背骨の変形が連鎖を引き起こす 背骨(脊椎)の圧迫骨折が起きると、背中が丸くなり体の重心が前にずれます。すると残りの背骨や股関節に余分な負荷がかかり、さらに別の圧迫骨折や股関節の骨折を引き起こしやすくなります。背骨の骨折は1か所にとどまらず、複数箇所に連続して起きることも多くあります。
③骨がすでに弱くなっているサイン 最初の骨折が起きたということは、骨がかなり弱くなっているということです。適切な治療を始めないままでいると骨はさらに弱くなり、次の骨折のリスクがどんどん高まっていきます。
■骨折連鎖がもたらす影響
骨折連鎖の中でも特に注意が必要なのが大腿骨近位部骨折(股関節の付け根の骨折)です。転倒によってこの部位を骨折すると、ほとんどの場合手術が必要となり、回復にも長い時間がかかります。骨折前と同じように歩けるようになる方は半数程度と言われており、そのまま要介護状態になってしまうケースも少なくありません。また、この骨折を起こした方の1年以内の死亡率は約10〜20%とも報告されており、高齢者にとって非常に深刻な骨折です。
背骨の圧迫骨折も繰り返されると背中がどんどん丸くなり、慢性的な腰背部の痛み・食欲の低下・胃腸の不調・呼吸のしにくさなど、全身にさまざまな影響が出てきます。「最近背が縮んだ」「以前より背中が丸くなった気がする」という方は、すでに気づかないうちに圧迫骨折が起きているかもしれません。
■骨折連鎖を止めるために
骨折連鎖は、適切な治療と日常生活での予防でしっかりくい止めることができます。

【薬による治療】 現在は骨粗鬆症に対してとても効果的なお薬が数多く揃っています。骨が壊れるのを抑えるお薬、骨を新しく作る力を高めるお薬、その両方に働くお薬など、患者さんの骨密度や年齢・生活状況に合わせて選択します。お薬は飲み薬・注射など種類もさまざまです。一度骨折を経験された方には特に、次の骨折を防ぐために積極的に治療を続けていただくことをお勧めしています。
【食事でカルシウム・ビタミンDを摂る】 骨の材料となるカルシウムと、その吸収を助けるビタミンDを意識して摂ることが大切です。乳製品・小魚・豆腐・緑黄色野菜などを積極的に食べましょう。また、1日15〜30分程度の適度な日光浴もビタミンDの生成に役立ちます。
【転倒を予防する】 筋力を維持するためのウォーキングや軽い体操を日課にしましょう。自宅の段差をなくす・滑りやすいマットを固定する・夜間の足元を明るくするなど、住環境を見直すことも大切です。必要に応じて、リハビリテーションで歩き方やバランスを整えることもできます。
■まずは骨密度を調べてみましょう
骨粗鬆症は自覚症状がないまま静かに進行する病気です。「骨折したことがある」「最近背が縮んだ気がする」「閉経から10年以上経っている」という方は、ぜひ一度骨密度検査を受けてみてください。検査は短時間で体への負担もほとんどありません。
骨折連鎖は『気づいて・治療して・予防する』ことで必ずくい止められます。一度の骨折で終わらせるために、まずはお気軽に整形外科にご相談ください。

