リハビリテーション科 清河 國仁
“フレイル” “サルコペニア”といった単語をお聞きになったことがありますか?どちらも聞きなれないカタカナですが、リハビリ栄養・老年医学の分野では今知っておかないといけない単語です。
ここで、“フレイル”について簡単にお知らせしたいと思います。
虚弱(きょじゃく)・脆弱(ぜいじゃく)といった単語の意味は皆さんご存知かと思います。それを日本老年学会がそういった意味の単語の和訳・総称として提唱したのが「フレイル」です(和訳なのにカタカナで、しかも意味が不明という、なんか大人の理由がありそうな感じの単語ですが…)。
“フレイル”とは…健常な状態と要介護状態(日常生活で誰かのサポートが必要な状態)の中間の状態として位置づけられているようです。つまり「老化に伴う様々な機能の低下(予備能力の低下)により、疾病発症や身体機能障害に対する脆弱性が増す状態」だそうです。
健常な状態→フレイル→要介護状態→→寝たきり状態 と言った経路をたどるのが一般的と考えられているようです。
また病院で勤務していると、疾病等で寝たきり状態に陥った方は(経過によりますが)寝たきり状態→→要介護状態までは戻る方も見受けられますが、要介護状態からフレイルの状態、もしくはそれ以上の良い状態に戻る方はそれほど多くみられない印象です。
要介護状態の方が健常な状態より生命予後が悪く、入院している場合も多く、自宅にいても転倒等での骨折のリスクも高いそうです。要介護状態よりフレイルの方がまだ健常な状態に近いですが複数の疾患をお持ちで内服薬も多数ある傾向にあるようです。
フレイルの状態を早期発見し、早期に対応することで要介護に至る方を減らし、健康寿命を延ばす(健常な状態を維持する)ことができるのではと様々な研究・提案がされているようです。
“フレイル”の基準(さすがに学会が提唱するだけあってザックリした概念的ではなく基準があるのですね・・・)
5項目中3項目以上該当でフレイル(1-2項目のみはフレイル前段階:プレフレイル)
1 体重減少 意図しない(ダイエットとかしないで)4.5kg/年、または5%以上の体重減少。
2 疲れやすさの自覚 何をするのも面倒、何かを始めることができない、と週に3~4日以上感じる。
3 活動量低下 1週間の活動量が男性:383kcal未満・女性:270kcal未満。
4 歩行速度の低下 標準より20%以上の低下
5 筋力低下 標準より20%以上の低下
4.のわかりやすい例では、横断歩道を歩いて渡るのに、青になってから赤くなっても渡り切れなくなったら歩行速度は低下していると考えてよさそうです。
5.の筋力低下は、読み終わった新聞の処理で持つ量が以前より少なくなり、移動に転倒等の危険を感じるようなら低下しているでしょう。
3.については基礎代謝量(早朝起床時室温等快適な環境下で運動せずにジッとしている時の代謝量と定義されているようです)ですら1000kcal/日以上はあるので、寝てばかりいてもフレイル基準を満たすほど活動量が低下することはめったにないでしょう。
身体的な側面だけでなく精神的な活力の低下も基準に入っているのがミソのようです。心身共に落ちてきている状態であるといえるそうです。
フレイルの状態になると健常な状態より死亡率が約3倍・身体能力低下は約2倍との報告があるそうです。
フレイル状態回避には食欲低下・摂取量の低下を防ぎ、体重低下→サルコペニア(=低栄養状態:ほとんど飲み食いしない骨と皮だけになっちゃったおじいちゃんおばあちゃん)にならないことが大事です。(だからと言って糖尿病や高脂血症のある方でBMIが25以上あるような方が安全という意味ではないですが)リハビリ栄養的には食事摂取をしっかりして排泄も滞りなくすることが基本と考えています。
この“きよかぜ”の記事をお読みの皆様で、もしかして自分もフレイル気味?とお感じになったあなたも…フレイル状態になる手前で心身共にいい状態を維持できればあなたの健康寿命も長くなるかもしれませんね。