読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

産婦人科 谷本慧子

 更年期障害と聞いて、女性特有のものだという思われる方もいらっしゃるでしょう。近年、男性にもあるということが広く社会に知られるようになりました。女性は閉経を迎えるにあたり女性ホルモンの激しい「揺らぎ」を認めるため、更年期障害を認めますが、男性は加齢による男性ホルモンの「減少」のため、更年期障害となります。40歳以上の男性でほてりや男性機能低下、易疲労感などを認める際は年齢に限らず更年期障害を疑う必要があります。

 男性、女性共に、生活スタイルの見直しが更年期障害の治療につながります。まずは、バランスの良い食事を摂ったり、睡眠時間を十分に確保したり、ストレス解消の時間を作ったり、ストレッチを行って血流を改善したり、運動を習慣として取り入れるなど、生活習慣を見直すよう心がけてみましょう。それでも改善しない症状に関しては、ホルモン補充療法や漢方療法などを行います。

 そもそも、ホルモンはどのような働きをしているのでしょうか。
女性ホルモン:代表例 エストロゲン(卵胞ホルモン)は、女性らしさを作るホルモンです。子宮内膜の増殖(妊娠に備える)、自律神経の安定、コラーゲンの産生、骨を強くするetc. 思春期の男性でも体内で産生されますので、胸が膨らむということがあります。
男性ホルモン:代表例 テストテスロンは、女性でも男性の5-10%程度の量を産生しています。集中力を保つ、筋肉・骨の成長を促す、性欲・性衝動を起こすetc. が知られています。
そのため、更年期症状としては、
女性:自律神経症状、倦怠感、不眠、うつ傾向、骨量低下、脂質異常・動脈硬化etc.
男性:うつ傾向、倦怠感、筋力低下、骨量低下、勃起不全、自律神経症状、脂質異常・動脈硬化etc.  が出現することになります。
症状は全て出現するわけでなく、個人個人でも異なっているため、一様に同じ治療を行うわけではありません。症状にあった治療を行う必要があります。その一つに漢方療法があります。よくテレビのコマーシャルや電車の吊り広告で「ぽっこりお腹の食いしん坊さんには〇〇」「ストレスを溜め込む筋肉質な便秘の方には●●」「夜間頻尿に困っている人には□□」などと噂に聞いたり、目にしたりすることがあるかと思います。「こんな人に合う」んだということがわかりやすく、確かにそのような方に概ね適応します。しかしながら、漢方薬は簡単そうで難しく、とても奥が深いのです。

 漢方は古代中国を起源としています。江戸時代までに古代中国の医学が日本に伝わり、日本と中国で別々の発展を遂げました。発展の過程で、異なる医学・薬となっています。私自身も勉強中でありますので、こちらに関してはまた機会があったらお話しできれば、と思います。

 さて、ここ数年、新型コロナウイルス感染の影響で、外出を控えている方が多いかと思います。今まで野外で行っていた散歩やスポーツ運動の習慣が途切れてしまったという方も多いのではないでしょうか。このような状況の中で、外出制限や行動制限が骨量に影響を与え、骨密度が低下し、骨粗鬆症のリスクが上昇したという報告がありました。外出控えにより運動量が低下することや、日照不足となることでVitD3活性が低下し、骨破壊が進むことが一因のようです。海外の論文でも、コロナ下の中で行われた措置によって筋肉量と機能の喪失を招き、高齢者集団において身体活動の低下をもたらし、サルコペニア(筋力低下や身体機能低下をきたし日常生活に支障が生じるほどに影響を受けている状態)の一因になっているといった報告がありました。

 まずは人混みを避けつつ、日光浴や運動をしに出掛けませんか? 外に限らずベランダや縁側でもいいと思います。これから梅雨の時期になり、より一層家に篭りがちになるかと思いますが、日光浴をすることで骨粗鬆症のリスクを少しでも減らし、外に出ることで少しでもストレスを減らし、更年期に対して向き合っていくことをお勧めします。

 日差しとなると日焼けや皮膚がんが気になる方も多いかと思います。ただ、これも日光浴が一日20分以内であればリスクを上げないとされていますので、うまく間を取って日光浴や運動を取り入れていけるといいですね。