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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

                                                                                             口腔外科科長 髙森 康次

〈口の中にもがんはできるの?〉
口の中にもがんはできます。舌や歯肉(歯ぐき)に多くみられますが、口底(舌の下)、頬粘膜(頬の内側)、口蓋(上顎の天井部分)、口唇にも発生します。がん全体からすれば約1-3%と低い数値ですが、問題が2つあります。

1つは年々、口腔がんの患者さんが増えているということです。

2016年の統計では喉にできた咽頭がんと併せて、年間約21,000人の人が罹患しており、この数値は30年前に比べて4倍以上の増加を示しています。

 2つめは、日本では口腔がんの死亡率が欧米に比べて高いということです。我が国での口腔がんの死亡率は、約36%と、がん全体の12位です。(因みに1位は膵臓癌、2位は肺癌)。これをアメリカと比べると、アメリカの口腔がん患者数は、年間約43,000人と、日本の約2.2倍多いわけですが、死亡者数は日本の約半数ということです。

〈どうして口腔がんの死亡率は高いの?〉
早期発見ができていないからと思われます。日本では口腔がんの認知度が低く、口の中に異常を感じても口内炎と思い込み、なかなか歯科医院を受診しない方が多いようです。医療者側も口腔がんの早期発見に対する意識が欧米などに比べて少ないため、口腔がんの発見が遅れがちと思われます。

〈口腔がんは増加しているということですが、その理由は?〉
どこに発生するがんにもリスクファクター(危険因子)というものがあります。口腔がんの場合は、従来から言われているのが、 「喫煙」と「飲酒」です。タバコを吸っている方は、吸っていない方に比べて、口腔がんの発生率は約7倍、死亡率は約4倍高い との報告があります。また、「喫煙」 に 「飲酒」 が加わりますと、口腔がんの発生率は、更に高くなります。

しかしながら、タバコを吸う方は年々、減少傾向にあります。にもかかわらず、口腔がんは増加しているということは、タバコ以外の何らかのリスクファクターが存在し、それを持った方が増えてきていると考えられます。それが何かは、残念ながらまだ分かっていません。

ただ最近気になるのは、口腔がんというと以前は60歳70歳くらいの男性に多かったのですが、最近では女性の患者さんが 増えてきている、ということです。そして、タバコも吸わず、口の中の衛生状態も良好な若い世代の女性にも見られることがあると いうことです。これはもしかすると、ホルモンの関係であったり、女性の社会進出に伴う精神的ストレスなどが、リスクファクターになっているのかもしれません。

〈口腔がんには、どんな症状がありますか?〉
自覚症状としては、食べ物や飲み物(特に熱いもの)がしみる、違和感がある、腫れやしこりがある、ざらざらした感じがあるなどの症状がみられます。肉眼的には、腫れていたり、ただれていたり、また白い部分と赤い部分が混在してできているような場合は 注意が必要です。また、指で触ってみると、腫れやしこりを感じる場合もあります。

〈口腔がんの治療について教えて下さい〉
がんの進み具合(大きさやリンパ節への転移の状態など)によって、手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療などを単独あるいは組み合わせて行います。

〈最後に〉
昨年、有名な女優さんが 舌がんになった という報道があり、口腔がんってこわいなぁ と思われた方も多いと思います。実際、口腔がんと診断された方の約1/3は、かなり進行した状態であるステージ4の段階で見つかっています。しかし、もしも初期の段階であるステージ1で発見されて治療を行えば、95%は治ります。

口腔がんで苦しまないためには、できるだけ早期に発見することが最も重要と思われます。

幸い、口の中は直接目で見たり、指で触ることができる場所です。早期発見のため時々、自分の口の中に異常はないかどうかチェックすることも必要かと思われますが、口の中に何か異変を感じたり、心配なことがありましたら、ためらわずに清水病院 口腔外科を受診して下さい。

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