読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

小児科 橋本伸弘

●おねしょ(夜尿症)は5歳から病気と考える
生まれてから3歳頃までの子どもはほぼ毎晩寝ている間におしっこをしますが、その割合は年齢とともに減っていきます。ときどきおねしょをしてしまう程度の子どもの比率は5~6歳で約20%、小学校低学年で約10%と減少しますが、小学校高学年でも約5%にみられます。ごくまれに成人まで続くケースもあります。5歳未満の幼児のおねしょは病気ではありませんが、5歳以後は病気と捉え「夜尿症」と呼びます。

●おねしょの原因
おねしょの原因は親の育て方の問題などとよくいわれますが、そうではありません。おねしょは目覚めにくい(覚醒障害)体質に加えて、寝ている間の尿量と膀胱の尿を溜めておく能力のバランスが崩れることにより起こります。つまり睡眠中の尿量を朝目覚めるまで膀胱に溜めておく能力がないためにおねしょをすると考えられています。  
また、便秘症とおねしょの関係も最近分かってきました。直腸という肛門の手前にある腸管は膀胱の隣に位置し、直腸に便が沢山溜まる(=便秘症)と膀胱を圧迫してしまい、おねしょをしやすくなるようです。

●おねしょの治療法
まず一番大事なことは、生活習慣の見直しです。おねしょをするお子さんに対する家庭での夜尿対策の3原則は、①起こさない、②怒らない、③焦らない、です。特に夜中におもらしをする前に起こすことを習慣的に行うと、 睡眠のリズムを乱し、抗利尿ホルモン(尿の量を減らすホルモン)が減るため、寝ている間の尿量が増え、夜尿がひどくなる原因にもなります。お母さんが怒ったり、焦ったりせず、むしろ夜尿しなかった朝には褒めてあげるように心がけましょう。
また、カレンダーに夜尿をしなかった日を記録し(シールを貼るなど)、本人におねしょの「見える化」をしてあげてください。ある程度の期間、1週間など、連日成功したらご褒美をあげるなどの決まり事を設けてもよいです。 食生活では、昼間になるべく多く飲水をするようにし、夕方5時以降、特に夕食時とそれ以降の水分や塩分の摂取を控えてください。 寝る前には必ずトイレに行き、排尿してから寝る習慣をつけるのも大切です。

ご家庭でいろいろ頑張っていただいても改善しないことがあります。その場合は主に2つの治療法があります。1つは抗利尿ホルモン (尿の量を減らすホルモン)という薬を寝る前に飲むことでおねしょの量を減らします。2つ目はアラーム療法といい、尿で膀胱がいっぱいになったときアラームで脳に知らせて排尿しないように条件づけする治療です。加えて、便秘症のある子はその治療も大切です。便器に足台を置いて排便しやすい姿勢を心がけたり、便を柔らかくする薬を使うなどします。こういった治療で約70%のお子さんは1年程度で治ります。

●最後に
自然に治っていく夜尿症の子どももいますが、治療をしっかり行うとより早くおねしょから卒業できます。小学校高学年になると宿泊行事も増え、おねしょのためにお子さんが参加を躊躇したり、友人関係の中で自信をなくしたりして心理面や社会面、生活面に影響を及ぼすこともあります。積極的に治療していきましょう。
おねしょのことでお困りでしたら、ぜひ当院の小児科にご相談ください!