読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2015.06.01

呼吸器内科医長 芦澤洋喜

肺がんとは
 肺は呼吸をするための器官で、呼吸によって吸い込んだ空気から酸素を体内に取り込み、体内から二酸化炭素を取り出して口から吐き出す役割をしています。口から入った空気は、気管を通り、左右の肺に分かれたあとでさらに枝分かれし(気管支)、最後には酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞にたどり着きます。肺胞は小さな袋のようなもので、肺はこの袋が無数に集まって、やわらかいスポンジのような構造になっています。肺がんは肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行するにつれて周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって広がっていきます。

肺がんの原因
 肺がんの原因として、現在のところはっきりしているのは喫煙です。タバコを多く吸う人ほど肺がんにかかりやすくなります。喫煙者の肺がん死亡の危険度は非喫煙者の4~5倍言われていますし、喫煙量が1日20本以上だと10倍以上、喫煙開始年齢が早いとさらに増加することが明らかになっています。

肺がんの疫学
 がんによる死亡数では、肺がんは、日本人では長年1位であった胃がんを1998年に追い抜いて、がん死亡の1位になってしまいました。今後当分の間、肺がんはがん死亡の1位を占め、しかも増加してゆくことは確実と考えられています。肺がんは50歳以上に多いのですが、激増しているのは70歳代の高齢者で加齢とともに増加するがんです。これは戦後、タバコを吸うようになった人の率が非常に増加したため、その世代が発がん年齢に至り、その影響が出てきていると考えられます。平均寿命の延長、高齢社会への突入が肺がんの増加に拍車をかけています。

肺がんの症状
 肺がんの一般的な症状としては、なかなか治りにくい咳、血痰、胸痛、喘息、息切れ、声のかれ(嗄声)などがありますが、これらは必ずしも肺がん特有のものではありません。また、肺がんは進行の程度にかかわらず、こうした症状がほとんどない場合が多く、検診などの胸部X線検査やCT検査によって発見されることも多いです。

肺がんの検査
 がんであることの確定診断はがん細胞を確認することです。痰の中のがん細胞を確認する方法(喀痰細胞診)、気管支経由で細胞を採取する器具を病変に挿入する方法(気管支鏡検査)、対外から長い針を刺して病変から細胞を採取する方法(経皮的肺生検)の3種類があります。これで診断がつかないときには、手術により診断をつける方法(開胸生検)があります。がんは発生した部位で大きくなるのみでなく、リンパ節やいろいろな臓器に転移を起こす可能性があり、その程度によって治療方法が異なります。そのため肺がんの進行に程度を示す病期を決める検査が必要となります。これらを調べるために胸部のみならず、いろいろな臓器のCT、MRI、超音波検査などが目的に応じて行われます。

肺がんの治療
 肺がんの治療法は原則的には病期により決定されます。それに、がんの部位、組織型、年齢、既往歴、合併症、臓器の機能や一般的な健康状態に基づいて、慎重に治療の方法を選択します。肺がんの治療法には、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法、痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療(緩和治療)などがあります。

肺がんの予防
 がんの予防には一次予防と二次予防があります。一次予防とは、がんにならないように工夫することをいい、二次予防とは検診によって早期発見、早期治療をして、がんで命を落とさないようにすることを言います。一次予防はなんといっても禁煙です。タバコが存在しなければ、肺がんが58%減少すると考えられています。喫煙の年数が長いほど肺がんの発生のリスクも高いので、なるべく早く禁煙をしてください。また二次予防として検診を受けていただくことも重要です。一般外来で発見された肺がんと、検診で発見された肺がんを比較すると、検診で見つかった人は治癒率の高い早期で発見される割合が高くなっています。肺がんの検診方法として効果があるとされているのは胸部X線検査です。40歳以上では少なくとも年1回は検診が望ましいと思います。さらに喫煙者の場合には胸部X線とともに喀痰細胞診も行う必要があります。

 

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