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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

副病院長(外科) 丸尾啓敏

胆石症とはどのような病気ですか?
 胆石症は、胆汁の流れ道である胆嚢や胆管に石ができる病気です。胆石が発生した部位により、胆嚢結石症、総胆管結石症、肝内結石症に分けられますが、一般に胆石症といえば胆嚢結石症をさします。

 高脂肪食の摂取や暴飲暴食、過労などが引き金となり、右の上腹部あたりに突然激しい痛みが起こり、腹痛は30分~2時間ほど続きます。右肩や背中に痛みが放散することもあります。その後の痛みが持続し発熱を伴う場合は、胆嚢炎を起こしている可能性があります。
 胆管結石症では、上腹部痛に加え、黄疸やビリルビン尿(褐色尿)がみられます。胆管炎を合併すると熱が出るだけでなく、ショックや意識障害を起こすこともあります。

 

胆石症はどのように診断するのですか?
 超音波検査、CT検査、MRI検査などの画像診断で診断します。胆石が総胆管につまると黄疸が出現し、血液検査でビリルビンやALP値の上昇がみられます。

 

胆石症と言われました。どうしたらいいですか?
 腹痛を繰り返すなどの自覚症状があれば、手術を受けたほうがいいでしょう。強い胆嚢炎が併発していれば、手術はほぼ避けられない状態です。また、症状のある胆石症の約15%に胆管結石を合併していますので、術前には胆管結石の有無を確かめておく必要があります。

 自覚症状が全くない人は、通常治療の必要がありません。しかし、胆石を10年以上放置すると半分近くの患者さんに症状が出るといわれていますので注意が必要です。食べ過ぎや高脂肪食を避け、規則正しい食生活を心がけましょう。無症状でも石が大きい場合、石が充満して胆嚢が機能していない場合などは、これから症状が現れる確率が高いので手術をお勧めします。

 

胆石症の治療はどのようなものですか?
 胆石の入っている胆嚢を摘出する手術が行われます。方法としては、おなかを大きく切開する「開腹胆嚢摘出術」と、おなかに4つの小さな穴をあけ、腹腔鏡という内視鏡を用いながら胆嚢を取り出す「腹腔鏡下胆嚢摘出術」があります。「腹腔鏡下胆嚢摘出術」は胆石症全体の8割以上に適用されています。この手術の利点は、なんといってもキズが小さいことです。また、手術後の痛みが軽く、回復が早いため入院期間の短く済み、退院後すぐに日常生活に戻ることができます。
 急性胆嚢炎を起こした胆石には、まず経皮的に胆嚢ドレナージ(PTGBD)を施行し、炎症を治めてから手術を行うことがあります。この場合は炎症が強いので開腹手術になる確率が高いです。
 胆管結石の治療としては、以前は手術が中心でしたが、現在は内視鏡を使って胆管の開口部である十二指腸乳頭部を拡張させ、胆管結石を十二指腸内へ排石させる内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)が多く行われています。

 

最後に
 昔から胆石症には4つのFがあるといわれています。つまり、太り気味(Fatty)の、40歳以上で(Forty)、多産の(Fecund)、女性(Female)に多いということです。まずは、定期的な健診から始めましょう。
 胆石症と胆嚢癌との直接的な関連は明らかではありませんが、胆嚢癌患者の約半数は胆石を有しているという報告があります。治療の対象にならない無症状の胆石症の場合でも、年1回は超音波検査を受けて経過を見ることが大切です。

 

胆石にもいろいろあります