読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

神経内科  淺利 博基 

 からだの平衡感覚をつかさどる器官に障害が起こるとめまいが起こります。めまいを大きく分けると、耳から生じるめまいと、脳から生じるめまい、その他のめまいの3つに分けることができます。

 耳から生じるめまいでは、めまいと同時に耳鳴り、難聴、耳閉感があらわれ、めまいと平行して軽快することが多いです。良性発作性頭位めまい、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴、聴神経腫瘍などがあります。

 脳が原因でおこるめまいは、耳鳴りや難聴、耳閉感といった耳の症状が無いことが多く、一方で、脳の障害による特徴的な症状があらわれることが多いです。たとえば、物が二重に見える、顔や手足の麻痺、感覚が鈍いなどの症状です。また、耳から生じるめまいは繰り返すことが多いのですが、脳から生じるめまいは、いままでに経験したことのないようなめまいであることが多いです。原因となる代表的な疾患としては、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、変性疾患、てんかんなどがあります。
 その他、心疾患、脱水、薬剤の副作用など何らかの原因で血圧が低下してしまったり、頚椎や眼の異常,うつ病などでもめまい症状が起こることがあります。

〈脳から生じるめまい〉
 脳が原因でおこるめまいが疑われた場合は次のような検査を行います。

●神経学的検査感覚、運動機能など神経の症状をいろいろな方法で調べます。その反応によって、どこにどのような問題が生じているかを知ることができます。 

●MRI:磁気を利用して、脳の状態を調べます。脳梗塞などの病気を診断することができます。

●MRAMRIとおなじ機械で、脳の血管を調べます。血管が細くなっているかなどを知ることができます。MRIもMRAもX線を使いません。

●脳波検査:てんかんからめまいをおこすことがあり、場合によっては脳波を行います。

〈危険なめまい〉
 怖いめまいとそうでないめまいを区別するのは、非常に難しいのですが、突然めまいが起きて、同時に「ものが二重に見える」「ろれつが回らない」「手足が麻痺している」「感覚がおかしい」などの症状があれば、脳卒中の可能性があるので、すぐに医療機関を受診してください。

〈めまいの受診科は?〉
 めまいは様々な病気で自覚する症状です。そのため,めまいがあった時にどの診療科を受診したら良いか迷うことが多いと思います。この時に重要となるのは、めまい以外の症状の有無です。聴力が低下していたり、耳鳴りがしたり、耳閉塞感があるときには、耳から生じるめまいの可能性が高いので、耳鼻咽喉科を受診してください。しかし、めまい以外に、意識が悪かったり,物が二重に見えたり、ろれつが回らなかったり、手足に麻痺や感覚の異常がある場合には、脳の障害によるめまいの可能性がありますので、できるだけ早く、神経内科や脳外科を受診してください。めまいのみの時は様々な病気が考えられますので、神経内科,脳外科、耳鼻咽喉科等を受診してください。