読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

小児科 相澤魁人

 赤ちゃんの離乳食を始めていくと、ある食べ物で蕁麻疹がでてしまった、それ以降怖くて食べさせられない、そんな経験はありませんか?本日は「食物アレルギー」について少しお話をしたいと思います。

●食物アレルギーってなあに?
 私は小さいころ数式を見たら頭が痛くなる「算数アレルギー」でした。日常的に「○○アレルギー」という言葉を使い、苦手なものを表現していた時代も懐かしいかもしれません。
 では「食物アレルギー」とはなんでしょうか。「食物アレルギーとは食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な現象を惹起される現象である。」これは食物アレルギー2021年診療ガイドラインの始めに記載されている、食物アレルギーの定義です。 誤解を恐れずに言えば「ある食べ物を食べたらその食べ物の時だけ体に症状がでてしまう。それが免疫的な仕組みで起きるものである。」ということです。好き嫌い、胃腸炎など様々な理由でその食べ物を食べないということが子どもには多々見られます。ここで大事なのが「免疫的な仕組みである」ということです。

●体でどんなことがおきているの?
 卵アレルギーを例にとってみましょう。卵を食べると卵のある成分に対して体が免疫的な反応を起こします。「口から入ってきたこれは一体なんだ?」と。多くの人の体では「これは卵というやつらしい。問題なさそうだ。次に入って来たときは顔パスでOKしよう。」と判断してくれるため何も起きません(免疫寛容)。しかし一部の人の体では「これはなんだ?ちょっと免疫担当部署の人集まって調べてくれる?」といって免疫系の細胞が動員され、「どうやら不思議なものが侵入してきたぞ。次回来た時はみんなで対応しよう。」と免疫担当部署が大騒ぎをします。その結果、次に卵を食べた時に症状が出てしまいます。このように免疫が過剰に反応した結果、様々な症状が出るのが食物アレルギーです。

●どんな症状なの?
 むくみ・のどの違和感などの皮膚・粘膜症状、息苦しさ・くしゃみ・咳などの呼吸器症状、嘔気・嘔吐・腹痛などの消化器症状、動悸・顔面蒼白などの循環器症状、頭痛・意識低下などの神経症状などがあります。 出現時間で分けると口にしてから2時間以内にでるもの(即時型)、それ以降にでるもの(遅発型)という言い方をします。遅発型の多くは数時間後から半日以内と言われています。

●症状が出たらどうしたらいいの?
 まず慌てないようにしましょう。皮膚の症状だけなら日中開業医さんを受診しましょう。 皮膚症状に加えて他の症状が出た場合は救急車を呼んでもいいかもしれません。複数の臓器に障害がでた場合は「アナフィラキシー」と呼びます。その場合は早く処置しないといけません。

●どうやって診断するの?
 まず何よりも大事なのが「問診」です。「何を食べてどれくらいたってからどんな症状がでたのか」を教えてください。診断の補助として血液検査、皮膚試験などを行います。もしこれらではっきりしない場合は実際に少量食べさせてみて症状が出ないかどうかをみます(経口負荷試験)。

●その食べ物は一生食べられないの?
 答えは「NO」です。食べられるようになるケースも多いです。図は食物アレルギーの年齢分布ですが年齢ともに患者が少なくなっています。年齢とともに過剰な免疫が落ち着いて食べられるようになること(耐性化)があります。

●小児科の仕事
 将来食べられるようになる可能性があるのにそれを恐れて一生食べさせないことは、お子様の成長には不利益です。そこで小児科医の出番です。食物アレルギーのポイントは「適切な量を適切に食べさせて体を慣れさせる」ということです。 我々の仕事は「この程度まで食べて大丈夫」とその子のその時点での限界点を探ることです。しかしアレルギーとは怖いもので時には命を奪うこともあります。万が一に備えて入院もしくは外来で「どこまで食べられるのか」ということを調べます(経口負荷試験)。
(おうちでの注意点)
① 新しくチャレンジする食べ物は平日日中クリニック、総合病院などが開いている時に食べさせましょう。休日や夜間は控えましょう。
② アレルギーと言われた食べ物をお子様が誤飲しないようにしましょう。
③ 湿疹がひどい時は皮膚科でスキンケアをしてもらいましょう。→肌バリアと食物アレルギーとの関連がある可能性がわかってきました。

 必要以上に食べ物を怖がり除去してしまうことは、お子様の健やかな成長を邪魔してしまします。清水病院小児科では経口負荷試験をはじめとしたアレルギーの検査も行っています。ぜひ相談にいらしてください。