読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2013.07.01

呼吸器内科科長 吉富 淳

 

 最近は禁煙ブームで、喫煙できる場所を見つけるのが大変なくらいです。愛煙家にとっては受難の時代かもしれませんが、見方を変えれば、今こそ禁煙のチャンスです。あなたも禁煙にチャレンジしてみませんか?

【まずは喫煙の害を認識する】
 タバコの煙には200種類以上もの有害物質が含まれ、この中には発癌物質もあります。1日20本の喫煙で、咽頭癌(のどの癌)で約30倍、肺癌で約5倍も発生率が上昇します。
 また、タバコの煙により肺が壊れ、咳・痰・息切れを生じるようになります。これが慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。飲み込んだタバコの成分は、胃潰瘍や消化器癌の原因となります。さらに、タバコの成分は肺や消化管から血液に吸収され全身を巡るので、血管が傷んで心筋梗塞や脳卒中になったり、さらには腎臓癌や膀胱癌を引き起こします。

【喫煙は美容にもよくない】
 喫煙がシミやシワを増やすという報告があります。歯が変色するだけでなく、口臭も悪化します。

【イメージにだまされない】
 タールやニコチン量が少ないタバコは「マイルド」や「ライト」と記載され、害が少ないイメージがあります。しかし、パッケージをよく読んでみましょう。「本製品の性状・状態及び煙中の成分量を表す表現は、本製品の健康に及ぼす悪影響が他製品と比べて小さいことを意味するものではありません」とあります。
 つまり、健康への害が「マイルド」、「ライト」なわけではないのです。EUでは「マイルド」、「ライト」といった表現自体が禁止されています。

【喫煙は個人だけの問題ではない】
 喫煙家のそばにいる非喫煙者(特に同居家族)も、流れてくる煙(副流煙)を吸うことになり、病気の発症率が高くなります。病院に限らず、全面禁煙の施設が大幅に増えたのは、副流煙による健康被害を防止するためなのです。

【喫煙は経済的に損です】
 1日20本の喫煙で、タバコ代が1年で約15万円、10年だと150万円もかかります。喫煙者は病気になり易いですから、仕事を休み、収入が減って治療費もかかります。さらに喫煙者の平均寿命は非喫煙者より約10年短いので、10年分の年金をもらい損ねることにもなります。喫煙者は損をし過ぎなのです。

【禁煙に手遅れはない】
 禁煙の継続により、発癌率は低下します(本人だけではなく、おそらく同居家族も)。禁煙期間が長いほど発癌率は低下します。60歳で禁煙しても、3年寿命が延びるという報告があります。

【禁煙は形から入ります】
 喫煙の害は理解できても、禁煙はなかなか難しいものです。まずは禁煙の開始日を決め、タバコ、ライター、灰皿は捨てましょう。もったいないようですが、喫煙を続けるほうが経済的にも健康面でも「もったいない」のです。
 また、家族や友人に禁煙を宣言して、ちょっと引っ込みがつかないように自分を追い込んでみましょう。「禁煙なんかするなよ」という悪友もいるかもしれませんが。

【でも禁煙はつらい】
 禁煙を始めると、イライラしたり、だるくなったりして、タバコを吸いたい気持ちに苦しむものです。これは、アルコール中毒や麻薬中毒の禁断症状と同じような現象です。しかし、つらい状態のピークは数日から1週間くらいで、ここが禁煙のこらえどころなのです。氷やガム、飴をなめたり、薬局でニコチンのガムを買って試してみるのも良いでしょう。ニコチンのガムを噛んでニコチンを補うことにより、タバコを吸いたい気持ちが多少は抑えられます。
 他に散歩で気分転換するもよし、インターネットの禁煙サイトを利用する手もあります。ついつい喫煙の誘惑に負けてしまうお酒の席は、自信がつくまで自粛したほうが無難です。

【禁煙してよかった】
 咳や痰も減り、味覚が回復し、口臭も改善されます。体調も良くなり、禁煙を達成できたことで自分に自信がついたという方もいます。おまけにお金まで貯まるではありませんか。

【禁煙に成功しても油断しない】
 禁煙に成功できたんだから、ちょっと一本吸っても大丈夫などど油断しないでください。その一本がきっかけで、再びタバコを吸い始めるはめになります。それくらい禁煙の維持は難しいのです。

【禁煙をあきらめない】
 禁煙に一度失敗したからといって諦めないでください。何回か挑戦して成功する方が多いようです。

【禁煙外来もあります】
 禁煙したいと思っているのに、禁煙に踏み切れない方は当院でご相談にのります。ニコチンを染み込ませた貼り薬を使用してニコチンを補うことにより、タバコを吸いたい気持ちをある程度抑えることができます。
 楽に禁煙できるとはお約束できませんが、1人で禁煙に取り組むよりは励みになると思います。

 

☆禁煙外来のお問い合わせ☆
 054-336-1111 内科(内線2100)まで