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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

呼吸器外科 医長 橋本 諒

[はじめに]
今回は、多くの方が関心をお持ちであろう「肺がん」について、呼吸器外科医の視点からお話したいと思います。肺がんは、日本人にとって2番目に多く罹患し、最も多く死亡するがん種です。近年、医療技術の進歩により治療成績は向上していますが、依然として予後不良のがんです。
しかし、早期発見・早期治療できれば、完治を目指せる可能性も高くなります。

[肺がんとは?]
肺がんは、肺の細胞が異常増殖する悪性腫瘍です。日本では、男女合わせて年間約13万人が罹患し、約9万人が亡くなる、最も死亡数の多いがん種です。

[症状]
肺がんの初期症状は、咳や痰、血痰、胸痛など、風邪や気管支炎と似ているものが多く、発見が遅れがちです。進行すると、呼吸困難、体重減少、倦怠感、声のかすれなど様々な症状が現れます。

[肺がんの種類]
肺がんには、大きく分けて2種類あります。
○小細胞肺がん:進行が早く、全身転移しやすいのが特徴です。
○非小細胞肺がん:進行が比較的ゆっくりとしており、外科手術による切除が可能な場合があります。
 非小細胞肺がんはさらに、以下の3つに分類されます。
・扁平上皮がん:喫煙者によくみられます。
・腺がん:女性や非喫煙者に多くみられます。
・大細胞がん: 比較的まれながら、進行が早いのが特徴です。

[肺がんの原因]
肺がんの主な原因は、喫煙です。

喫煙者は、非喫煙者に比べて肺がんになるリスクが約20倍高くなります。

その他にも、大気汚染、アスベストなどの粉塵、放射線などが原因となることがあります。

[診断]
肺がんの診断には、胸部X線やCT検査、PET検査などが用いられます。確定診断には、気管支鏡検査や針生検による組織検査が必要です。

[治療]
肺がんの治療法は、大きく分けて「手術療法」「放射線療法」「薬物療法」の3つがあります。

○手術療法:肺がんの根治を目指す最も有効な治療法です。進行度や患者さんの状態に合わせて、肺の一部を切除する「肺葉切除術」や、病巣のみを切除する「楔状切除術」など、様々な手術法があります。近年では、傷が小さく体への負担が少ない「胸腔鏡手術」が主流となっています。

○放射線療法:高エネルギーのX線や陽子線などを用いて、がん細胞を死滅させる治療法です。手術が困難な場合や、術後の補助療法として行われます。

○薬物療法:薬物療法には、抗がん剤による化学療法、分子標的薬療法、免疫療法などがあります。
化学療法は、抗がん剤を投与し、がん細胞を直接攻撃する方法です。分子標的薬療法は、がん細胞の増殖に関わる特定の分子を標的とする薬物療法です。
免疫療法は、患者さん自身の免疫力を高め、がん細胞を攻撃させる治療法です。現在では、手術療法、放射線療法、薬物療法を組み合わせて治療が行われています。

[肺がんの治療成績]

肺がんの治療成績は、近年著しく向上しています。特に、早期発見・早期治療が重要です。

[早期発見・早期治療]
肺がんは、早期発見・早期治療であれば、根治が可能です。そのため、50歳以上の方で、喫煙歴がある方または肺がん患者さんが家族にいる方は、定期的に検診を受けることをお勧めします。

[呼吸器センター]
呼吸器センターでは、肺がんをはじめとする呼吸器疾患の診断、治療を行っております。患者さん一人ひとりに最適な治療を提供できるよう、経験豊富な医師と最新設備を備え、チーム医療体制で診療に取り組んでおります。

[おわりに]
肺がんは怖い病気ですが、早期発見・早期治療であれば、十分に克服することができます。咳や痰、血痰などの症状があれば、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

肺がんに対する正しい知識を持ち、定期的な検診を受け、健康な生活を心がけていただきたいと思います。