読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

 循環器内科 藤石 珠美

 

みなさんは「不整脈」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?

外来をやっていると「健康診断で指摘をされました」、「かかりつけの先生に不整脈と言われました」とおっしゃる患者さんがたくさんいらっしゃいますが、実は不整脈にはいろいろな種類があるのはご存知ですか?また不整脈のなかでも様子をみても問題のない不整脈もあれば、治療が必要な不整脈もあります。

今回はたくさんある不整脈の一つ一つを細かくお話しすることは難しいので、不整脈ってそもそも何なのかというというお話しをさせていただきたいと思います。

 

心臓の役割

不整脈を理解するために、まず心臓について説明をしておきたいと思います。心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割をしており、筋肉の塊でできています。その心臓の中は右心房、左心房、右心室、左心室の4つの部屋に分かれています。血液の流れとして全身から戻ってきた血液は右心房から右心室を通り、肺に送り出され、肺でいらなくなった二酸化炭素を酸素に交換し、左心房に戻ってきた後、左心室へ流れ、そして全身へと送られていきます。この血液の流れを作り出すために心臓は収縮と拡張を繰り返しながら、絶え間なく動いています。実はこの動きは電気刺激によって作り出されているのです。

 

刺激伝導系とは

心臓を拍動させるための電気刺激の発電所が右心房の上側にあります。この場所の名前を洞結節といいます。ここから1分間に約60~80回、規則正しく電気刺激が出て、その刺激が心房から心室へと順番に伝わることで、心臓の筋肉が興奮をして、心房→心室の順番で収縮をします。この一連の電気の流れ(通り道)を刺激伝導系といいます。この電気の流れを波形で見たのが、心電図です。

 

不整脈とは

少し難しい話が続いてしまいましたが、ここから不整脈の話になります。

不整脈は簡単に言うと、心臓の電気的興奮のリズムが異常になった状態です。リズムの異常については、大きく分けると3つのタイプに分かれます。①脈が飛ぶように感じる「期外収縮」、②脈が速くなる「頻脈」、③脈が遅くなる「徐脈」の3つです。そこからさらにリズム異常の原因となっている場所によって細かく分類されるため、不整脈には様々な種類があります。不整脈の種類によって治療法も大きく変わるため、不整脈の診断には心電図が欠かせません。

また不整脈の自覚症状についてですが、人それぞれ個人差もあるため、一概には言えません。①の期外収縮では、「胸がドキンとする」、②の頻脈では「胸がドキドキする」、③の徐脈では、息切れやふらつきなどがあります。中には自覚症状が全くない人もいます。

 

不整脈の原因

不整脈の原因も様々です。先程述べた刺激伝導系の異常や年齢に伴うもの、心臓の筋肉の異常、心筋梗塞や狭心症、薬剤性、心筋症、自律神経、ホルモン分泌の異常、睡眠不足やストレスなどで起こることもあります。

 

不整脈の治療

不整脈には様々な種類があります。不整脈の種類によって、治療法も変わってくるので、きちんと診断をつけることが大事になります。

先程も述べましたが、不整脈の中には治療を必要とせず、様子をみていても問題のない不整脈もあります。それとは逆に治療の必要な不整脈については、その不整脈の種類にもよりますが、大きく分けると①の期外収縮や②の頻脈については、内服薬で治療をする方法やカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)と呼ばれる治療があります。③の徐脈については、内服薬ではなく、ペースメーカーと呼ばれる機械の植込みが必要になる場合もあります。

 

さいごに

不整脈は様々な種類があります。診断の決め手は心電図です。気になる症状がある場合には、まずかかりつけの病院で心電図をとってみてはいかがでしょうか?また自覚症状がない場合でも、心電図で不整脈がみつかることがあります。定期的に健康診断を受けて、その際に心電図をとってみてはいかかでしょうか?