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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

口腔外科科長 髙森康次

 口腔外科ってどんな病気を見る科か、ご存知ですか?
 医科には外科や内科、小児科などがあるように、歯科にもいろんな「科」があります。例えば、失った歯に代わる義歯(入れ歯)やブリッジを作るのは補綴科、う蝕(虫歯)や歯周病(歯槽膿漏)を治すのは保存科、歯並びを治すのは矯正歯科といった具合です。口腔外科とは、口腔(口のなか)、顎(あご)、顔面ならびにその隣接組織に現れる先天性および後天性の病気を扱う診療科です。
 この領域には、歯が原因となるものから癌まで、様々な病気が発生します。また交通事故やスポーツなどの外傷、受け口などの顎変形症ならびに唾液腺疾患などの外科的疾患のほかにも、口腔粘膜疾患、神経性疾患、口臭症などの内科的疾患も含まれます。そしてこの領域の異常は、食事や発音・会話がうまくできないなどの機能的な障害に加えて審美的な障害も生じます。治療により口腔・顎・顔面全体の自然な形態や機能が回復すると、顔全体が活き活きとし、健康的な美しさを取り戻すことができます。そのお手伝いをするのが口腔外科です。

 では実際に、清水病院の口腔外科を訪れた患者さんの病気の種類や、入院・手術が必要となる病気について解説します。
 昨年度の所信患者数は約2,300人で、その約半数の方はかかりつけの歯科医や医師からの抜歯依頼で来院されました。

 糖尿病や高血圧症など合併症をお持ちの方、脳こうそくや心臓病などで血液をさらさらにする薬を服用しているため出血が心配される患者さんなどの抜歯を行っています。

 抜歯以外で最も多いのが、口の粘膜に何らかの異常を認める病気(口腔粘膜疾患)で、2,300人中290人(抜歯を除いた全体の25%)、なかでも口の渇きを訴える患者さんが多くみられました。

 口腔乾燥症は、今飲んでいる薬の副作用で唾液が減少したり、ストレスやうつ状態など精神的な緊張が持続したりして起こることが多いようです。また、いろんな原因で唾液が減少すると、味覚が分かりにくくなったり(味覚障害)、カンジダ菌といった真菌(カビ)が増加し、口の中がヒリヒリしたりします(口腔カンジダ症)。

 次いで多いのは、顎関節症(2500人中220人、抜歯を除いた全体の19%)でした。

 顎関節症は、「口を開ける時にあごが痛い」、「口が開けにくい」、「口を開け閉めするとカクカク音がする」などの症状が現れる病気で、若い女性に多くみられます。
 ストレスによるかみしめ癖や夜間の歯ぎしりなどが顎関節症の原因に関係しています。

 次に入院が必要となるのはどんな場合でしょうか?
 それは全身麻酔をかけて手術を行わなければならない場合が最も多いです。全身麻酔で行う手術には、埋伏歯(顎の骨の中に埋まった歯)や過剰歯の抜歯、嚢胞という袋状の病気があごの骨の中にできた場合、口の中や顎の骨の中に良性や悪性の腫瘍ができた場合、交通事故や転倒などで顎の骨が折れた場合(骨折)などがあげられます。

 抜かなければならない埋伏歯には、何度も炎症を起こす智歯(親知らず)や、小児の過剰歯(余計な歯で生えてこないもの)などがあります。また最近では全身麻酔をかけて上下左右4本の親知らずを一度にすべて抜歯して欲しいとか、怖いし痛いのはいやだから全身麻酔で、と希望される方が多くみられます。

 その他、手術は必要ありませんが、虫歯や歯周病を放置したた細菌による炎症が顎の骨や頬・頚部(首の回り)にまで拡がり、痛みや腫れ、発熱、口が開かなくなって(開口障害)食事がとれなくなったりして入院が必要となる場合も多くみられます。

 詳しくは当院のホームページをご覧ください。
        http://www.shimizuhospital.com/healthcareservice/oral-maxillofacial/