読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

小児科 水谷祐喜子

⚫️はじめに
花粉症は人口の4割が発症しており国民病ともいわれます。特にスギ花粉症はスギ花粉が原因となっておこるアレルギー疾患です。 通年性アレルギー性鼻炎は、ダニ、 カビ、ペットの毛などが原因となり、季節に関係なく症状があらわれるアレルギー疾患です。
どちらも、主にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどのつらいアレルギー症状を伴います。このような症状があると勉強や仕事に集中できなかったり、花粉飛散時期には外出が制限されることがあります。重症度は様々ですが、人によっては日常生活に大きな影響を与えるため、決して侮れません。
そこで、スギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎の治療法の中に免疫療法という鼻炎の辛い症状を出にくくする治療があるのでご紹介します。

⚫️免疫療法とは
免疫療法とはアレルギーの原因となっているアレルゲン(スギ花粉やダニ)を少量から体へ投与することで、体をアレルゲンに慣らして敵だと思わないようにする治療です。そうすることで症状を和らげ、アレルギー治療薬の使用量を減らすことを目的とする治療です。

⚫️治療のやり方と効果
以前は病院でアレルゲンを注射して投与する皮下免疫療法が主流でしたが、2014年から舌下免疫療法が保険適応になりました。それぞれ特徴がありますが、今回は小児科で行っている舌下免疫療法についてご紹介します。舌下免疫療法とは舌の下にタブレットのお薬を投与し1分間口の中に入れた後、飲み込むことでアレルゲンを摂取します。初回は病院で投与し副作用が強く出ないかを確認します。その後は自宅で投与できるため、通院は処方箋を受け取るタイミングだけになります。
この治療を連日、少なくとも3~5年間行うことで治療終了後も数年効果が持続すると言われています。治療期間が3~5年間といわれると根気のいる治療に思われるかもしれませんが、内服をしやすい時間帯を見つけ、日々の生活の一部に取り入れていくことで治療を継続しやすくなります。また治療開始後数か月から治療効果が得られるといわれており、約8割で効果があると言われています。日々治療を行っていくことで、体質改善を期待してはいますが、アレルゲンを避けることや症状が出た際は適切な内服薬や点鼻薬・点眼薬の投与が必要になります。
アレルゲンの避け方としては花粉飛散時の外出時にはマスクや眼鏡をする。ダニに対しては室内を清潔にし、布団やマットレスは布団乾燥機などのダニ対策モードで乾燥させた後に掃除機をかけるなどをしてアレルゲンの量を減らします。

⚫️治療対象
対象は5歳以上の方で、血液検査でアレルゲンに対する感作(反応)があることが確認できた方に行わせていただいています。また喘息の症状がある方は喘息のコントロールがついていることが条件となります。
治療開始の時期については、ダニアレルギーはいつでも治療を開始できますが、スギ花粉は花粉の飛散が落ち着く時期に治療を始めます。舌下免疫療法は保険適用で行えます。

⚫️副作用
アレルゲンを投与するため、局所や全身にアレルギー症状が出ることがあります。局所のアレルギー症状は口の中の浮腫・かゆみ・不快感、のどの刺激感・不快感、耳のかゆみなどがあります。まれに重篤な症状として全身性のアレルギー症状をきたすおそれがありますが、一般的には皮下免疫療法より頻度は少ないといわれています。

⚫️最後に
現段階では当院で新規にスギ花粉症に対する治療を開始することができますが、製薬会社からの出荷調整があり、今後新規開始ができなくなる可能性があります。ご了承ください。ダニによる通年性アレルギー性鼻炎については出荷調整がかかっていないため、いつでも新規開始可能です。
高校生以上の方が治療を検討する際は当院皮膚科で舌下免疫療法を行っているので担当医にご相談ください。
アレルギー性鼻炎による辛い症状を和らげるために舌下免疫療法もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。