読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

産婦人科 坂巻智美

みなさん2年に1回の子宮頸がん検診を受けていますか?

 子宮頸がんは30~50代での罹患率が高く、30代での死亡例も稀ではありません。また、がんの治療によって妊娠や出産にも影響が出る場合があります。
そんな怖い病気ですが、ワクチンや定期的な検診によって予防できるがんでもあります。

 子宮頸がんは高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染から始まります。低い確率ではありますが、感染したウイルスがヒトの染色体に組み込まれて異常増殖すると、感染から数年~十数年の年月の間に、前がん病変を経て子宮頸がん発症となります。
その予防には、①ウイルスに感染しないこと  ②前がん病変を見つけること が大切になってきます。

 HPVはごくありふれたウイルスで、性交経験があれば誰でも感染する可能性があります。200種類以上の遺伝子型が発見されていますが、全ての型のHPVががんを引き起こすわけではなく、16型・18型・31型・33型・52型・58型をはじめとするいくつかのハイリスクHPVが子宮頸がんにつながるといわれています。国や地域によって差はありますが、16型・18型が半数以上を占めるといわれています。

 HPV感染は女性のイメージが強いかもしれませんが、男性にも感染の可能性が十分にあります。例えば6型・11型に感染すると、尖圭コンジローマというイボが生殖器にできます。また、男性女性ともに肛門がんや咽頭がんの原因となる可能性があります。
 そんなHPVの感染を予防することができるのがワクチンです!
現在、日本では小学校6年生~高校1年生相当の女性に対して、公費(無料)での接種が行われています。

・『サーバリックス』  2価ワクチン:16型・18型
・『ガーダシル』    4価ワクチン:6型・11型・16型・18型

 通常約半年の期間をかけて、3回の接種となります。高校1年生の3月を過ぎてしまうと原則自費となってしまいます。9月までに接種を開始すると全3回を無料で接種することができます。
高校1年生のみなさん、今がチャンスです!!
 2020年12月にガーダシルは9歳以上の男性にも適応が広がりました。男性もHPVワクチンを接種することで、がんから自分を守るだけでなく、大切なパートナーを病気から守ることになります。

 2021年2月には『シルガード9』という新しいワクチンが日本でも発売されました。これは9価ワクチンで、6型・11型・16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型のHPV感染を防ぎます。この9価ワクチンによって子宮頸がんの90%が予防できるといわれています。海外では男性にも接種が推奨されております。現時点では自費による接種のため、約10万円となっていますが、がんを予防できるのであれば、費用対効果は抜群だと私は考えております。今後公費となることに期待です!

 次に子宮頸がん検診について少しお話します。これは子宮頸部細胞診という検査になります。子宮の入り口の部分を擦る検査で痛みはほとんどありません。この細胞診で異常が見つかった場合に、組織診という精密検査を行います。子宮頸がんのほとんどを占める扁平上皮がんというタイプでは、下記の順番のように異形成という前がん病変を経てがんに進んでいきます。

軽度異形成(CIN1) ➟ 中等度異形成(CIN2) ➟ 高度異形成・上皮内がん(CIN3) ➟ 扁平上皮がん

 全ての人がCIN1 → CIN2 → CIN3と進行するものではなく、CIN1がCIN3以上の病変に進展する率は12~16%といわれています。異形成の段階で発見し、適切な間隔での再検査や治療を行うことで、がんを予防することができます。

 まだ受けたことない方、そういえばしばらく期間が空いてしまったなという方、是非この機会に子宮頸がん検診を受けていただければと思います。