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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

口腔外科 沼山浩明

【そもそも親知らずって何?】
口腔内の最後方に生えてくる永久歯で、正式名称を「智歯」または「第三大臼歯」と言います。通常18歳から25歳の間くらいに生えてきます。 基本的には上下左右に1本ずつありますが、どこか欠損している場合もあります。

【治療をしたほうがいい親知らずの特徴】
<生え方>
治療したほうがいい親知らずには、歯茎や顎の骨に埋まったままの埋伏智歯や、部分的にしか生えてこない半埋伏智歯があります。これは口腔内に十分なスペースがなく、正常に生えてくることができないために起こります。現在では親知らずの生えるスペースが十分にある人は全体の30%程度と言われています。

<問題点>
親知らずがあることで、奥歯が磨きづらくなり、智歯周囲炎と呼ばれる炎症を起こしたり、隣の歯(第二大臼歯)が虫歯になってしまうことが多い点です。また、矯正治療の妨げになってしまうこともあります。

【親知らずの治療】
基本的に抜歯術を実施します。しかし炎症が強いときに抜歯をしてしまうと、かえって悪化する場合があるので、先に抗生剤を投与し、症状を落ち着かせてから、抜歯をすることもあります。
埋伏している親知らずの抜歯術の手順は以下の通りです。
① 麻酔
② 歯茎の切開
③ 親知らずの周りの骨を一部削る
④ 親知らずの頭を分割する
⑤ 分割した頭の部分と根っこを抜く
⑥ 抜いたところの穴に残った汚れを取り除く
⑦ 切開した部分を糸で縫い合わせる

上記はあくまでも一例であり、生え方や位置によっては歯茎の切開が必要ない場合もあり、抜歯術の方法は様々です

【抜歯後の合併症】
抜歯術は観血処置と呼ばれ、出血が伴いますので、100%安全とは限りません。
以下に合併症をご紹介します。

<腫れ>
抜歯して2-3日後が一番大きく腫れてきます。腫れが引くまでに大体1週間程度かかります。腫れることで、お口が開きづらくなり、食事の摂取が困難となってしまう可能性があります。

<痛み>
抜歯後の当日夜には麻酔が切れて、強い痛みが出ることがあります。通常4日間程度続くとされていますが、1日で治まったり、1週間続いたりと個人差があります。適宜、痛み止めの使用をおすすめします。

<出血>
抜歯後に多少血液が滲むことがありますが、少量であれば問題ありません。しかし、なかなか出血が止まらない場合は、ガーゼ等で20分程度圧迫止血をすれば止まることが多いです。それでも止まらない場合は、追加処置が必要になります。また、血液をサラサラにする薬を内服している人は、出血リスクが高いので、かかりつけ医と相談の上、休薬や減薬を検討することがあります。

<感覚鈍麻>
下顎の親知らずの根っこの先には、下唇や顎先(オトガイと呼ばれる)周囲の感覚を司っている神経が下顎の中を通っています。抜歯術の際に、直接神経に触れなくても親知らずを抜くときに根っこの先が神経を圧迫してしまう可能性があり、一時的な感覚鈍麻が起きてしまうことがあります。発生率は5%程度と言われています。しかし、まれに永久的な感覚鈍麻が起きる可能性もあり、こちらは約0.5%程度の確率で発生します。
Etc…

【よくある親知らずについての質問】
Q. 親知らずって必ず抜かないといけないんですか?
A. 埋伏の程度によります。例えば部分的に生えている半埋伏の状態であれば、食べかすが親知らずと隣の歯の間に入り込んでしまい、これが上記に示したような炎症や虫歯を発生するリスクになります。その場合は、抜歯術の実施が推奨されますが、かなり深い位置にある場合は、食べかすが間に入り込んでしまうことがなくなるので、必ずしも抜歯が必要ではなくなります。また、深い位置にある親知らずは上述した下顎の神経にかなり近接しており、合併症のリスクが高まってしまうため、すでに炎症が起きていれば話は別ですが、積極的な抜歯はあまり必要ないかと思われます。

Q. 親知らずを抜くと小顔になるって本当ですか?
A. 確実に小顔になるとは限りません。抜歯後に顎の骨が吸収され、顔の輪郭がスッキリしているように見られると諸説ありますが、これは、顎周りの筋肉が発達していた人や物を噛むときに親知らずを含めた奥歯で噛んでいた人など、様々な要素が相まって小顔になるともされています。しかし、親知らずを抜いただけでは劇的な変化は期待できないので、美容目的での抜歯術は推奨できません。

【最後に】
歯や頬に痛みを感じたり、違和感のある場合、親知らずが原因のことがあります。
何かお困りのことがあれば、いつでもお気軽に口腔外科へご相談ください。