読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

皮膚科 医長 八代 聖

●“ほくろ”は生まれた後にもできる??
“ほくろ”の正式名称は『色素性母斑』であり、未分化なメラノサイト系細胞である母斑細胞の増殖からなるものを指します。 皆さん、“ほくろ”は生まれつきあるものと思っていませんか? 答えは、正解でもあり、間違いでもあります。実際に赤ちゃんの肌をまじまじと見る機会は多くないと思いますが、生まれたての赤ちゃんに“ほくろ”はそこまで多くはないですよね? 実際、“ほくろ”は生まれつき存在する先天性の発症も含めて、幼少期から小児期,高齢者あらゆる年齢層に生じると言われています。我々の”ほくろ“の多くは、10代から20代頃までに徐々に目立ってくることが多いのです。

●“ほくろ”の見た目は人それぞれ!?
“ほくろ“の見た目は多彩であり、褐色から黒色の大小の色素斑で隆起するもの、平坦なものまで様々です。 一般的には、体幹に生じる膨らむものはウンナ色素性母斑と呼ばれ、顔に好発しドーム状、軟毛を伴うものはミーシャー母斑と呼ばれます。 色調や形態の多様性は、皮膚のどこの深さに母斑細胞が存在しているか、母斑細胞の数がどのくらいあるか、その産生するメラニン顆粒の量が多いか?少ないか?などにより決まっているため、様々な形や色調、大きさがあることも納得できます。“ほくろ”にも人それぞれの個性があるのですね。

●“ほくろ”も年をとる!?
人間が加齢、年をとっていくのと同様に、私たちの“ほくろ”も年をとっていきます。特に顔にできるタイプの“ほくろ”では、加齢に伴い、少しずつ膨らんだり、色素がなくなり淡くなったりすることが多いです。 “昔からあるほくろが膨らんできた“と心配な場合は、早めに皮膚科を受診するほうが良いでしょう。

●大きな“ほくろ”や大人になってからできる“ほくろ”は心配!?
先天性で巨大なものは巨大先天性色素性母斑と呼ばれ、悪性化のリスクがあると言われています。また後天的にも“ほくろ”は生じますが、大人になってからできた“ほくろ”の中には、悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれる“ほくろ”の癌が隠れていることもあるため、注意が必要です。 また皆さんが“ほくろ”と思っているものの中には、『脂漏性角化症』と呼ばれる、老化により生じる“いぼ”や、俗にいう“シミ”など、厳密にいうと“ほくろ”には含まれない色素斑の場合もありますので、専門医による診察が望ましいでしょう。

“ほくろ”が良性か悪性かに関して、皮膚科ではダーモスコピーという拡大鏡による診断方法を用いています。これは皮膚表層での光の乱反射を防止した上で明るい白色光を照射しながら10倍程度の拡大像を観察する診断法であり、非常に有用です。“ほくろ”が徐々に大きくなってきている場合や、色が濃くなったり薄くなったりしている場合では、早期受診が望ましいため、まずは皮膚科にご相談ください。

●“ほくろ”はレーザーで取れる??
果たして、“ほくろ”はレーザーで取れるのでしょうか??
答えは正解でもあり、間違いでもあります。
ダーモスコピーを用いた診断により良性の“ほくろ”である可能性が高い場合には、炭酸ガスレーザーという焼灼可能なレーザーを用いて治療することが可能です。ただし、悪性の可能性が少しでもある場合には、顕微鏡による病理組織学的検査が施行可能な外科的切除をおすすめします。一般に、手術は日帰りで簡単に行うことが可能ですが、実際の手技や手術の必要性については個々に異なるため、医師に相談すると良いでしょう。

●意外と知らない“ほくろ”のお話し、皆さんいかがでしたか??
一言で“ほくろ”と言っても、奥が深いですね。 “あれ?いつの間にこんなところにほくろができたのだろう?”“前からあったけど、でもやっぱりほくろが気になる!”と気になっているかたは、お気軽に皮膚科までご相談ください。