読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

2020.12.01

                              消化器内科 科長 池田 誉

はじめに
 便秘には様々な原因があるため、比較的よくみる疾患です。また薬局で便秘薬を購入し自己治療する方も多いのではないでしょうか?現状では便秘は病気と認識されずに軽視されがちです。しかしながら最近の研究では慢性便秘があると、大腸癌、心臓病、脳梗塞や脳出血、うつ病など、様々な病気のリスクになることが明らかになりつつあります。

日本における便秘の実態
 平成25年厚生労働省の国民生活調査では、便秘の有病率は男性2.6%、女性4.6%、男性よりも女性に多い。50歳以下ではこの傾向が顕著ですが、男女ともに有病率は年齢とともに増加し、70歳以上になると性差がなくなります。

便秘の定義
 便秘治療のガイドラインでは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」、とされています。ここで重要なのは『毎日排便がないと便秘』ではなく、毎日排便がなくとも腹痛や腹満などの苦痛症状がなければ便秘とはされません。

便秘の症状
おなかが張って痛い、排便の頻度は週に2~3回以下、強くいきまないと出ない、排便に時間がかかる、便が残っている、すっきり感がない、便の形状は水分が少なく硬く量が少ない。

便秘の原因
 原因は大きく2つあります。大腸がんなどで腸が狭窄して起こる「器質的」なものと、腸の機能低下による「機能的」なものがあります。機能の低下の原因には加齢による腸の動き、排便に関する筋力の低下や、ダイエット、水分不足、薬剤、糖尿病、甲状腺機能異常、パーキンソン病、過敏性腸症候群など数多くあります。

器質的な便秘の治療
 治療は外科的になりますのでここでは詳細は書きませんが、急に便秘が出現するようであれば大腸がんの可能性もあり、内視鏡検査をお勧めいたします。まずはかかりつけの先生には相談しましょう。