読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

皮膚科 武内直生

★こんな症状ありませんか?
 乾癬の症状は、ガサガサして厚ぼったい、境目がはっきりした赤い皮疹が特徴的です。かゆみは約半分の人でみられます。全身どこにでも皮疹はできますが、特に擦れるところによくでき、例えば、頭、肘、膝、臍の周りや腰などに症状が出やすいとされています。赤い皮疹は目立ちますが、他の人にうつすことはありません。爪が白っぽくなったり、ざらざらになる人もいます。また、10人に1人くらいの割合で、乾癬が原因で節々が痛くなる方もいます。

★乾癬かもしれないと思った方へ
 乾癬とは、もともとの体質に加えて、薬や感染症、肥満や喫煙などがきっかけとなって発症する病気です。乾癬の発症頻度は1000人に1人といわれており、昔は日本人には稀な病気とされていましたが、生活スタイルの変化に伴い、徐々に患者さんの数は増えてきています。

★治療法は?
 乾癬は慢性の病気なので、良くなったり悪くなったりを繰り返します。症状の度合いは人それぞれなので、その時にいちばん合った治療を選んでいきます。治療法は、外用療法(塗り薬)、光線療法、全身療法の3つに大きく分けられます。初めに病院を受診した時や症状が軽い時は、外用薬(塗り薬)から始めることが多いです。光線療法には、ナローバンドUVBとエキシマランプというものがあります。ナローバンドUVBは乾癬に効くとされている非常に狭い波長の紫外線を全身にあてる治療で、当院でもよく行われる治療の1つとなっています。エキシマランプは皮疹が一部分に限られている場合に使います。症状が重い場合や、関節の痛みを伴う場合などには全身療法を行うことがあります。全身療法には、内服療法と生物学的製剤(注射)があります。内服療法は、採血での腎臓・肝臓の値や、もともと持っている病気、飲んでいる薬との相性で飲み薬の種類を決めていきます。光線療法との相性の良い飲み薬もあり、その場合は相乗効果も期待できます。ご自宅でも血圧を測ることでより安全に使うことのできる薬もあります。次に、生物学的製剤とは、体の中で悪さをしている物質をピンポイントで抑えることで効果を発揮する治療法です。投与方法は皮下注射や点滴で、薬剤は何種類かあります。そのため、どの薬剤を使用するかは、症状や生活スタイルなどに合わせて、患者さんと相談しながら決めていきます。生物学的製剤は、始める前だけでなく定期的に採血や画像検査などを行う必要がある点に注意が必要ですが、有効性の高い治療法となっています。

★メタボリック症候群と関係するってホント?
 「乾癬マーチ」という言葉を知っていますか?この頃、乾癬とメタボリック症候群(※)の関連性が広く知られるようになってきています。生活習慣は乾癬の発症のきっかけになることはここでもお話しましたが、乾癬を発症すると、全身の炎症が長く続き、それによって血管がダメージを受け、心筋梗塞のリスクが上がることも分かってきています。そこで、乾癬は皮膚の病気というだけではなく、心筋梗塞のような血管のダメージにまでつながる様子がマーチのようであることから「乾癬マーチ」と呼ぶようになりました。つまり、乾癬の治療は皮膚の治療だけではなく、メタボリック症候群の治療も重要ということになります。

※メタボリック症候群とは:内臓脂肪の増加に加え、高血圧や高脂血症、高血糖などが合わさることで、心臓病や脳卒中になりやすくなる状態です。

 当院では、乾癬の全身療法も行っております。生活習慣の改善も大切なことなので、患者さんと二人三脚で治療に取り組んでいけたらと思います!お困りのこと、この記事を読んで気になることがありましたら、お気軽に皮膚科にご相談ください!