読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

消化器内科医長 池田 誉

 食生活の欧米化、高齢者・肥満の増加に伴い逆流性食道炎は増加しています。油っぽいものをよく食べる方、ストレスの多い方、太っている方、腰の曲がった方に戻ります。

①逆流性食道炎とは?
 胃と食道の堺が緩んでいると、胃液が食道に戻りやすくなります。健康な人でも食後には胃液が食道に戻ることはありますが、食道に逆流しても食道の動きにより胃に戻ります。しかし、高齢者では胃と食道の堺のたるみや食道裂孔ヘルニアがある場合は多く、胃内容が食道に戻りやすいうえに、食道の運動が低下しているため、食道に逆流した胃内容がすぐに胃に戻らないことが起こります。また、逆流性食道炎の人には肥満者が多く、内臓脂肪による腹圧上昇が胃液の逆流を助長しています。胃液には胃酸や時には十二指腸から逆流した胆汁、膵液が含まれています。食道に逆流した消化液(胃液が主)により食道の粘膜が炎症を起こします。これを逆流性食道炎といいます。

②逆流性食道炎の症状
 胸焼け、苦い水が上がる、のどの違和感、げっぷ、おなかの張りなどです。症状が強いと胸痛として感じられ、狭心症などの心臓の痛みと間違われることもあります。胸焼けは、起き上がって上半身を立てると軽くなり、さらに水を飲むと消えてしまうのが特徴です。これは食道に逆流した胃液がこれらの行動により食道から胃の方へ送られ、食道粘膜への刺激がなくなるためです。
 その他の逆流性食道炎と関連ある症状としては咳、痰、しわがれ声、喘息発作などがあります。いずれも胃液の口腔内への逆流が主な原因で、とくに最近注目されているのが喘息発作との関連です。メカニズムとしては無意識に気管内に誤嚥した胃液による気管支粘膜への刺激と、胃酸により食道粘膜が刺激されると神経反射による気管支の攣縮(れんしゅく)などとされ、少なからず関連していることがわかってきました。このような場合、胃薬により逆流性食道炎の治療をすると喘息発作が軽快することがあります。

③逆流性食道炎の診断
 診断は内視鏡検査で食道炎を確認することです。

④逆流性食道炎の治療
 治療は基本内服治療になります。胃酸を抑える内服(プロトンポンプ阻害薬:PPI)をします。他にも粘膜保護剤消化管運動機能改善薬を併用することがあります。内服により症状が改善せず、日常生活に支障をきたす場合には、内視鏡手術を含めた外科的治療が必要になる場合があります。

⑤日常生活の注意点
 内服治療によりほとんどが軽快か症状消失しますが、再発しやすい病気です。
 日常生活の改善が必要です。

<食事について>
 ・胃酸分泌を促進するものは控える
   油っぽいもの、甘いもの、刺激の強いもの(辛いもの、コーヒー・紅茶など)
 ・食後はすぐに横にならない
 ・夜遅く食事をしない、遅くなるときは軽食にしておく
   早食いや食べ過ぎに注意しましょう!腹八分目を心がけましょう!

<日常生活では>
 ・前かがみにならないようにする
 ・お酒、たばこは控える
 ・寝るときはおなかから頭にかけて高くする
 ・ベルトや下着で締め付けない
 ・重たいものなどをたくさん持ち上げない
 ・適度な運動をして便通を整えましょう

次の表で点数をつけてみてください。8点以上の方は逆流性食道炎の可能性があります。

質  問 記  入  欄
ない まれに 時々 しばしば いつも
1 胸焼けがしますか? 0 1 2 3 4
2 おなかが張ることがありますか? 0 1 2 3 4
3 食事をした後に胃が重苦しい(もたれる)ことがありますか? 0 1 2 3 4
4 思わず手のひらで胸をこすってしまうことがありますか? 0 1 2 3 4
5 食べたあと気持ちが悪くなることがありますか? 0 1 2 3 4
6 食後に胸焼けがおこりますか? 0 1 2 3 4
7 喉の違和感(ヒリヒリなど)がありますか? 0 1 2 3 4
8 食事の途中で満腹になってしまいますか? 0 1 2 3 4
9 ものを飲み込むと、つかえることがありますか? 0 1 2 3 4
10 苦い水(胃酸)が上がってくることがありますか? 0 1 2 3 4
11 ゲップがよくでますか? 0 1 2 3 4
12 前かがみをすると胸焼けがしますか? 0 1 2 3 4