読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

血液内科 吉田 喬

 まずどこのリンパ節かによって違ってきます。首(頚部)でしたら、虫歯などの歯の病気の有無、のどの痛みで扁桃腺炎の有無、耳の痛みなど中耳炎の有無についてみます。もしそのような症状があれば、それぞれの専門の先生に診てもらいましょう。鼠径部(足の付け根の部位)なら下肢の怪我などによる感染巣の有無、陰部の感染の有無をチェックして異常があれば外科、泌尿器科などで診てもらってください。脇の下(腋窩)の時は上肢の感染巣、乳房など胸部の異常の有無についてチェックして、外科の先生と相談してください。このような症状がなく、リンパ節が腫れていることもあります。いわゆる風邪のような全身の疾患でも腫れることがありますので、その場合は内科医と相談してください。

 このようにリンパ節は最近やウィルスから身を守るためにありますから、感染で腫れることが多く見られます。このようなときには感染症を治す必要があります。感染以外では、悪いものでは肺がん、胃がん、乳がんなどのがん転移があります。原因にかかわらずリンパ節に圧痛(抑えると痛いとき)があるのは急に大きくなったと思われます。また、リンパ節腫脹の数が増加してきたときなどは早急に検査を受ける必要があります。

 もう一つリンパ節の病気として悪性リンパ腫があります。悪性リンパ腫にはいろいろな種類があり、外から見たり、触ったりしてもわからないので、生検(一部を切り取って顕微鏡で検査)を行い判断します。日本人には少ないのですが、大きくホジキン病とそれ以外の非ホジキンリンパ腫に分けられます。さらに非ホジキンリンパ種はT細胞性とB細胞性に分かれます。これらは治療法が異なったり、予後(治療後の経過の見通し)などが異なることがあります。したがって、正確な病理診断が重要になります。

 悪性リンパ腫は、リンパ節のみが侵されるとは限りません。体中どこからでも出る可能性があります。こうした病気の広がりを分類したものを病期分類(Ⅰ期からⅣ期に分類)され、最近はCT、MRI、PET-CTなど調べます。Ⅰ期は数には関係ありませんが、一つのリンパ節領域(右顎下部ならその部位のみ)、Ⅱ期は2リンパ節領域以上で横隔膜より上なら上のみ、下なら下のみです。Ⅲ期は横隔膜をまたいで広がっている例です。Ⅳ期は肝臓、骨髄など臓器浸潤を伴っている例です。

 病気が広がっていれば予後は悪くなりますが、そのほかにも年齢、PS(全身状態)、LDH(臨床検査値)、病期分類、節外病変の数を基にしたIPS(国際予後指数)が予後予測に活用されています。このほか病理分類を基にした予後予測もあります。

 治療ですが、一般のがんの場合、早期発見して外科的手術が第一選択になりますが、悪性リンパ腫の場合は原則として化学療法になります。いろいろな抗がん剤の組み合わせが行われておりますが、抗体療法が最近注目されています。特にB細胞のCD20に対する抗体薬(リツキシマブ)を含んだR-CHOP療法によって予後が大きく改善され、第一選択治療法になっています。むろん100%の人に効果があるわけではありません。病期、組織型によっても異なりますが、80%ほどの人が寛解(CTなどで腫瘍が消えた状態)になります。寛解に入らなかったり、再発した場合は、別の化学療法を行って、効果が見られれば自家造血管細胞移植(70歳以下)などを行っていきます。

 T細胞性では決まった標準治療はなく、いろいろな併用療法が行われています。一般にB細胞性より治療成績は劣りますが、最近新しい抗体薬も出てきていますから、今後、改善されることが期待されます。

 このように悪性リンパ種にはいろいろんな治療法があり、効果も見られていますから、原因がわからずにリンパ節が腫れているのが見つかれば、一度血液内科医と相談してみください。