読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

産婦人科 鎌田 麻由美

 妊娠・出産では多くの方が元気な赤ちゃんに出会えることができます。しかし、妊娠・出産にはたくさんのリスクと危険が潜んでおり、『赤ちゃんも妊婦さんも命がけ』と言われます。今回は妊娠・出産のリスクを少しでも減らせるように妊娠と体重について書いてみようと思います。

①妊娠前の体重について
 みなさんはご自身のBMI (Body Mass Index)について計算したことはありますか。BMIとは肥満度を表す指数です。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算されます。158cm、60kgの人であればBMI=60÷1.58÷1.58=24.0となります。BMI18.5未満の人はやせ型、BMI18.5〜25の人は標準型、BMI25以上の人は肥満型となります。
 やせ型の女性は切迫早産、早産、低出生体重児(2500g未満の児)のリスクが高くなります。また、肥満型の女性は妊娠高血圧症候群(血圧上昇や尿蛋白増加)、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、死産、巨大児、児の神経閉鎖障害(脳がない児や背骨が開いている児)のリスクが高くなります。
 分娩前の体重は妊娠経過に大きく影響します。やせ型の人は食事をしっかり摂ること、肥満型の人は妊娠前の減量チャレンジをおすすめします。

②妊娠中の体重増加について
 妊娠中の体重増加の目安はたくさんの報告がありますが、今回は日本産婦人科学会ですすめられている目安をお伝えします。
・妊娠前BMI:18以下➡10〜12kg
・妊娠前BMI:18〜24➡7〜10kg
・妊娠前BMI:24以上➡5〜7kg
 妊婦検診で、体重増加のスピードが早い方には、体重について注意させてもらうことがよくあります。『全然食べていないのに』『空気を食べても太るんです』と妊婦さんから返答をもらいますが、食べているのだと思います。

目安として妊娠初期には
・1日のうち座っていることが多い人➡1400〜2000kcal
・散歩や運動をする人➡2200kcal
となります。また、妊娠中期には+250kcal、末期・授乳期には+450kcalを追加します。厚生労働省からも妊娠中の食事についての指針が出ているため、参考にしてください。

 妊娠中の体重増加が多いほど、児の出生体重が重くなりやすくなります。重くなりすぎると、難産や帝王切開のリスクが高くなります。また、血圧上昇、尿蛋白増加となる妊娠高血圧症候群を引き起こしやすくなります。昔は妊娠中毒症と言われていた病気です。
 もちろん妊娠は体重がすべてではありません。妊婦さんが体重を気にするあまり、ストレスを抱え込むのは本末転倒です。ただ、心の隅に食事のことを気にしておいてください。赤ちゃんと家族が無事に出産、育児を迎えられるよう一生懸命サポートしていきます。当院は24時間、産婦人科医師と助産師が病院に待機しています。気になることがあれば、いつでも病院に連絡をしてください。

 最後に、2018年より当院産婦人科病棟は改装リニューアルし、きれいになります。がん検診、良性・悪性腫瘍、腹腔鏡手術、不妊症、思春期・更年期症状も診ております。また、母体保護法指定医師もおります。いつでも気になること、困ったことがありましたら、お気軽にご相談ください。