泌尿器科 内田貴人
<夜間頻尿とは>
夜間に排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。下図の通り加齢とともに頻度は高くなり、日常生活においても支障度の高い症状です。
夜間頻尿の年齢別頻度
<夜間頻尿の原因>
大きく分けて1)多尿・夜間多尿、2)膀胱容量の減少、3)睡眠障害に分けられます。これらの3つの原因によって治療法が異なるので夜間頻尿の原因をまずはっきりさせることがとても重要です。
1)多尿・夜間多尿
尿量が多いため夜間頻尿がおきることがあります。特に内科の病気が隠れている場合は、その病気に対する治療が優先されるため、注意が必要です。
①多尿による夜間頻尿
1日24時間の尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きるものです。1日の尿量が40ml/kg(体重)を超える場合(例えば60kgの体重の人は40ml/kg x 60kg =2,400ml)がこれに当たります。水分の過剰摂取、尿量を増加させる薬剤を内服しているため、糖尿病などの内科の病気によるものがあります。
②夜間多尿
夜間のみ尿量が多くなり、夜間トイレに何度も起きるものです。一つの目安として、65歳以上の方では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合は、夜間頻尿と考えられます。寝る前の水分の過剰摂取、薬剤性のもの、ホルモンバランスの乱れ、高血圧や心不全、腎機能障害などの内科の病気によるもの、睡眠時無呼吸症候群(睡眠時に呼吸が一時的に止まる病気で、いびきをかく人によくみられます)があります。
2)膀胱容量の減少
膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、膀胱が過敏になるために起こります。一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。
①過活動膀胱
膀胱に尿が少量しか溜まっていないのにも関わらず尿意を感じてしまったり、膀胱が勝手に収縮してしまう病気で、トイレに急いで駆け込む症状(尿意切迫感)があるものです。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄(せきずい)の病気で引き起こされる場合もあります。
②前立腺肥大症
男性特有の疾患で、前立腺が大きくなることで排尿がしにくくなり、結果として膀胱が過敏になることがあります。
3)睡眠障害
眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くものです。
<診断>
上述の通り夜間頻尿の原因は様々ですので、適切な対処をするためには原因を明らかにすることが必要です。そのためには排尿日誌をつけることが効果的です。排尿習慣を知るために、日誌を用いることでご自身でも正確にチェックすることが可能です。朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を日記のように記録するものです。1回の排尿量(膀胱に溜めることができる膀胱容量)と排尿回数を知ることができ、おおよその原因を知ることができます。
<主な治療法>
糖尿病や高血圧や睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患で誘発されているものに関しては、それらの治療を優先します。水分の取りすぎによるものであれば生活指導による就寝前の飲水制限、夜間多尿であれば尿量生成をおさえる薬(デスモプレシン)を使用したりします。
過活動膀胱では膀胱に尿が貯まるようにする薬(抗コリン薬、β刺激薬)を用いたり、行動療法と呼ばれる骨盤底筋体操や膀胱機能訓練を行います。前立腺肥大症では通りを良くするα1遮断薬や前立腺体積を縮小させる5α還元酵素阻害薬などを用いた薬物療法の他に経尿道的手術で切除する治療を行います。
<最後に>
「おしっこが近くて睡眠不足」など、日常生活の質に直結してくることでお困りの方も多くいらっしゃると思います。少しでも状態改善させたいと感じている方がお気軽に泌尿器科へ受診、御相談下さい。