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患者さんのための機関誌「きよかぜ」

口腔外科 福田 諒

普段、私たちは食べる、笑う、おしゃべりをするなど生活のため無意識的に顎(あご)を動かしています。実は、顎に関する悩みを持つ人が意外に多いことが分かっています。平成28年の厚生労働省の行った歯科疾患実態調査でも「顎の関節が痛い」「口が開けにくい」「音がして不快」などの悩みを持つ人が全国で1900万人にも及ぶと言われ、年々増えています。今回、そんな悩みの多い顎関節症に関してご説明します。

◆顎関節症の主な症状と原因
顎関節症の原因の約8割は歯のかみしめ癖(ぐせ)が原因と言われています。自分では噛みしめているつもりはなくても無意識に噛みしめていることがほとんどです。(寝ている時も含めて)
代表的な症状として以下の3つがあります。
①顎を動かした時に痛みがある。(食事やあくびをした時など)
➡咀嚼筋(そしゃくきん)(噛む時に使う筋肉)が筋肉痛を起こしている、または関節が炎症を起こしていることが原因。
②口が大きく開かない。(通常は40mm、指が縦に3本入る程度開きます)
➡筋肉や関節が痛くて開口できないことや筋肉が緊張で硬くなる、または関節(かんせつ)円板(えんばん)(顎の関節の間のクッションのようなもの)が引っかかっていることが原因。
③顎を動かすと音がする。(カクカク、ジャリジャリなど)
➡関節円板のズレや骨の変形(レントゲンで確認します)などが原因。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・顎関節症の検査
 顎関節症は顎関節やその周囲を取り囲む咀嚼筋の痛み、顎関節雑音、開口障害や顎運動障害などの症状を取りまとめた総称です。実際に正確な診断をするには、顎の動きの検査や顎や咀嚼筋の痛みの検査、レントゲン検査、必要に応じてMRI検査やCT検査、他の顎関節症以外の同じような症状を呈する疾患を鑑別した上で診断を行います。また痛みの原因は身体的な障害だけでなく心理的・社会的な因子も強く関連するため心理テストを行うこともあります。

・どうして顎関節症になるのか?
 顎関節症になる原因には様々な要因が関わっています。人によって関節や筋肉の強さ、ストレスへの耐久性、睡眠障害の有無やくいしばりの強さなど複合的な因子が重なり、その人の耐久力を超えた時に発症すると言われています。つまり既にある原因が大きくなったり、新たな要因(偏咀嚼、スポーツでの食いしばり、頰杖、仕事の緊張や過剰なストレス、スマホやゲーム、パソコンをする時間の無意識な食いしばりなど)が増えたりすることで発症することがあります。

◆顎関節症の治療
 治療は大きく分けて2つです。
1つ目は、歯のかみしめ癖(TCH:Tooth Contact Habit)を意識的にやめることです。とは言っても普段からほとんどの方が無意識的に噛みしめていることでしょうから意識的にやめることは難しいと思います。そのため携帯電話やパソコン、机や冷蔵庫など普段生活で目につく物に「噛みしめないで」と書いた付箋などを貼り常に思い出すことが大事です。日常生活の中で、上下の歯を噛みしめてないか、自分で注意してみてください。噛みしめていることに気付いた際は「唇を閉じて、上下の歯をわずかに離し、顔の筋肉をリラックスさせる」ことをしてみて下さい。
2つ目は、セルフケア(ストレッチやマッサージなどを自分ですること)です。急性期と慢性期では治療が異なりますが、顎関節症のほとんどは慢性期です。
急性期(顎を少し動かしただけでもズキズキ痛む時期)ではできるだけ安静にし、硬い食べ物や長時間噛むこと(スルメやガムなど)は避け、痛くない方の顎で噛むようにし、必要に応じて鎮痛剤を服用することもあります。
慢性期(開口時、または噛む時だけの痛みになった時期)では積極的にストレッチをすることが大事になります。(多少痛くても、安静にし過ぎないのがポイントです)また、蒸しタオルなどで顎の筋肉を温めることも効果的です。(血流が良くなり、早く痛みが改善します)

<ストレッチの方法>
指(人差し指、中指、薬指)を縦に3本入れた状態(図1)で10〜30秒数えた後、ゆっくり口を閉じる。
これを最低1日5〜10セットを行います。

◆最後に
 顎関節症は、自分の生活習慣を見直し、セルフケア(ストレッチ)をしっかり行うことで自分の力で治すことができることが多い病気です。しかし、診断や検査が重要な疾患ですので口腔外科に気軽にご相談ください。

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