読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

皮膚科 朝倉 涼介

 人生で一度も怪我をした事がないという人はいるでしょうか?
スポーツをする人で無くても、日常生活に怪我は付き物で、清水病院の皮膚科にも毎日多くの方が怪我を主訴に受診されます。怪我をした直後に病院を受診するのが理想ですが、すぐに受診出来ない場合も多いと思います。ご自身で傷の処置を数日されてから皮膚科を受診するという方もいますが、その中には間違った処置をしている方が大勢います。間違った処置は傷が治りにくいだけで無く、二次的なトラブルの元にもなるので、正しい対処法について良く知っておきましょう。

 

間違った対処法の例
●傷は洗ってはいけない?

患者:「1週間前に怪我しちゃって。治りが悪くて、赤く腫れてきちゃいました。」
医師:「家では洗っていましたか?」
患者:「濡らしちゃいけないと思って、1回も洗ってないです。」
医師:「それは良くないですね・・・。」
これは皮膚科の外来でよくあるやり取りです。どういうわけか、傷は濡らしたり洗ったりしてはいけないものと思い込んでいる方が非常に大勢います。特にご年配の方々に多いのですが、これは大きな間違いです!
 “傷は洗ってはいけないもの”と昔は言われていましたが、それは“創傷治癒”についてあまり分かっていなかった時代のことで、最近では、毎日水でよく洗うことが非常に重要とされています。
 水道水で洗うと、それらに含まれる雑菌などが入ってしまうのではないかという懸念から、このような間違った理解をしている方が多いようですが、むしろ反対で、水で洗わないと浸出液(傷口から出てくる体液)などが溜まって、逆に菌が繁殖しやすくなり、この例のように傷が化膿しやすくなります。古い浸出液を水でよく洗い流すことで、このような二次的な感染(化膿)を予防できるので、毎日必ずよく洗って、傷を綺麗な状態に保ちましょう!
 このように説明すると、多くの方から以下のような質問を受けます。
患者:「でも、傷を触るのは怖い。指で洗うの?石鹸はつけちゃダメだよね?」
怖いからと言って洗わないのはダメです!指で軽く擦るように洗うのが一般的ですが、直接触れるのがどうしても怖いという方は綿棒などを使って洗うのも良い方法です。それもどうしても怖いという方はシャワーの水圧を強めにして、それを傷に当てるように洗うという方法もあります。いずれにせよ、十分な水量でよく洗うという事を忘れないで下さい!
 また、石鹸は必ず使った方が良いというわけではないのですが、適切に使用出来れば、傷の清潔を維持しやすいです。洗顔フォーム、ボディソープ、石鹸、なんでも構いませんが、よく泡立てたものが良いです(最近では、もともと泡状になった石鹸も薬局などで購入可能です)。ただし、傷口に石鹸が残ってしまうと治りにくくなる原因になるので、使用する際は必ずよく水で洗い流すようにして下さい。

●とにかくよく消毒?
 これもご年配の方に多いのですが、イソジンやリバガーゼなどで傷口を毎日消毒している方がいます。これもあまり良くない対処法です!
もちろん消毒が必要な場合もありますが、消毒液には組織を破壊するような成分が含まれていることが多く、傷口に直接塗ってしまうと治りにくくなることが多いです。また、消毒自体に強い刺激性があるため、それを漫然と使い続けることで接触性皮膚炎(かぶれ)を起こしてしまうことも多いです。
 菌が繁殖しないようにと思って消毒をする気持ちは分かりますが、菌が繁殖しないためには、毎日水で洗う事が一番大切なので、不適切な消毒は控えましょう!

●塗り薬は必要?
 しつこいようですが、傷は水で洗う事が何より重要です。日常生活で受傷する比較的浅い傷は、これさえ守っていれば自然に治ることがほとんどです。塗り薬はあくまで補助的なものと考えて下さい。創傷治癒の観点から、傷は適度な湿潤環境がもっとも治りやすいということが分かってきました。洗って水分を拭き取ったあと、そのままだと傷は乾燥しがちですので、表面を保護するような塗り薬を塗って、きれいなガーゼで保護をするという方法が効果的です。塗り薬をご自身で判断するのが難しい場合、皮膚科を受診して指示を仰ぐようにして下さい。

 

まとめると、

  1. 傷口は毎日水でよく洗う!
  2. 不適切な消毒はしない!
  3. 乾燥しすぎないように、適度にガーゼ保護などをする。

 

一言で怪我と言っても、擦過傷(浅い傷)から潰瘍(深い傷)までその重症度は様々なので、基本的には病院を受診して頂き、正しい対処法を聞いて頂くのが一番です。ただ、様々な理由ですぐには受診出来ない場合、このような対処法を実践して頂き、正しく傷を治せるようにしましょう!

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