読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

麻酔科科長 森脇 五六

 

「えびや蕎麦を食べて命を落とした」
 こんな話をきいたことはありませんか?食物アレルギーの恐ろしさを伝える話です。食物アレルギー以外にも、花粉や様々な化学物質によって引き起こされるアレルギーは、わたくしたちの身近に普通に見られます。症状は、皮膚のかゆみやくしゃみ、鼻づまりなどの軽いものから、重症であれば呼吸困難や血圧低下を起こして死に至ることもあります。重症の場合は、原因物質が媒介物質を介して急激に引き起こす「アナフィラキシーショック」と呼ばれる反応が考えられます。

 手術中は、麻酔薬や抗生物質等の様々な薬剤を使用するため、アナフィラキシーショックを起こす確率が高まります。手術中のアナフィラキシーショックの発生頻度は0.01%(10,000人に1人)と言われています。発生した場合、死亡率は4%前後です。このような、本来の病気と異なる原因で死亡することを防ぐために、事前に手術に使用する薬剤に対するアレルギーの有無を確認し、アレルギーのある薬剤の使用を控えるようにしています。

 手術中のアナフィラキシーショックの一番の原因は様々な薬剤ですが、注意しなければならないものがもうひとつあります。それが「ラッテクス」です。ラテックスとはゴム成分を含んだ液体です。手術中にはゴム手袋を始めとする様々なラテックス製品が使用されているため、手術に使用する薬剤以外では、アナフィラキシーショックの一番の原因物質(16.7%)となります。

 これを防ぐためには、手術中にラテックス製品を使用しないように気をつける必要があります。事前に分かっていれば十分な対応が可能ですので、炊事用手袋等のゴム製品に対するアレルギーの疑いがある方は、必ず事前に伝えてください。

 また、事前にラテックスアレルギーの有無が分かっていない方でも、以下のような危険要素を持ったグループがあります。

 (1)二分脊椎や先天奇形等が原因で、小児期より頻回に手術を受けている方
 (2)仕事上で常にラテックス製品に曝露される方
   例:医療従事者、美容師、園芸労働者、ラテックス製品製造者
 (3)アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患の既往のある方
 (4)アボカド・キウイ・バナナのような熱帯の果実、栗、プラム、さくらんぼ、桃などによる食物アレルギーのある方

これらに該当する方は、ラテックスアレルギーの疑いがありますので事前にご相談ください。

 私たちは、100%の安全を目指して麻酔管理を行っていますが、完全に防ぐことができない危険が存在することも事実です。皆様のご協力で少しでも危険が減らせたら、と考えております。不安な点がございましたら、遠慮なくご相談ください。

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