読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2023.09.14

リハビリテーション科 医長 水村幸之助

 70年以上前からベッド上安静臥床の障害は認識されています。寝たきり状態、不動は身体機能が衰え、心身の様々な機能が低下してしまう廃用症候群を招きます。廃用を防ぐためにはリハビリを考える必要があります。

 

●リハビリとは 何だろう??
 リハビリの意味は進化しています。もともとRe(再び)+Habilis(適した ふさわしい)から成り立つ言葉です。
「人間らしく生きる権利の回復」や自分らしく生きることが重要で、そのために行われるすべての活動がリハビリテーションなのです。
 世界保健機構(WHO)によると、リハビリテーションは「環境との相互作用に最適な機能を維持したり獲得するために、障害を経験したり、または経験する可能性がある人を支援する一連の手段」と定義されています。
 日本リハビリテーション医学会では2017年度から新しい定義をあげています。疾病・外傷で低下した身体・精神機能を回復させ、障害を克服するという従来の解釈の上にたって、ヒトの営みの基本である活動に注目し、その賦活化を図る過程がリハビリテーション医学であるとしています。リハビリを行うために必要なこと、それは動くこと動かすことです。

● 動かないとどうなる??

 不動による弊害は1日の臥床でも起こります。
筋委縮、筋の変性、筋量の減少が48時間以内に始まり、2-3週間のうちに最大となります。1週間の不動で10~15%の筋力低下が起きます。関節拘縮、骨委縮、呼吸循環機能の低下、精神機能低下、摂食嚥下障害、消化管機能低下、排泄機能低下、褥瘡が出現します。
24時間の臥床で循環血液量が減ります。4~7日間の臥床で、起立性低血圧が起こり、2週間の臥床で骨密度の低下、心肺機能低下が起こります。不動による心肺機能の低下により最大酸素摂取量は大きく減少します。
 重篤な疾患の患者でも可能な限り急性期(遅くても3日以内)から離床し、運動することが必要です。不動による弊害を予防するためには急性期からの離床と運動負荷を行わなければならないのです。
 1966年にアメリカで3週間の不動による心肺機能の低下に関する実験が行われました。そしてその後の追跡調査により、30年の加齢より3週間の臥床の方が体力が低下することがわかりました。スポーツ 体操 スチレッチ 柔軟体操など運動すること、身体を動かすことが重要といわれています。

●リハビリを阻害する因子

 疼痛があると十分なリハビリはできません。
積極的な運動療法を阻害する要因が疼痛です。患者さんは「痛い思いをするぐらいならじっとしていた方がまし」と痛みのある限り動いてくれません。逆に痛くなければ活動します。
長期臥床による褥瘡(床擦れ)が発生すると動きません。 

●リハビリの利点 身体を動かすことで良いこと

 〇笑いが出現します。脳がリフレッシュします。運動により神経に働く脳由来神経栄養因子(BDNF)が発現します。BDNF産生量が増加すると〇記憶力が高まり、うつ症状が軽減することがこれまでの研究で明らかになっています。その他にも〇認知症の防止〇免疫力があがる。NK(ナチュラルキラー:生まれつき外敵を攻撃する白血球の一種)活性が上がる。〇老化防止 〇便秘の防止〇内服薬の回避〇フレイル(衰え 健康と要介護の間の虚弱な状態)が正常に戻る〇ロコモテイブシンドローム(運動器症候群)、移動能力の低下が改善する〇サルコペニア サルコ(筋肉)ぺニア(喪失)(筋肉量の減少)を治す〇骨粗鬆症の抑制等々いろいろな吉報があります。

 ●リハビリを開始する注意点
 リハビリを始めるタイミングは難しいです。病気が進行している状態はリハできません。出血中・急性炎症・一種の脳梗塞(BAD)・意識障害がある・痙攣があるなどの状態ではリハビリを始めるタイミングはケースバイケースといえます。一般には発症24時間以降48時間以内?が推奨されています。動くことで生活の磨きを築いて行きましょう。
 リハビリはADL(日常生活動作)などのgoal(目標)を創り未来を創れる時代へと進化しています。リハビリを支えるものとして、ロボット・神経再生医療(自分の骨髄を取り出し培養して自分に戻す等)・人工知能AI(artificial intelligence)サポートの義肢・筋電義手 義肢装具(柔軟性 カーボン製スプリングで滑らかに走り飛べる!!)も進歩しています。 オリンピックパラリンピック(装具が記録を更新する時代)スポーツ義足も進化しつづけてます。

 

  リハビリテーション医療では担当医師 リハビリテーション科医 理学療法 作業療法 言語療法 看護師 薬剤師 歯科医 管理栄養士 義肢装具士 公認心理士 臨床心理士 社会福祉士 医療ソシアルワーカー 介護支援専門員/ケアマネージャー 介護福祉士 患者様 ご家族様等が医療チームを形成し実践するのが特徴です。できることから始めませんか?理想の人生が叶う時代へ進化しています。呼吸法 寝返り ストレッチ せのび 体操 散歩 お出掛け 旅行 足湯 集い、これからも動き 動かそう!!