読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2023.05.01

泌尿器科 医長 小川貴博

血尿とは
会社や市の検診で行われる尿検査で、「おしっこに血が混じっている」と指摘されることがあります。血尿は尿を作る腎臓や、尿の通り道(尿路)にトラブルが起こっているサインです。血尿の中には、おしっこを目で見て赤いとわかる肉眼的血尿と、尿検査を行って初めてわかる顕微鏡的血尿があります。特に肉眼的血尿は、がんなどの重要な病気が隠れている可能性がありますので注意が必要です。

血尿の原因
血尿の原因は様々です。頻度が多い症状と想定される疾患をいくつか解説します(あくまでも典型的な症状ですので当てはまらない場合もあります)。

①排尿時の痛み、頻尿を伴う血尿:膀胱炎
「おしっこすると痛い(排尿時痛)。おしっこの回数もいつもより多い(頻尿)」などを伴う血尿は、膀胱炎を疑う症状です。膀胱炎は、女性の肉眼的血尿の中で最も多い原因です。男性では、前立腺炎でも同様の症状が出ることがあります。膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染症の場合は、主に抗生剤による治療を行います。また腎臓の感染症(腎盂腎炎)でも血尿が出ることがありますが、この場合は排尿時痛ではなく後述する腰の痛みが起こることがあります。

②突然の腰、背中の痛みを伴う血尿:尿路結石
「経験したことのない突然の腰痛があり、血尿も出る」などは、尿路結石である可能性が高いです。とても強い痛みが特徴で、救急車で運ばれるケースもあります。腎臓は通常、左右の背中に一つずつ存在するため、左右どちらかの腰背部痛が生じることが多いです。ただし膀胱に結石がある場合は、血尿が出ても痛みが生じず、頻尿になることがあります。尿路結石が原因であった場合は、排石を促進する薬の内服や、石を破砕する手術を行うことがあります。

③まったく症状がないのに突然起こった血尿:尿路上皮がん
「何も症状がないがトイレに行ったら血尿が出ていた」という場合もあります。医学的には「無症候性血尿」と言いますが、これは膀胱がんや腎盂がんなどの尿路上皮がんに多い症状です。自覚する辛い症状がないため、自分の判断で様子を見てしまう方もおりますが、放っておくとがんが進行してしまう場合もありますので、非常に注意が必要です。血尿以外に症状がない時は様子を見ず、すぐに泌尿器科へ受診しましょう。

血尿を調べる検査
肉眼的血尿を認める場合、泌尿器科ではまず初めに尿検査を行います。尿を顕微鏡で調べる尿沈渣では、血尿の強さがわかるだけでなく、膀胱炎などでみられる白血球や細菌、尿路結石の成分が検出されることがあります。また、稀に尿路上皮がんを疑う細胞が検出されることもあります。尿検査以外では、超音波検査も行われることがあります。超音波検査は痛みを伴わない検査で、がんや尿路結石の有無などを確認することができます。これらの検査で、尿路の病気が疑われた場合は、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査を行い、様々な疾患を検索します。また、採血を行って、炎症の有無や、腫瘍マーカーによるがんの検索を行うこともあります。さらに膀胱がんが疑われる場合は、痛みの少ない電子スコープを用いて、膀胱内を直接観察することもあります。

おわりに
様々な病気のサインである血尿について解説致しました。検診や人間ドッグなどで血尿を指摘されたら、泌尿器科への受診をお勧めします。特に肉眼的血尿が見られた場合は早めに受診して下さい。また、血尿と言っても赤い色ではなく、茶色や黒色であったりする場合もありますので、尿の色で不安を感じられたら、泌尿器科へ相談して下さい。