読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2022.08.01

整形外科 医長 萩原 健

どんな病気?
手根管症候群とは、手首の手根管というトンネルを通っている神経が、なんらかの原因で圧迫されて起こる病気です。

どんな症状?

①     親指~薬指がしびれる・痛い
②     親指と人差し指でつまみにくい
③     親指のつけねがへっこんでいる
神経の圧迫によりこれらの症状が現れます。しびれや痛みは朝方強いこともあります。親指のへこみは長期間神経が障害された結果おこる筋萎縮によるものであり、そのため下の症状ほど重症度が高い可能性があります。

どうして起こる?
手根管症候群は一般的に、女性のほうが男性よりも多いとされています。手根管症候群の原因は特発性といって、原因がよくわからないものが多いのですが、以下の原因で起こることも知られています。
〇 血液透析(透析アミロイドーシス)
〇 妊娠 あるいは 閉経 (女性ホルモンによる影響)
〇 手首の外傷・骨折など
〇 手を使う重労働者
〇 ガングリオンなど手根管内の腫瘤性病変
〇 全身性アミロイドーシスの前駆症状

特に全身性アミロイドーシスでは、心臓に沈着したアミロイド物質により、心不全を引き起こす可能性がありますが、心臓の症状が出るより前に手根管症候群の症状が出現することがあるということがわかってきました。

どのように診断するの?

上記の症状や手首をたたいたり、曲げたりする診察でほとんどの場合診断できます。重症度の判断をするために筋電図検査(針を刺して電気の通りをみる検査)や、他の原因がないか調べるために頸椎のMRI等をすることもありますが、必ずしも痛い検査は必要ありません。

治療は?

①     しびれ止め、痛み止めの内服
②     手根管内ステロイド+局所麻酔注射
③     夜間シーネ固定
④     手術加療(手根管開放術)

①でよくなることが多いですが、①が効かなければ②、③を試すことになります。
手術加療は手首の手のひら側を2〜3cm切開して、神経の除圧を行うもので、日帰り、局所麻酔でできる手術です。手術加療は①〜③で改善がない場合の最終手段になりますが、
〇 症状がでて3か月以上改善がない場合
〇 親指のつけねのへこみ(母指球筋の萎縮)がある場合
〇 疼痛が強く耐えがたい場合
  は早いうちに手術加療を検討することをお勧めします。

上記の場合は自然回復の見込みが少ない、筋萎縮は進行すると手術してもよくなる可能性が少ないからです。また稀ですが全身性アミロイドーシスの早期発見ができる可能性もあるため、前向きにご検討いただけると幸いです。

※イラスト:日本手外科学会ホームページ「手外科シリーズ」より引用