読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

泌尿器科 黒田 悟史

【はじめに】
 尿路結石症は統計学的に男性では7人に1人、女性では15人に1人が一生に一度は患うとされ、頻度の高い疾患です。腎臓で作られた尿は尿管をとおり、膀胱で貯められ尿道から体外へ出されます。腎臓にあるものを腎結石。それが尿管へ移動すると尿管結石。さらに出口へ向かって移動すると膀胱結石、尿道結石と同一のものでも場所によって名称がかわります。特に症状が強くあらわれるのは尿管結石です。腎臓と膀胱をつないでいる尿管は細いため、小さなものでもいったん尿の流れを塞いでしまうと激痛が生じ、一度経験した人はその恐怖を忘れることはないでしょう。

【原因】結石成分で最も多いのはシュウ酸カルシウムで、そのほかリン酸カルシウム、尿酸、リン酸マグネシウムアンモニウム、シスチンなどがあります。シュウ酸カルシウムは明確な原因はわかっていませんが、遺伝・生活習慣・季節・地域差・人種などが関係しているといわれています。尿酸は高尿酸血症(痛風の原因)、リン酸マグネシウムアンモニウムは慢性的な尿路感染症、シスチンは遺伝が原因となっています。

【症状】
腎結石:腎臓に小さい結石があってもほとんどの場合症状はありません。大きくなると腰の違和感や痛み、血尿が出ることがあります。

尿管結石:冒頭でも述べたとおり尿管は細い管で、腎臓から膀胱までは20数cmあります。そのどこかで結石がとどまり、尿の流れを塞いだ時に痛みが生じます。痛む場所は結石がある側の腰や脇腹、下腹部と広い範囲、あるいはそのうちの1か所だけなど、その時々で場所が異なります。痛み以外には、吐き気や嘔吐まで伴うことも多く、また結石が尿管を傷つけることにより血尿を生じます。

膀胱・尿道結石:尿が近い(頻尿)、排尿時の痛み、血尿など膀胱炎に似た症状が出ます。

膀胱の出口や尿道でつまってしまうと、尿が出なくなり非常に苦しい症状となります。

【検査】
尿検査、レントゲン検査、超音波検査、CT検査などを行います。現在最も診断に有用なのはCT検査といわれています。

【治療】
 自然に出る結石の大きさは長径で1cmまでといわれていますが、それ以下でもなかなか出てこないこともあります。痛みに対しては鎮痛剤で対応します。

結石に対する積極的治療には体外衝撃波治療、経尿道的破砕治療(尿道から細い内視鏡を入れて結石を砕きます)、経皮的破砕治療(腰から腎臓へ直接内視鏡を入れて行うものです)、開腹手術があります。それぞれは結石の大きさや場所などにより使い分けられ、時には複数回行うことや、違う治療を組み合わせて行うこともあります。

一般的に腎結石では2cm以下のものであれば体外衝撃波治療。2cm以上のものは経皮的破砕治療の適応とされています。1cm以下のものはそのまま経過観察をすることも可能です。尿管結石では長い期間尿の流れが滞ると、腎臓の機能障害を生じることがあり、1か月経過を見ても出てこない場合は積極的な治療をすることが推奨されています。しかし、結石があっても尿の流れに問題がなく、痛みもなければ経過観察をすることも可能です。積極的治療の場合、尿管を上部・中部・下部と3分割し、上部のものは体外衝撃波治療、中・下部のものは経尿道的破砕治療が適しています。膀胱・尿道結石は経尿道的破砕治療(この場合は膀胱内視鏡を使用)を行います。結石が大きい場合や尿管に長くとどまっているものは複数回治療を要する、また治療法の組み合わせが必要になることが多いです。

自然に出るのを待つ場合は、とにかく水分をよくとり、じっとしていないでよく動くことが重要です。

【予防】
 再発予防で重要なのは、普段から水を多めに飲むことが重要です。教科書には2Lの尿が出る程度の摂取とされていますが、それを継続するのは非常に困難なことと思います。目安としては1日2L程度の摂取をお勧めします。一番多い石はカルシウム含有結石ですが、予防にはカルシウムを多めに摂取することが勧められています(牛乳でいうと1日コップ2杯程度(400cc))。また塩分、脂質、糖分、アルコールの摂取はなるべく控え、規則正しい食生活(夜遅くに食べてすぐに寝てはいけません)を心がけましょう。食材でも関係するものが多々ありますが、できるだけ偏りがないよう、また食べすぎないよう注意しましょう。

【最後に】
 結石は男性・女性を問わず身近な疾患です。無症状であっても最近は健診などでみつかる方も多いと思います。気になることがありましたら、泌尿器科を受診してみてください。