産婦人科科長 橋本正広
早産とは、正期産(妊娠37週0日~妊娠41週6日まで)以前の出生をいいます。日本では妊娠22週0日~妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます(妊娠22週未満の出産は流産という)。
妊娠22週時に出産となった場合、児の体重は500g前後で、新生児集中治療室に長期入院が必要となり、胎児死亡や重篤な障害の可能性が非常に高くなります。それ以降週数が上がれば上がるほどリスクは軽減していきます。
当院の小児科入院設備は、妊娠34週以降でないと受け入れが困難なことが多く、それ以前は県立こども病院の指示のもと、他病院へ搬送となる場合があります。
早産になりかかっている状態、つまり早産の一歩手前の状態を切迫早産といいます。子宮収縮が頻回におこり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態や破水をしてしまった(子宮内で胎児を包み、羊水が漏れないようにしている膜が破れて、羊水が流出している)状態のことです。
切迫早産の治療では、子宮口が開かないようにするために、子宮収縮を抑える目的で子宮収縮抑制剤を使用します。また、切迫早産の原因である細菌による膣内感染を除去するために抗生剤を使用することもあります。子宮収縮の程度が軽く、子宮口があまり開いていない場合は外来通院による治療でも良いのですが、子宮収縮が強く認められ、子宮口の開大が進んでいる状態では、入院して子宮収縮抑制剤の点滴治療が必要です。
妊娠32週より前に破水した場合は、赤ちゃんが自分で呼吸できる状態になるまで抗菌剤を投与し、感染を抑えることが一般的です。妊娠34週以降であれば、赤ちゃんは自分で呼吸できる可能性が高いので、赤ちゃんに細菌が感染する前に出産し、生まれた後に治療室での治療を行います。また、子宮口が開きやすい体質を子宮頸管無力症といい、どんどん子宮口が開大し流産や早産になるので、状況により頸管(子宮の出口)をしばることがあります。これを子宮頸管縫縮術といいます。
早産にならないためい、定期的妊婦健診はもちろんのこと、お腹の張りが強い場合や、なかなか治まらない場合はすぐに電話連絡をしてください。また、日頃より無理のない妊娠生活をおくり、症状があるときは外出を控え目にするよう心がけてください。
妊娠時の性交渉はおなかを圧迫する体位や子宮口を直接刺激するような激しい動きや体位は避け、体位を工夫して浅い挿入になるようにし、時間も短めにしましょう。子宮内に雑菌が入らないようにするためにも、妻も夫も性交渉前に体をちゃんと洗って清潔にしましょう。乳首への刺激は子宮を刺激し、早産を招く恐れがあるので行わないでください。精液には細菌や、プロスタグランジンという早産を引き起こす可能性のある物質が含まれているので、コンドームは初めから使うように心がけてください。