読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

外科 科長 石松久人

 新年あけましておめでとうございます。
本年も静岡市立清水病院を宜しくお願い致します。

■大腸がんについて
 日本人のがんの死亡率と罹患(りかん)率(病気にかかる割合)は、単純に総数で見ると年々増加していますが、その主たる原因である人口の高齢化の影響を除いた年齢調整率を用いると、ほとんどのがんで死亡率は減少しています。しかし、大腸がん(他に膵臓がん、悪性リンパ腫)に関しては、年齢調整をしても男女ともに死亡率は減少していません。  大腸がんの死亡率は肺がんに次いで2位、罹患率は胃癌に次いで2番目に高く、特に女性では癌死亡率のトップになっています。そして、本来、大腸癌は数あるがんの中でも最も管理しやすいものの1つであるのに、日本では死亡率を減少させることができていないのです。
 もともと大腸癌の死亡数が多かった米国は、国家的な対策により大腸がんの死亡数を減少させることに成功しています。一方で日本は、増加の一途をたどっています。日本の検査技術や治療技術のレベルが国際的に低いわけではありません。それゆえに、特に消化管の治療を専門とする日本の医師たちの多くは、「大腸癌で命を落とすのはもったいない」「大腸がんで命を落としてほしくない」と、日々感じています。
 しかし、大腸がんは最も予防しやすく早期発見、早期治療しやすいがんであることは、医師にとっては常識にもかかわらず、一般の方々にはあまり認識されていないようです。

■大腸がんは最も予防・早期発見しやすいがん
 大腸がんは、高生存率の3つの要素である「早期発見が可能、進行が遅い、治療法が確立している」を全て満たすがんです。
 早期発見が可能にも関わらず, かなり進行した状態で発見される症例も多く見られます。その際に多くの患者様が口にすることが、「症状がなかったから」という理由です。そこで、大腸がんの症状について考えてみたいと思います。
 まず、大腸という臓器ですが、大まかに部位を分けると右側結腸と左側結腸に分けられます。右側結腸は盲腸, 上行結腸, 右側横行結腸のことであり, 便が硬くなる前の状態(水様便)であることが多く, 症状が出にくいです。腫瘍が存在していても便が通過できてしまうため「症状がなかった」となり、発見の遅れにつながります。左側結腸は左側横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなります。腫瘍の存在部位が肛門(出口)に近い程、下血・下痢・便秘・便が細くなるといった症状が出やすいです。しかし、必ず症状が出るわけではないのでやはり内視鏡検査を受けておくに越したことはありません。

■大腸の検査・費用
 下部内視鏡検査は、便がすっきりときれいになるまで大量に下剤を飲んで準備する必要があり、1日がかりの検査です。そのため、時間が取れないとか面倒くさいという理由で敬遠されがちです。また、便潜血陽性結果が出ても、痔の出血だと思ったなどの理由で2次精査を受けない患者様もいらっしゃいます。個人的な意見ですが、便潜血検査はあくまでも内視鏡検査を受けるきっかけ作りであると思います。検査費用は内視鏡で観察し、何も異常がなく帰宅した場合には、2割負担で約5,000円程度、3割負担で約7,000円程度になります。疑わしい病変があり、組織検査を行った場合にはそれぞれ約9,000円程度、約12,000円程度となります。ポリープを切除した場合には内視鏡手術になりますのでさらに増します。しかし、手術に該当するため生命保険が下りる可能性が高いです(がん保険の場合には良性のポリープでは下りない可能性が高いです)。

■終わりに
 これからは、病院にかかったことがないから健康であるというのではなく、健康診断(人間ドック)を受けて検査をした上で健康であると主張するようにしましょう。