読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2020.08.01

呼吸器内科 科長 芦澤洋喜

肺炎とは

 肺に炎症が起きる病気のことをまとめて肺炎といいます。肺炎は、主に細菌やウイルスなどの病原微生物により肺が侵される病気です。肺炎には、感染源を吸い込んで発病する細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎などの感染性の肺炎と、薬剤性肺炎、アレルギー性肺炎などの非感染性の肺炎があります。肺炎の大部分は、前者の感染性肺炎です。

肺炎の原因

 肺炎が起きる原因の多くは、細菌によって引き起こされます。原因となる菌は様々ありますが、その中でも一番多くみられるのが肺炎球菌です。また、インフルエンザや昨今話題の新型コロナウイルスのようなウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどの微生物でも発症します。こうした細菌やウイルスなどが、口や鼻から体内に入ると、のどから最終的に肺まで到達して肺炎が引き起こされます。特に体力が低下して免疫力が落ちている時に感染しやすく、糖尿病などの慢性疾患を持っている方は気をつける必要があります。この他、高齢者によく見られるのが誤嚥(ごえん)性肺炎で、これは、食べ物や飲み物を飲み込む力が衰えることが原因となります。その結果、飲食物や唾液が肺に入り込んでしまい、そこに含まれていた細菌から肺炎が起きやすくなります。

肺炎の症状

 肺の病気、肺の炎症なので呼吸症状が主体です。すなわち咳や痰(細菌性肺炎では黄色や緑色の痰)、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音がする喘鳴(ぜんめい)などです。さらに炎症の全身反応として発熱したり、食欲が低下したり、水分も取れなくなって脱水症状を起こすこともあります。高齢者では食欲低下や元気がないなどの症状のみが前面に出る場合があるので注意が必要で、気づいた時には重症化していることも少なくありません。ひどい肺炎では、呼吸困難をきたして人工呼吸器を必要とすることもあります。感染症に反応して過度の炎症が起こったりした場合、肺が重度に損傷され、急性呼吸窮迫症候群[ARDS]といわれる状態になることがあります。ARDSの患者は、一般に人工呼吸器による呼吸補助を長期間必要とします。新型コロナウイルス感染症も最重症となった多くの人は、ARDSが原因だと報告されています。

肺炎の検査・診断

 まずは聴診を行い、肺炎に特徴的な雑音があるかどうかを確認します。この後、確定診断のために、胸部エックス線、CT検査を行い、肺に炎症が起きているかどうかを調べていきます。肺炎特有の白い影が認められた場合は、肺炎と診断します。炎症の程度を調べるために血液検査を行い、原因となっている微生物を調べるための迅速検査(抗原検査やPCR検査)や、痰を培養する検査も行います。

 

 

肺炎の治療

 対症療法と原因療法を行います。対症療法とは、症状を緩和させる治療法であり、咳や痰を減らし、発熱に対して解熱剤を使用します。そして、肺炎の原因となった細菌やウイルスなどを退治する治療が原因療法です。検査の結果から原因微生物を推定し、細菌性肺炎に対して抗菌薬を使います。そしてウイルス性肺炎には抗ウイルス薬を使用します。ただインフルエンザなど、まだ極々一部のウイルスにしか効果がなく、新型コロナウイルスに関しても治療は確立していません。これらの治療は、入院でも外来でも基本は同じです。入院した場合は、点滴で十分な水分補給を行い、同時に点滴から抗菌薬を投与したりします。

肺炎の予防

 日頃から手洗いやうがいを徹底し、規則正しい生活習慣を意識するなど、まずは細菌やウイルスへの感染を予防することが重要です。また、肺炎球菌やインフルエンザウイルスに対するワクチン接種を受けることも予防につながります。肺炎による死亡者の大多数は65歳以上のため、特に高齢者は日頃から感染しないよう気を配ることが大切です。