読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

皮膚科 久原章弘

【ご挨拶】
皮膚科では診断に応じて外用・内服を適宜行いますが、必要に応じて紫外線を組み合わせて治療を行うことがあります。初めは週に1回程度通院していただきますが、症状が軽快へ向かえば2週間に1回、1か月に1回など徐々に受診間隔を伸ばして、最終的に通院を終了することも見込める治療法です。現在の皮膚症状が光線療法の適応に当たるかどうかは、当科を受診していただくか、かかりつけの皮膚科医に相談し、当科に紹介していただければと思います。

【光線療法の歴史】
1903年、デンマーク人であるニールス・フィンセン(Niels Finsen)は、尋常性狼瘡という病気(皮膚結核の1種)に対する光線療法で医学に新しい道を開いたことが評価され、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。抗生物質の到来により日光で結核を治すという治療法は当然使用されなくなるわけですが、彼が証明した「日光の特定の波長が有用である」という概念は、現在の半導体の技術革新により、フィルターや特殊な装置を使用せずとも、ある程度自由に紫外線~可視光線~赤外光の特定の波長を出力できることから、光の新たな応用を考えることになりました。
日本では名古屋市立大学に1968年に皮膚科第2代教授として東京大学から着任した水野信行先生によって、21年間の在籍の間に光線療法に関する実績が作られました。1970年代初め、尋常性乾癬という病気に対する治療はステロイド外用治療とGoeckernan療法が主体でありましたが、水野教授らはPUVA療法、UVB療法に使用する照射装置の開発・臨床応用を行い、外用PUVAは水野教授らによって、世界にも先駆けて、日本でスタートしました。その効果は当時の尋常性乾癬に対する治療としては群を抜き、画期的な治療でありました。
しかし、PUVA療法にはいくつかの問題・課題があり、それを解決するために、乾癬皮疹に対して複数の波長を照射したところ、その効果と紅斑反応から311~313nmの優位性が明らかとなり、きわめて幅の狭い波長特性を持った光線療法が開発されるに至りました。光線療法を最適化するには、過剰な紅斑反応を抑えながらも、治療効果を高めることを目的としています。

【光線療法の種類と実際】
現在、当科で使用している光線療法の機械はナローバンドUVB(以下、NB-UVBと記載)とエキシマライトの2種類の機械です。この2つは治療に使用する波長が若干異なりますが、NB-UVBは全身照射でエキシマライトは部分照射するための機械と捉えていただいて問題ありません。1回の照射時間は照射量によって異なりますが、長くても2-3分で短ければ1分も必要としません。光線療法の効果を実感するためには複数回照射する必要がありますが、光線療法の患者負担は1回あたり約1000円程度で、月に数万円必要とする生物学的製剤と比較すると非常に経済的な治療選択肢となります。

【光線療法のメカニズム】
光線療法のメカニズムとして、①サイトカイン・ケモカインなどの液性因子への影響、②接着分子などの細胞表面分子の発現変化、③病因となる細胞のアポトーシス誘導、④制御性T細胞の誘導などが考えられています。①は炎症性サイトカインだけでなく、痒み関連分子の発現にも関わっており、表皮の神経線維数の減少などももたらされていることが知られています。また、③は尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、菌状息肉症という病気には特に重症なメカニズムであり、病因となるT細胞がアポトーシスを起こして取り除かれるため病変が改善することが知られています。

【終わりに】
最後まで読んでいただきありがとうございました。今回のきよかぜで何かの助けになれば幸いです。光線療法は、初期導入時において週に1回通院していただくことが多いため、ご多忙な患者さんには選択しづらい治療法になりますが、通院頻度が問題ではなく、かつ過剰な紅斑反応なく、光線療法の禁忌に当たらない皮膚疾患であれば比較的安全に行うことができ、費用も経済的で患者負担が少ない優良な治療選択肢になります。当科では月曜日と水曜日の午後に光線療法を行う時間を設けています。光線療法を希望される方は是非一度、皮膚科外来までご相談ください。