読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

小児科 忽滑谷ぬかりや直美

●はじめに
1960年代以降、「アレルギー疾患」というものがとても増えています。
アレルギー疾患とは、食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症や鼻炎などの総称です。なんと、国民の2人に1人はこのアレルギー疾患をもっていると言われています。アレルギー疾患は、人間の体質と環境が複雑に絡み合って発症します。人間の体質は数十年でそんなにすぐ変わらないでしょうから、わたしたちをとりまく環境が大きく変化したのでしょう。そんな身近なアレルギー疾患ですが、普段とりたてて大きく困ることはないという方がほとんどだと思います。ですが、実は災害の時に困ることがとても多いのです。

●災害時に想定される困りごと
さて、アレルギー疾患を持っているみなさまは、災害の時にどんなことが起こるか、どんなことで困るのか、考えたことはありますか?
大規模災害においては、アレルギー疾患がある方は以下の困難な状況に直面するリスクがあります。
1 普段の薬が手に入らない
2 けがなど他の治療が優先される
3 住環境の変化、感染症、ストレスで症状が悪化する
4 治療や服薬の記録が分からなくなる
5 食物アレルギーに対応した食事が入手できない
      (ミルクアレルギーのある赤ちゃんは命にかかわります。)
6 相談先がない、わからない

●災害の備えをしましょう
災害への対応は自助、共助、公助に分類され、発災時は自助の割合は7割ともいわれています。日ごろからお薬やアレルギー対応食品を備蓄することや、災害時に必要なサポートを受けられるよう、平時から準備を心掛けましょう。

① 非常時にアレルギー情報がわかる資材(お薬手帳のコピー等)を準備しましょう。
何を飲み、塗っているのか、薬の名前と量を正確に覚えている人はあまりいません。
ぜひコピーを取っておいて災害バッグにいれておきましょう。

② 食品の備蓄をしましょう。
食物アレルギーがある方は、2週間分のアレルギー対応食を用意しましょう。
食物アレルギーがない方は最低3日分の食品を用意しましょう。

③ アレルギーサインプレート、災害用ビブスを活用しましょう。
アレルギーがあることを毎回申告するのは大変ですし、気が引けてしまうこともあるかと 思います。ですが、アレルギー疾患は「要配慮者」に位置付けられています。
アレルギーサインプレートや災害用ビブスというものがあり、ご自身のアレルギーを支援者に簡便に伝えることができます。


④ 日ごろからアレルギー疾患の状態を良好に保ちましょう。
災害時や避難所生活では、症状が悪化しやすいので、日ごろから症状をしっかりとコントロールしておくことが重要です。
また、症状が悪化したときの薬を処方してもらい、悪化時の対応について確認しておくことが必要です。

●アレルギーポータルを活用しましょう
アレルギーに関する様々な情報を集めたポータルサイトです。
アレルギーの症状や治療方法、相談できる専門医や災害時の対応方法の情報等が集約されています。
災害時の対応についてはPDFがありますので、平時にダウンロードをしておくとよいでしょう。

●さいごに
近年日本では、地震や大雨など、自然災害が多く発生しています。重要なことは日ごろから備えをしておくことです。頭では分かってはいても、災害用品は場所をとるし今困っていないし…と準備を後回しにしがちですよね。静岡でも、昨年8月に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発令された際には、水や米が品薄になったことは記憶に新しいのではないでしょうか。備えていてもうまくいかないことが多いのが災害です。ですが、備えなければ乗り切ることはできません。どうぞご自宅の備蓄を見直して、災害にあってしまっても自分や家族を守れるように備えましょう。

出典:アレルギーポータル(日本アレルギー学会)