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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

                               小児科 医師 市川百合香

そう思ったことはありませんか?もしかすると、お子さんは「肥満」かもしれません。

小児の肥満は、12歳以上の男女10人に1人の割合といわれています。「少しぽっちゃりしているほうが、健康そうで良いわよ!」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。子どもの頃の肥満は、大人になっても続くことが多く、将来的な生活習慣病にもつながるといわれています。生活習慣病とは、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)といった動脈硬化を起こす疾患です。これらは心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気のリスクを上昇させます。

では、どういったお子さんが肥満なのでしょうか?お子さんでは、「肥満度」と呼ばれる数値を用いて、肥満かどうかを判断します。「肥満度」とは、(体重−標準体重)/標準体重×100(%)の式で計算できる値です。6歳以上の場合、これが20%以上で肥満の診断となります。少し計算が難しいので、お子さんの肥満が気になる方は、「日本小児内分泌学会」のホームページから、「お子様の病気が気になる方、患者さんおよび保護者の方へ」に記載されている「肥満」のページをご参照ください。(http://jspe.umin.jp/public/himan.html)

肥満は、大人になってからよりも子どものときの方が治りやすいです。なぜなら、子どもは身長が伸びるため、無理して体重を減らさずとも同じ体重をキープすることができれば、自然と整った体型になっていくからです。お子さんの体型が気になっている親御さんは、早めに小児科を受診されることをおすすめします。少なくとも、学校の健康診断で病院受診を指示された場合には、お近くの小児科を受診したほうが良いでしょう。

当院では、肥満にお困りのお子さんに、血液検査や必要に応じて尿検査・超音波検査を行います。これは、肥満を引き起こす病気が隠れていないかを確認するためです。そういった病気がない場合には、肥満による合併症(脂質異常症、糖尿病、脂肪肝など)がないかを確認します。その後は、定期的に外来を受診してもらいながら、「太りやすい生活習慣」を変えていくお手伝いをしていきます。極端なダイエットをする必要はありません。生活習慣をより良い方向に変えることを意識し、定期的な外来受診を継続するだけで、思っているよりも体重は減っていきます(体重が減らなくても身長が伸びるので、だんだん引き締まっていきます)。

体に良い生活習慣とはどんなものでしょう?例を以下にお示しします。

①食事はよく噛んで食べる。(1口30回程度)

②ジュースは飲まない。水やお茶を飲む。

③食事は大皿に盛り付けるのではなく、一人分ずつお皿に盛り付ける。

④おかわりをしない。

⑤野菜を多く食べる。

⑥なるべく毎日散歩をする。(親御さんも一緒に)

⑦毎日決まった時間に体重を測る。

こういったものの中から、ご家族の生活リズムに合わせて、実践可能なものに取り組んでもらいます。特に、体重を毎日同じ時間に測ることは、ダイエットのモチベーションを高めますので、おすすめです。

しゅっとした体型になったお子さんは、将来の生活習慣病のリスクが減るだけでなく、自分で痩せることができたと自分の努力に自信を持てるようになるはずです。ぜひ私たち小児科医と一緒にダイエットをがんばりましょう。