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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

口腔外科 臼田 聡

 親知らずは大人になってから生えてくる前から数えて八番目の歯です。
 正式には第三大臼歯(智歯)といい、最近では顎が小さくまっすぐに生えずに斜めに埋まっていたり、もともとなかったりする人がいます。
 口腔外科領域の相談の一つとして、「最近親知らずが顔を出してきて痛い」「親知らずに虫歯があるから歯医者に抜いた方がいいと言われた」「疲れると奥歯が腫れる」という相談をうけることが多いです。
 今回、親知らずはなぜ抜くのか、抜き方や術後の状態ついてご説明します。

 

親知らずを抜く必要性について
 一概に親知らずといっても生え方によって状況は異なってきます。
 まっすぐ生えていて、しっかりとブラッシングができており症状が無ければ積極的に抜く必要はないと考えます。
 しかし、斜めに生えていたり、歯茎や下顎骨に埋まっていたりすると様々なトラブルが生じてくるため抜歯をする必要が出てきます。

以下の状態に当てはまる場合は抜歯が必要になる可能性が高いと考えます。

  1. 親知らずが傾斜したり骨に埋まっている。
  2. 手前の歯(第二大臼歯)との間に食片が入り虫歯や歯周炎の原因になっている。または、なる可能性ががあり、親知らずを抜歯しないでいると虫歯が進行して将来第二大臼歯も抜歯になる可能性がある。
  3. 親知らずのまわりに汚れがたまり、歯肉に炎症を起こしている。
  4. 親知らずのまわりに膿みの袋ができて骨を吸収している。
  5. 歯列不正の原因になっている。将来その可能性がある

 

 

斜めに生えている親知らずの抜き方と合併症

◎抜歯の術式(手順)

 手術時間は30分程度です。手術中の状況によって術式が変更になることもあります。抜歯の翌日に洗浄処置、7日後に縫合糸を取ります。通常は通院で行いますが、痛みに弱い方や歯が深く埋入している場合には、笑気鎮静や2泊3日の全身麻酔で抜歯をすることもできます。
 歯根と顎の神経の位置関係を詳しく見るため、CT検査を受けてもらうこともあります。

 

 

 

術後の症状

痛み…2〜4日間痛みを生じますが、鎮痛薬で対応していきます。
頬の腫れ…4〜7日間あり、口が開きにくくなったり食事が取りづらくなることがあります。
出血…2日間にじむような出血があります。量が多いときにはガーゼを噛んでもらいます。
内出血…頬に紫色や黄色のあざが出ることがありますが、約2週間で消失します。
下唇の知覚異常…下顎の親知らずの歯根と顎の神経が接している時には、下唇やその下のオトガイ部に麻酔が効いたようなしびれ感がまれにのこることもあります。ほとんどの場合1〜3ヶ月で回復しますが、まれに数年間しびれが残ることもあります。データ上での発現率は0.4〜5.5%、6ヶ月後にも認めていたのは全体の0.05%と報告されています。
治りの不良…抜歯した場所には血液が固まり傷口をふさいでくれますが、うがいをしすぎて血液の固まりがとれたり、食物が入ってしまい治りが悪くなって痛みが出ることがあります。

 年齢や全身状態、親知らずの状態によって術後の症状の程度は異なります。
 親知らず抜歯は手術ですので、体調を整え,大切な用事が無い日程で行うようにしましょう。 

 

最後に

 親知らずは歯肉や骨の中に埋まっていることが多く、抜歯は困難で専門的な術式が必要です。口腔外科は親知らず抜歯の専門の診療科ですので、お気軽にご相談ください。