読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

口腔外科 齋藤哲哉

『ドライマウス』という言葉はみなさん聞いたことあるのではないかと思います。
しかし、実際はどのような症状かを知っていますか?
「ドライマウスなのだから口が乾くだけだろう」とお思いになるかもしれませんが、 口が乾くことでさまざまな症状が引き起こされてしまうことがあるのです。また、ドライマウスとなる原因もさまざまです。
今回は、ドライマウスの原因や症状、また治療方法についてご紹介します。

【ドライマウスとは】
ドライマウス(Dry Mouth)とはまたの名を口腔乾燥症と言い、さまざまな原因で口腔内が乾燥した状態のことを指します。唾液の分泌量の減少や唾液の蒸発などによって、口腔内の唾液の量が少なくなることで生じ、主な原因は以下のものがあります。

●ドライマウスの原因
・加齢による唾液腺の分泌機能の低下
・ストレス、緊張、薬剤の副作用などによる唾液分泌量の低下
・シェーグレン症候群(自己免疫疾患)による唾液腺の分泌機能の低下
・長時間の開口(睡眠時など)による唾液の蒸発   etc…
●シェーグレン症候群とは?
シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome: SS)とは涙や唾液を作っている臓器を中心に炎症を起こす全身性の自己免疫疾患です。病気の原因は不明ですが、40-60歳台の女性に発症しやすいことが知られています。主な症状としては、目の乾燥(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)、膣乾燥(ドライバジャイナ)があげられます。約45%の方が乾燥症状主体で悩まされますが、それ以外にも約50%の方には全身性に何らかの臓器病変(全身倦怠感・関節痛・皮疹・光線過敏症・間質性肺炎・神経障害・腎障害・筋症状・血液検査異常など)を生じることがあります。そして一部(約5%)の方には悪性リンパ腫(リンパのがん)や原発性マクログロブリン血症といった血液疾患の合併を認めます。
(日本リウマチ学会HPより引用 https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/sjogren/)

【唾液にはどんな働きがあるのか】
唾液には様々な働きがあります。
例えば、唾液の酵素により食べ物の消化や食塊形成(食べたものを飲み込める状態にすること)を助けたり、唾液に食べ物が溶け込むことで味蕾(味覚を感じる細胞)に届き味を感じやすくする働き。口の中の汚れを洗い流す、酸を中和し口の中を中性に保つ、細菌の繁殖を抑える、歯の再石灰化を促すことで、むし歯や歯周病を防ぐといった、口腔内を清潔に保つ働きがあります。

【口が乾くとどんなことが起こるのか】
ドライマウスとは、簡単に言えば口の中の唾液が少ないということ。唾液が少ないとこんなことが起こってしまいます。

●食事が美味しくない…
唾液が少ないことで、食べたものの味が唾液に溶けないので感じにくく、食感もパサついた感じがしてしまい、食事が楽しくなくなってしまいます。
●虫歯や歯周病、口臭の原因に…
唾液が少ないことで、食べたものや歯垢が洗い流されず、歯と歯の隙間や歯と歯茎の間に歯垢が増え、歯垢は細菌の塊なので歯を溶かしますが、唾液が少ないため再石灰化も不十分になってしまいます。そのため、歯周病や虫歯が進行したり、口臭の原因となることがあります。
●口の中がヒリヒリと痛い…
口の中の粘膜が乾燥することでヒリヒリとした痛みを感じることや、乾燥することでカンジダ菌という真菌(カビ菌)が増殖してしまい、痛みの原因となることがあります。

【どうしたらいいの?】
ドライマウスは、口の中を潤してあげることが大切で、唾液腺のマッサージや保湿剤などの使用をすることが多いです。

●唾液腺マッサージ
唾液腺とは唾液を作る工場の様なもので、その大部分は耳下腺(頬のあたり)、舌下腺(顎の下の前方)、顎下線(顎の下の後方)といった大唾液腺です。その大唾液腺をマッサージすることで、唾液が出やすくなります。
●保湿剤の使用
保湿剤には様々な種類があります。うがいのタイプ、ジェルタイプ、スプレータイプなどがあります。口の渇きを感じた時などに適宜使い保湿します。
人により使用感や味の好みがありますので、いくつか試してみることを薦めします。

【最後に】
ドライマウスは、様々なお口のトラブルを引き起こすことがあります。
また、全身の病気であるシェーグレン症候群などがドライマウスをきっかけに見つかることも少なくありません。ドライマウスにお困りの方は、口腔外科にお気軽にご相談ください。