読みもの

患者さんのための機関誌「きよかぜ」

                        副病院長 兼 泌尿器科科長 臼井 幸男

尿漏れ(尿失禁)には、主に4種類のタイプ(腹圧性(ふくあつせい)、切迫性(せっぱくせい)、溢流性(いつりゅうせい)、機能性(きのうせい))があります。今回はもっとも多い腹圧性尿失禁と、それに対するエクセサイズのお話です。

ヒトは普段、尿をしたくなるまで無意識のうちに膀胱に尿をためることができます。それは膀胱の筋肉の緩みと出口(尿道括約筋(かつやくきん))のしまりが絶妙にコントロールされているからです。そのため、よほどの我慢状態でなければ意識して出口に力を入れる必要はありません。

腹圧性尿失禁は女性に多く、絶えず漏れているわけではなく、立ち上がりなどの動作、くしゃみや大笑いなどおなかに力がかかる時にみられる尿失禁です。多くは加齢によるものですが、若い方でも出産後にはよく起こります。骨盤の出口を支える構造(骨盤底筋群)(図1)の緩みが原因で、尿道をしめる尿道括約筋もその一部です。おなかに力が入ると骨盤底筋群に力がかかり、尿道も一緒に下垂します(図2)。それにより尿道括約筋のしめる力が弱まってしまいます。

薬物療法で改善する場合もありますが、手術療法が推奨されています。しかし、腹圧性尿失禁では骨盤底筋を鍛えることで、改善することが多いといわれています。そう、日頃意識して力を入れることのない、インナーマッスルを鍛えるのです。

このエクセサイズは、尿道括約筋を鍛えるのではなく、骨盤底筋を鍛えることで尿道の下垂を抑えるのが目的です。

 

☆どこに力を入れるの?

 肛門や膣をしめるように力を入れましょう。基本的には肛門に力を入れることで、尿道括約筋や膣にも力が加わります。わかりにくい場合は、お尻の筋肉で肛門を挟みこむように力を入れてみてください。

☆力を入れている時間はどのくらい?

 ゆっくりと10数える程度にしましょう。そう長くは力を入れていられません。自然に力が抜けてきます。

☆何回くらいやればいいの?

 一度に10回程度です。肝心なのは、力を抜いた後、すぐに力を入れてはいけません。1分ほど力を抜いてリラックスさせましょう。立て続けに力を入れると、おそらく10数えられずに力が抜けてきてしまいます。一度に10回もできなくても、数回でもいいのでそのかわり1日に何度か行うよう頑張ってみましょう。

☆姿勢は?

 かたちにとらわれずに、立ったまま、椅子に腰かけているとき、入浴時などいつでもどの姿勢でも行えるのが理想です。パンフレットなどではあおむけで足を軽く開き、ひざを曲げる姿勢や、立って両手をテーブルに置いて軽く足を開く姿勢などが載っています。力の入れ方がわかりにくい場合は、このような姿勢から始めるのがいいでしょう。

☆どのくらいで効果が出てくるの?

 2~3週間で効果が現れてきます。そうでなくとも根気よく続けることが重要です。

☆ほかに気を付けることは?

 肥満や便秘は尿失禁に影響しますので要注意です。

 

骨盤底筋体操についてはインターネットでも簡単に検索できます。また清水病院の泌尿器科外来にもパンフレットがありますので、興味のある方は気軽にお立寄りください。