読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

整形外科科長 奥山邦昌

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板は外層を構成すると呼ばれる靭帯様組織と、中心部に含まれるゼリー状のという組織から成り立っています。この椎間板の線維輪に亀裂が生じて中の髄核が脱出して、近傍にある神経を圧迫するようになったものが腰椎椎間板ヘルニアです。椎間板ヘルニアの原因は各個人により異なっていますが、椎間板という組織自体は加齢とともに早くから老化しやすい組織であること、人類が二本足で歩行を開始したために、下位腰椎には過剰な負担がかかりやすくなっていることが大きな原因と考えられています。椎間板ヘルニアの患者さまの年齢は30~50 歳代の方が多く、男性はおよそ2倍の頻度でみられ、20 歳以下と70 歳以上では比較的まれな病気です。

症状

腰痛、下肢痛、しびれなどの知覚障害が出現します。神経は腰で枝分かれし、下肢へ走行しています。従って腰の病気ですが下肢の症状が出現するのです。重症例では下肢の筋力低下、排尿・排便障害を認めることもあります。

治療

◆保存療法まず消炎鎮痛剤などの薬物療法、装具などによる安静、神経ブロック療法、理学療法などが行われます。◆内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(手術療法)安静、内服薬などの保存療法で改善しない場合、手術を行います。排尿障害などを認める重症例では緊急手術を行うこともあります。従来は大きく皮膚を切開し手術をしていましたが、当院では内視鏡による小さな傷で行っています。脊椎内視鏡は1997年にアメリカで開発された手術法で、日本国内ではまだ普及していませんが、当院ではこの手術を多数行っており、成果をあげています。手術は約20㎜皮膚を切開し、直径18㎜の内視鏡を挿入し、脊椎に到達します。内視鏡を通して映し出される画像をテレビモニターで見ながら、特殊な手術器械を用いて限られたスペースの中で椎間板ヘルニアの摘出を行います。30分から1時間程度で済み、出血もほとんどありません。皮膚や筋肉のダメージが最小限で済むため、傷の痛みが少なく早期に社会復帰ができます。術後は翌日からコルセットを装着して歩行可能となり、1週間で退院します。傷は小さいため抜糸は不要です。術後1カ月でコルセットの装着は終了しスポーツが可能になります。