読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

整形外科 石井齊宜

■どんな病気?
関節軟骨のすり減りにより、股関節に変形をきたす病気です。変形が進むと関節幅の狭小化のみならず骨棘や骨のう胞といった骨の変化も見られるようになります。
我が国での有病率は数%程度で、男性よりも女性に多いと言われています。

■どんな症状?
①股関節が痛い
②股関節の動きが悪い(足の爪が切れない、靴下が履けない)
③足を引き摺るようになる
④悪い方の足が短くなる(それにより腰痛や膝痛が出ることもあります)

■原因は?
・先天性疾患(先天性股関節脱臼、寛骨臼形成不全など)
・過去の感染、過去の骨折
・大腿骨頭壊死
・関節リウマチ など
様々な原因があります。特に原因がないこともあります。(特発性股関節症)

■診断は?
レントゲン、C T、M R Iなどの画像検査をして行います。 進行の程度もこれら画像検査から判断することになります。

■治療は?
年齢、職業、スポーツ、進行の程度などに応じて決定します。保存療法(手術をしない)と手術療法に大きく分けられます。

【保存療法】
 痛み止め、湿布、ストレッチ、筋トレ、減量など
【手術療法】
 ①骨切り術:軟骨がすり減っていない部分が向かい合うように骨を切って回転させたり、寛骨臼の骨を切って回転させ骨の被りを深くしたりします。
 ②人工股関節置換術:股関節を金属でできた人工の関節に置き換えます。

■手術は怖くない?リスクは?
出血、感染、血栓、脱臼など重篤になる確率はわずかですが、リスクはあります。リスクに対する予防や治療法は確立されてきておりかなり安全になってきていますが、それでも完全に0にすることはできません。手術のメリットがリスクを上回ると判断される時に手術を提案させていただいております。

人工股関節置換術では、術後脱臼を予防するため禁止肢位(正座から足を崩した座り方、いわゆる女の子座りのような姿勢がダメ、など)がありますが、これも近年筋肉や腱をできるだけ切らない手術法が普及し、より制限なく日常生活に戻っていただけるようになってきています。

患者さんそれぞれ症状も違えば生活様式も異なります。私たちは患者さん1人ひとりに合った治療法を提案すべく日々診療に取り組んでおります。股関節でお悩みのことがあればお気軽にご相談ください。

※イラスト・画像:日本整形外科学会パンフレット「整形外科シリーズ10」より引用