読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2017.08.01

泌尿器科 日暮 太朗

<頻尿とは>
 「おしっこが近くて、トイレに何回も行ってしまう」といった排尿の回数が多いトラブルを「頻尿」といい、誰もが経験する症状だと思います。目安として、朝起きてから夜寝るまでの間に、8回以上の排尿回数がある場合を「頻尿」と定義されています。しかし、人により体格や生活リズム、水分を取る量が違うので1日8回以上の排尿回数があるからといって、治療が必要になるわけではありません。逆に、8回以下であってもご自身で普段より排尿回数が多く苦痛を感じられる場合は、治療の対象になることもあるのです。

<頻尿の原因と治療>
 頻尿が起こる原因は実に様々なものがあります。単にいつもより水分を取り過ぎただけであれば、水分量を減らせばすぐに良くなりますが、他に原因がある場合はそうはいきません。頻尿となり得る主な原因について説明します。

①膀胱炎
 尿道から膀胱へ菌が逆流して起こる感染症で、膀胱の感覚が過敏になり頻尿を引き起こします。その他の症状に、排尿の際に痛みを感じたり、排尿した後にも尿が残った感じがする場合があります。尿検査で尿に菌や膿の混入を確認することで診断します。治療は抗菌薬の投与と、菌をたくさんの尿で洗い流すために、十分な水分摂取を指導します。

②過活動膀胱
 過活動膀胱は、「突然起こる我慢できない強い尿意」があり、尿が十分に貯まっていなくても、膀胱が勝手に排尿をしてしまう状態を言います。わかりやすく言うと「尿が近くて時々トイレに間に合わずにチビってしまう」という現象です。日本での患者数は約800万人と言われ、隠れて多い疾患になっています。治療は強い尿意を抑え、膀胱に尿が貯まるようにする薬(抗コリン薬、β刺激薬)による薬物治療が中心となります。その他に、行動療法と呼ばれる、骨盤の筋肉を鍛える骨盤底筋体操や、排尿の間隔を少しずつ伸ばし膀胱の容積を増やす膀胱訓練で効果を示すことがあります。

③前立腺肥大症
 前立腺は男性だけにあり、50歳を過ぎると徐々に肥大し尿道が圧迫されます。尿道が圧迫されると、まず尿が出る勢いが弱くなり、その状態が長期にわたると膀胱の働きにも影響を及ぼし頻尿をきたします。超音波検査や尿の勢いの検査で、肥大の程度、排尿の状態を評価します。その上で、尿道の圧迫を解除する薬(α1遮断薬)や、前立腺自体を小さくさせる薬(5α還元酵素阻害薬)を主に用います。薬物治療による効果が乏しかったり、副作用により継続が困難な場合は手術療法をおすすめしています。

④神経因性膀胱
 尿を貯める、尿を出すといった排尿に関わる神経に異常をきたした状態を、まとめて神経因性膀胱と呼びます。中でも、脳出血、脳梗塞などの脳血管疾患、怪我による脊髄損傷、パーキンソン病などでは頻尿をきたすことがあります。ただ、神経因性膀胱の場合、それぞれの原因疾患の状態により、頻尿だけではなく、尿が出にくくなったり、漏れたりと様々な排尿障害をきたします。原因疾患における専門治療とともに、その時ごとの排尿状態に則した対応が必要になります。

⑤その他
 強いストレスを感じていたり、糖尿病や高血圧により尿の量が増えることでも頻尿になります。また、膀胱の中に腫瘍や結石などの異物がある場合も頻尿になることが知られています。

<最後に>
 「おしっこが近い」といった、日常よく経験する症状なので、つい放っておく人が多いと思いますが、中には重大な疾患が隠れている場合もあります。泌尿器科と聞くとどうしても受診しにくいイメージがあるのですが、気になる方は気軽に受診してみて下さい。