読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

救急センター科長 西山雷祐

 

熱中症ってなに?

 これからの季節は特に注意が必要ですが、高温の環境下で体の水分や塩分のバランスが崩れてしまったり、体温が著しく高くなった状態を熱中症といいます。約2割が安静時に、また6割以上が70歳を超える高齢者に発症しています。

 

熱中症はなぜ起こる?

 一番の原因は「暑さ」と「脱水」です。
 暑くなると体温が上昇しますが、汗をかいて身体は熱を逃がそうとします。この身体の反応によって体温は一定に保たれています。ところが、長時間暑い中にいたり、突然気温が上昇すると、体温を調節できなくなります。すると身体に熱がこもってしまい、熱中症になってしまいます。
 屋内にいても、またじっとしていても発症することがあります。

 

熱中症になりやすいのは?

〇 体力の弱い人(新入生や新入社員など)、高齢者や低年齢層
〇 肥満や身体の大きい人
〇 体調の悪い人、風邪などをひいている人
〇 暑さに慣れていない人
〇 お酒を飲んだ後(お酒は水分補給にはならない)
〇 我慢強い人

≪熱中症の起こりやすい環境≫
〇 急に気温が上昇したとき
〇 梅雨明けや、気温は高くなくても湿度が高いとき
〇 涼しい部屋から暑い場所に出ているとき
〇 休み明けの練習や、強化練習の初日
〇 練習が連日続き、疲れの溜まってきたところ
〇 屋外だけでなく、体育館や自宅、とくに風呂場

 

熱中症ってどんな症状?

 暑い気温や室温の中で、「筋肉のこむら返り」や「立ちくらみ」「一瞬気が遠のいた」症状があれば、熱中症の初期段階です(軽症:大量の発汗)。そのうち、徐々に「体がだるく」なり、「頭痛」や「吐き気、嘔吐」がみられるようになります。これらの症状が出現した場合には、熱中症はある程度進行しています(中等症:体温は38度を超えます)。さらに進むと、意識がもうろうとしたり、返事をしない、おかしな行動をとるなどの症状が現れます。これは重症で死に至る危険があり、すぐに救急車を呼んでください(重症:体温は40度を超え、発汗がなくなる)。

 

熱中症になってしまったら?

 症状から熱中症が疑われたら、直ちに以下の処置を行いましょう。
 放っておくと進行して、命にかかわる状況になってしまいます。
<涼しい環境への避難>
・風通しのよい日陰に移動する(できればクーラーが効いている室内)
<脱衣と冷却>
・衣服を緩めるか、脱がせる(体から熱を放出しやすい)
・うちわや扇風機で風を送る(ゆっくりとした風でよい)
・汗が出続けるなら、こまめにふき取る(特に玉のような汗は放熱が悪い)
・氷のうがあれば、首の付け根や脇の下を冷やす(寒がるようなら中断する)
<水分・塩分の補給>
・冷たい水分を取らせる
・大量に汗をかいている場合には塩分も必要なのでスポーツ飲料がよい
・吐いたり、意識が悪いときには無理には飲ませない(無理やり飲ませると窒息してしまう)
<他には>
・筋肉がけいれんしていればマッサージする
・手足の先が青白く冷たくなっていれば、その分を温める
・顔が真っ赤になっていれば、頭を上げて寝かせる
・顔が青白くなっていれば、足を上げて寝かせる

 

熱中症の予防法は?

『水分補給』
 汗をかく場合には水分を補給する必要があります。運動時には1時間に2リットル以上の汗をかくと言われます。「のどが渇く」のは脱水症状の始まりです。のどが渇く前に、こまめに水分を補給しましょう。スポーツドリンクは吸収が速くてよいでしょう。

『服装』
 ピッタリしたものは体温を逃がしにくいので、ゆるめのものがよいでしょう。素材には吸湿性と通気性のよいものを選びましょう。汗をこまめに拭くことも大切です。服の色は、熱を吸収しにくい白系とし、直射日光を防ぐため防止を着用しましょう。

『体調管理』
 運動を連日で行う場合は、水分と食事をしっかり摂取しましょう。睡眠時間は十分にとり、体調の悪いときは無理をしないようにしましょう。

『暑さへの対策』
 暑さに慣れていないときや久しぶりに運動を始めるときには徐々に身体を慣らしましょう。真夏に限らず急に暑くなったときには特に注意が必要です。