読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

皮膚科医長 横山知明

◆悪性黒色腫とはどんな病気?
 悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚の中にあるメラニン色素を作る細胞(メラノサイト)が眼科したものです。一般に「ほくろのがん」と言われているように、良性のほくろと見分けがつきにくいことがあり、発見が遅れることが問題になります。漫画「巨人の星」で、星飛雄馬の恋人の日高美奈が爪の悪性黒色腫で亡くなったことが知られています。
 欧米人では、肌の色が白く紫外線の影響を受けやすいため、悪性黒色腫が多く発症しますが、日本人は欧米人に比べると紫外線の影響を受けにくいので、悪性黒色腫の発症率は1/10以下です。しかし、悪性黒色腫はあらゆる癌の中でも悪性度が高く、また転移しやすいことが知られており、早期発見・早期治療が望まれます。

 

◆症状は?
 悪性黒色腫は、できる場所や形態によって4つのタイプに分けられています。
 1.末端黒子型:日本人に最も多いタイプで、足の裏、手のひら、爪周囲などに生じます。
 2.表在拡大型:胸・お腹・背中や四肢に生じます。
 3.結 節 型:部位は関係なく黒いしこりが生じます。
 4.悪性黒色腫:顔面に生じやすく、不規則な形の黒褐色斑が徐々に拡大します。

 最初からしこりをつくる結節型を除いて、いずれのタイプでも黒い斑点が徐々に拡大し、やがて盛り上がってきてしこりを形成するようになります。場合によっては表面が破れて出血を伴うこともあります。
 無治療のまま放置されると、転移を起こすことがあります。転移には、リンパ行性転移と血行性転移があります。リンパ行性転移では、リンパの流れにのってがん細胞がリンパ節に転移します。例えば足の裏の悪性黒色腫であれば、足の付け根にグリグリ(リンパ節)を触れるようになります。血行性転移の場合は血流にのって全身の内臓に転移をおこしますが、特に肝臓・肺・脳などに転移することが多いです。

 

◆診断は?
 進行した悪性黒色腫では見た目からの診断が容易にできますが、早期の病変の場合は肉眼で判断がつきにくい場合もあります。当院の皮膚科では、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて悪性黒色腫の診断を行っています。これは、偏光を利用して肉眼では見ることのできない皮膚内でのメラノサイトの分布パターンを可視化する機械です。ダーモスコピーを利用することで、悪性黒色腫の診断精度が飛躍的に向上しました。
 自分で簡単にチェックできる方法としては、ABCDチェックリストがあります。これは、Asymmetry(不規則)、Borderline irregularity(境界不鮮明)、Color variegation(色調多彩)、Diameter enlargemetry(拡大傾向)の頭文字をとったもので、4つの項目のうち2つ以上が当てはまる場合は、悪性黒色腫がうたがわれますので、皮膚科にご相談ください。

 

◆早期発見が大事
 悪性黒色腫は、早期であれば手術だけでも完治させることができます。「昔からあるほくろだから大丈夫だろう」という慢心が命取りになります。ここで紹介したABCDチェックリストを利用して、少しでも怪しいしみ・ほくろがあればぜひご相談ください。

 

ABCDチェックリスト・・・
4項目のうち2項目以上あてはまる場合は、皮膚科にご相談ください。

しみ・ほくろの形が左右対称ではない  
しみ・ほくろのまわりがギザギザしている  
しみ・ほくろの色が均一でなく、濃淡が混じっている  
しみ・ほくろの直径が6mm以上ある  

※一般的な鉛筆の直径が6mmなので、鉛筆を置いたときにはみ出る大きさが6mmです